NPO法人の一般社団法人への移行


NPO法人が大きくなりすぎて、他の種類の法人形態へ移行したい。

そういうご相談が増えています。

このときの【問題点】は次のとおりです。

  1. NPO法人は他社に寄付できない。
  2. 解散して残余財産を新設法人に移そうとしても、残余財産は国・地方公共団体その他の公益団体に帰属してしまう。
  3. 公益社団法人を設立すれば、NPO法人の財産を引き継げるけれど、公益社団法人の設立自体ハードルが高い。

どうしたら良いのか、何か良い方法はないのか?!

 

【2022.11.9追記】

新たな法人形態「労働者協同組合」が設立できるようになりました(労働者協同組合法)。

NPO法人は、令和4年10月1日から3年間に限り、「労働者協同組合」に組織変更することが認められています(労働者協同組合法附則第4条)。

スキーム比較


スキーム 可否 理由

一般社団法人を設立し、

NPO法人財産を寄付(贈与)

不可 不可∵NPO法には、寄付できる定めなし。

一般社団法人を設立し、

NPO法人を解散し、

残余財産を一般社団法人へ移転

不可

不可∵残余財産は、

①定款で定めた者に帰属する【1】

②定款に定めがない場合、国地方公共団体に譲渡か、国庫帰属

(特定非営利活動促進法31~39)。 

NPO法人を一般社団法人へ

組織変更

不可 不可∵NPO法には、組織変更できる定めなし。

一般社団法人を設立し、

NPO法人を吸収分割させる。

不可 不可∵NPO法には、会社分割できる定めなし。

一般社団法人を設立し、

NPO法人を合併させる。

不可

不可∵NPO法人が合併できるのは、他のNPO法人のみ

(特定非営利活動促進法33)

一般社団法人を設立し、

NPO法人から一般社団法人へ営業譲渡【2】

可能

可能です。∵商法に、営業譲渡できる定めあり。

事業譲渡契約書を作成し、どの事業をいくらで譲渡するかを決定。

契約関係、債権債務関係を譲受人に承継するためには、契約の相手方を含めた合意が必要。

内部手続は、総会の議決。

【1】 NPO法人の定款で定めることができる残余財産の帰属すべき者は、①~⑥に掲げる者のうちから選定する(法11③)。 

① 他の特定非営利活動法人 ② 国又は地方公共団体 ③ 公益社団法人又は公益財団法人 ④ 学校法人 ⑤ 社会福祉法人 ⑥ 更生保護法人 

【2】 株式会社における事業譲渡とほぼ同義

法律は、商人一般についての「営業譲渡」(商法15~18の2)と区別し、会社については「事業譲渡」(会社法467以下)という用語を使用している。

営業譲渡・事業譲渡とは


最高裁判決

最高裁昭和40年9月22日判決が、営業譲渡を定義づけています。

 

会社法467条1項1号(旧商法245条1項1号)によって特別決議を経ることを必要とする営業の譲渡とは、商法24条以下にいう営業の譲渡と同一意義であって、営業そのものの全部または重要な一部を譲渡すること、

 

さらに詳しく定義づけています。

 

1.

 

一定の営業目的のため組織化され、有機的一体として機能する財産(得意先関係等の経済的価値のある事実関係を含む。)の全部または重要な一部を譲渡し、
  ⇔組織化され有機的一体として昨日する財産の一括譲渡という点で、単なる「財産の譲渡」とは異なる。

2.

 

これによって、譲渡会社がその財産によって営んでいた営業的活動の全部または重要な一部を譲受人に受け継がせ、
   

3.

 

譲渡会社がその譲渡の限度に応じ法律上当然に商法25条に定める競業避止業務を負う結果を伴うもの
  ⇔譲渡会社が競業避止義務を負う点で、単なる「財産の譲渡」とは異なる。

他の手続との比較

事業譲渡手続の理解を深めるために、他の手続と比較すると下表のようになります。

ただし、NPO法人の一般社団法人化のために使える方法は事業譲渡だけです。

  株式譲渡 事業譲渡 合併 会社分割

譲渡の対象

株式(=会社所有権)

事業資産(引継ぎたいもの

を引き継ぐことも可能)

会社全部

会社の欲しいところだけ

会社の借金

全て引き継ぐ

 

 

 

 

引き継がない。

引継ぐ場合は、債権者の個別同意必要。

 

 

引き継ぐ。

債権者の個別同意不要。

債権者保護手続必要。

引き継ぐ。

債権者の個別同意不要。

債権者保護手続必要。

従業員 引き継ぐ 個別同意 引き継ぐ 労働者保護手続必要
コスト【注】 安い 中程度 高い 高い
利用率 89% 4% 3% 3%

【注】忘れ易いのが、不動産登記・不動産取得税や他の専門家費用で、案件により、これら費用が大きくなります。当グループでは、これら専門家費用も含めた総合見積を作成することが可能です。

事業譲渡によるNPO法人の一般社団法人への移行の限界


事業譲渡は、お金が余っているNPO法人には使えません。

お金を譲渡しても、入ってくるのはお金で意味がないからです。

 

この場合には、

一般社団法人を設立して、NPO法人から一般社団法人へ金を生む事業を売却し、NPO法人のお金を使い切ってから解散するなど更に複雑なスキームを構築するしかありません。

司法書士の報酬・費用


一般社団法人設立後に必要な費用は、次のとおりです。

業務の種類 司法書士の手数料 実費
事業譲渡契約書作成 110,000円(税込)~ 契約書印紙
社員総会招集通知の作成・発送代行及び報告

33,000円(税込)~

に発送先1名様ごとに1,100円を加算

 
社員総会シナリオ・想定問答集作成  55,000円(税込)~  
社員総会立会 55,000円(税込)~  
個別財産の名義変更手続 33,000円(税込)~/件 不動産の場合:登録免許税

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