建物賃貸借の契約期間を設定するときの注意点|不動産賃貸借契約


家主業の皆さまが「契約期間」を設定する際の参考になれば幸いです。

 

居住用建物の賃貸借期間は「2年」が多いです。これは入居者のライフサイクルとして2年が適切なことが多いためとされています。

事業用建物の賃貸借期間は様々です。

 

※「土地の賃貸借契約」や「物(動産)の賃貸借契約」の場合には、別の法規制がありますので、ご注意ください。

もくじ
  1. 賃貸借契約期間を考えるために必要な知識
  2. 家主のメリット・デメリット
  3. 借主のメリット・デメリット
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賃貸借契約期間を考えるために必要な知識


普通建物賃貸借の契約期間の「最短は1年」

期間1年未満の建物賃貸借契約は、期間の定めがないものとみなされます(借地借家法29Ⅰ)。

したがって1年以上の期間で定める必要があります。

普通建物賃貸借の契約期間の「最長はルールなし」

期間の上限はありません。

民法上、賃貸借契約の最長期間は50年とされていますが(民604)、建物賃貸借契約については民法604条を適用しないとされているためです(借地借家法29Ⅱ)。

契約期間を定めないこともできるが・・・

期間を定めない場合には、各当事者はいつでも解約申し入れをすることできます(民617Ⅰ柱書)。

 

賃借人からの解約申入れの場合

契約に別の取り決めがない限り、解約申入れ後3か月後賃貸借契約は終了します(民617Ⅰ②)

 

賃貸人からの解約申入れの場合

正当事由がなければ、そもそも解約申入れができず(借地借家法28)、解約申入れ後6か月後賃貸借契約は終了します(借地借家法27Ⅰ)。

そして、契約に別の取り決めをしていても、賃借人に不利なものは無効になります(借地借家法30)。

借地借家法28条
  建物の賃貸人による(略)建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。

借主はいつでも退去できる訳ではない。

契約期間の定めあり 原則 中途解約できない
例外

中途解約できると契約したとき

☞中途解約できる(民618)。

契約期間の定めなし いつでも解約できる(民617)。

家主は、契約期間が満了しても家主からの退去請求は難しい(普通借家契約の場合)

貸主は正当事由がなければ、解約できません。そして、この「正当事由」について、裁判所は一般に思われているよりも「限定的に解釈」しています。

定期借家契約であれば、契約期間満了後の退去が認められています。

家主のメリット・デメリット


  短い場合 長い場合

  • 有効な更新料条項があれば、更新料を何度も請求できる。
  • 有効な中途解約違約金条項があれば、中途解約されると違約金を取得できる。

  • (手動更新の場合)更新手続が煩瑣。
  • 借主は、良い別物件があれば転居される。
  • 建物の耐用年数を超える契約期間にした場合、修繕・建て替えに支障をきたすことがある。 

借主のメリット・デメリット


  短い場合 長い場合

  • 良い別物件があれば、移転し易い。
  • (事業用の場合)じっくり設備などに投下した資本を回収できる。

  • 有効な更新料条項があれば、何度も更新料を支払う必要がある。
  • (手動更新の場合)更新手続が煩瑣。
  • 良い別物件があっても、移転しずらい。

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