マンションのルールを守ってくれない区分所有者が一人でもいると困りますよね。そのような区分所有者に管理組合はどう対応すれば良いのでしょうか？

マンションは、敷地や建物の一部を複数の所有者が共有する形態です。マンションの良い状態を維持できるように、区分所有法（建物の区分所有等に関する法律）は、マンション管理組合に対して、特殊な権利を与えています。

ここでは、マンションのルール（規約）に違反する区分所有者に対して、マンション管理組合ができることを説明します。

【1】共同利益には、

➀財産管理的観点からの共同利益だけでなく

②いわゆる共同生活的観点からの共同の利益（プライバシー侵害や騒音の禁止等）

も当然に含まれる（稲本＝鎌野・区分所有47頁，塩崎・大系(19)266頁［福田］）。

• 建物の毀損
• 建物の不当使用行為（専有部分に危険物を持ち込むなど）
• 建物の不当外観変更行為（バルコニーに広告を取り付けるなど）

などが含まれる（塩崎・大系(19)312頁［仙波英躬］）。

• 管理費滞納を「共同利益に反する行為」に含めるとする見解（判タ1386号35頁）と、含めないとする見解がある（大阪高裁H14.5.16判決判タ1109号253頁）。無理をして「共同利益に反する行為」を理由として提訴するよりも、管理費等滞納については、こちらの記事（マンション管理費、修繕費、積立金などの回収）もご参照ください。

密接な共同生活を余儀なくされるという特殊性から、比較的広く解釈すべき（藤巻梓・民商146巻６号601頁）。

• ペット不可マンションでのペット飼育（東京地判平成６年３月31日判時1519号101頁）
• 管理組合の役員を中傷する文書の配布等にかかる判決（最三小判平成24年１月17日裁判集民239号621頁・判時2142号26頁・判タ1366号99頁）は、原審、原々審が全く事実認定をしていない事例であり、一般的基準を明らかにしたものとまではいえない（片桐善衛・判時2157号165頁）

• 住居専用部分を税理士事務所に使用（東京高裁H23.11.24判決判タ1375号215頁）
• 住居専用部分を託児所に使用（横浜地裁H6.9.9判決判時1527号124頁・判タ859号199頁、東京地裁H18.3.30判決判時1949号55頁）
• 多数の目的外使用が放置されている場合に本請求が権利濫用とされた例（東京地裁H17.6.23判決判タ1205号207頁）

以下のような訴訟を提起し勝訴すれば、所有者・入居者の意思に反しても強制的に退去などをさせることができます。

競売請求は、いきなり競売できる訳ではなく、競売請求認容判決を取得する必要があります。

こちらのコラム（滞納された管理費・修繕費・積立金の回収）もご参照ください。

義務違反者に対して訴訟などをするには、集会の決議をとる必要があります。

1. 違反行為の停止請求の訴訟：前項の規定に基づき訴訟を提起するには、集会の決議によらなければならない。（区分所有法57Ⅱ）【1】
2. 使用禁止請求：集会の決議に基づき、訴えをもつて（区分所有法58Ⅰ）
3. 競売の請求：集会の決議に基づき、訴えをもつて（区分所有法59Ⅰ）
4. 占有者に対する引渡し請求：集会の決議に基づき、訴えをもつて、（区分所有法60Ⅰ）

【1】違法行為の差止請求をするためには、「訴訟」を要求されていないことに注意。訴訟前に差止を請求しても、なお違法行為を止めない場合に「訴訟」を提起することになります。そして「訴訟」提起の段階で始めて集会決議を要します。

総会招集を全区分所有者に通知する前に、当該義務違反者に通知します。

「マンション管理組合において、提訴議決を行なうために、貴殿の氏名・違反行為の態様を全戸に通知し、掲示板にもその旨公開します」旨を通知し、任意での（裁判前の）是正を促します。

実際に義務違反者の氏名や部屋番号を、全戸通知したり掲示板へ公開することはプライバシー侵害に該当する可能性があります。