相続登記したいのに、「一人だけ協力してくれない」「放置しているうちに相続人が何十人」にもなってしまった。
そんな理由で空き家・空き地になっていることも多いと思います。解決方法を何点かご紹介します。
(この記事は、令和2年3月17日司法書士佐藤大輔が空き家問題解決サイト「空き家どうする?!」にコラムとして寄稿したものに加筆したものです。)
遺産分割協議の前提知識 |
こちらを参照ください |
遺産分割協議をするには、相続人を確定するために、被相続人の出生から死亡までの戸籍を集める必要があります。 しかしながら、戸籍の一部が保存期間経過などの理由で集められず、相続人が誰だか確定できないことがあります。 |
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遺産分割協議の成立には、「相続人全員の同意」が必要です。 一人でも反対していると成立しません。 |
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遺産分割協議は、「口頭」でも成立します。 ただし、書面化して全員が実印を押印し、印鑑証明書を添付しないと各種財産の名義変更は出来ません。 |
遺産分割協議は「相続人全員が同意」しないと成立しません。
「同意しない」には、積極的に反対している場合のほか、意思表示ができない状態である場合をも含みます。
相続人中に判断能力に欠ける方がいらっしゃっても、成年後見開始申立ては必ずしも必要ではありません。相手方当事者に判断能力があることは、調停を受付てもらうための要件ではないからです。
➊ 遺産分割調停を起こしましょう。
❷ あなたが不動産を取得する旨の調停や審判が成立すれば、調停調書や審判書に基づき、あなた単独で相続登記をすることが可能です。
❸ 遺産分割調停に基づいて登記申請する場合は、申請書に調停調書の正本を添付すれば足り、別に相続を証する書面として戸籍謄本等の添付は不要である(昭和37年5月31日民事甲第1489号)。
➊ 相続人全員相手に「時効援用する旨と、登記手続のためにやむを得ず提訴する旨」を記載した文書を送付します。 | |
これにより、実際に提訴した際、訴状を相手方が受け取るのかどうか(所在不明で返送されるのか)を確認することも可能です。 次のような項目も記載しておけば、いきなり訴えるよりも、不測の事態を回避できます。
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❷ 時効取得を理由に他の相続人全員を相手方として所有権移転登記請求訴訟を提起します。 | |
欠席判決(擬制自白の成立)を目指して提訴するのも良いですが、次のようなデメリット・リスクもあります。
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❸ 全相続人名義で相続登記(債権者代位又は保存行為として単独で)をします。 | |
❹ 判決に基づき全相続人からあなた名義へ所有権移転登記をします。 | |
❺ 相続税ではなく、所得税の対象になります。 | |
【1】過去の判例では、次の事項を要件として自主占有(所有の意思をもって占有すること)を認めています(最判S47.9.8、最判H8.11.12)。
1.共同相続人の一人が、単独に相続したものと信じて疑わず、
2.相続開始とともに相続財産を現実に占有し、
3.その管理、使用を専行してその収益を独占し、
4.公租公課も自己の名でその負担において納付してきており、
5.公租公課も自己の名でその負担において納付してきており、
6.これについて他の相続人がなんら関心をもたず、異議も述べなかつた
☛ 前記相続人はその相続のときから相続財産につき単独所有者としての自主占有を取得したものというべきである。
大昔に成立した遺産分割協議書や特別受益証明書などでも、相続登記できる場合もあります。
① 遺産分割協議が成立しているのに、登記に協力してくれないことを理由に「所有権移転登記請求」を求める訴訟を提起します。訴訟に添付する戸籍謄本などは登記でも利用しますので、原本を返して貰えるようにします。
② 相続人全員名義(死者名義も可能)で相続登記します。
③ 勝訴判決に基づき、あなた単独で他の相続人から「年月日遺産分割」を登記原因にして所有権移転登記を行ないます。
① 不動産を取得することとされた相続人が、押印を拒否している相続人を相手方に所有権確認請求訴訟を提起します。
② その勝訴判決と他の相続人全員の署名押印がされた遺産分割協議書(印鑑証明書付き)を添付して単独で相続登記を行ないます(平成4年11月4日民事局第三課長回答第6284号)。
① 不動産を取得することとされた相続人が、印鑑証明書の提出を拒否している相続人を相手方に遺産分割協議書真否確認訴訟(民事訴訟法134)提起します。
② その勝訴判決と他の相続人全員の署名押印がされた遺産分割協議書(印鑑証明書付き)を添付して単独で相続登記を行ないます(昭和55年11月20日民事局第三課長回答第6726号)。
実際に解決するためには、事案ごとに検討すべき難しい課題が種々ございます。
また、いずれの方法も、法定相続分による相続登記を保存行為として入れることには、慎重にご対応ください。∵第三者へ譲渡されて対抗要件を具備されると面倒だからです。
もし地元の司法書士が対応できないという場合には、当グループにご相談ください。