意思能力が無いことを証明するために・・・「介護認定記録」を読み解く


意思能力が無いことを証明するためには「介護認定記録」を読み解く必要があります。

見慣れない言葉が多用されているため、ポイントを抑えておかないと、その読解には時間が掛かります。

もくじ
  1. 介護認定の流れ
  2. (介護保険)認定情報を読み解く
  3. (介護保険)認定調査票(特記事項)を読み解く
  4. (介護保険)サービス提供の記録を読み解く
  5. 人気の関連ページ

介護認定の流れ


介護記録を読み解くためには「介護認定の流れ」を理解している必要があります。

介護認定を申請

ヘルパーさんなどの介護サービスを受けることを希望するご本人が、その住所地の介護保険窓口や地域包括支援センターに申請します。

❶ 介護認定調査員が「本人の心身の状況に関する調査」を行ないます。

このとき使われるのが「認定調査票」で「基本調査(74項目)【1】」と「特記事項【2】」があります。

【1】74項目には<特別な医療>に関する項目を含みます。

【2】特記事項には、基本調査では伝えきれない「ご本人固有の状態」を文章で記載することで、適格に審査会に伝えます。

❷ 主治医意見書

「主治医意見書」の項目と、上の「認定調査票」の聴取項目は、一部が重複します。

❸ ❶❷の結果に基づき、「コンピューターによる一次判定」が行なわれます。

介護認定調査員が提出した「認定調査票のうち74項目」と「主治医意見書」がコンピューターに掛けられ、全国一律の基準による「一時判定」が行なわれます。

❹ 「介護認定審査会による二次判定」が行なわれます。

介護認定審査会は、保健・医療・福祉の学識経験者により構成されます。

「主治医意見書」と「認定調査票のうち特記事項」を中心に検討されます。

❺ 要介護認定

この結果をもとに市町村が要介護認定を行ないます。

軽度 ↔ 中度 ↔ 重度
要支援1 ↔ 要支援2 ↔ 要介護1 ↔ 要介護2 → 要介護3 ↔ 要介護4 ↔ 要介護5  

更新申請は、原則12か月です(状態に応じ3~24か月)。

➏ 介護(予防)サービス計画の作成

介護認定 介護サービス計画の作成者
要支援1、要支援2 地域包括支援センター 
要介護1~要介護5 居宅介護支援事業者

❼ 介護サービスの利用開始

認定情報を読み解く


開示される認定情報の全体像

介護保険の等級認定のための「認定情報」は、「認定情報(1頁目)」+「認定調査票(特記事項)」+「主治医意見書」から構成されています。

まず「認定情報(1頁目)」のどこに何が記載されているかを理解ください。

黄色=認定調査員の調査結果が反映された部分   緑色=主治医意見書が反映された部分   青色=左二つをコンピュータが分析した結果を表示した部分  

そのあと、部分ごとに説明します。


認定情報(申請者用)

作成日:平成00年00月00日

被保険者番号:1000657867   被保険者区分:第一号被保険者  被保険者名:〇〇 〇〇    年齢:00歳 性別:男

申請番号:4256463443     申請区分:更新申請       申請日:平成00年00月00火  審査日:平成00年00月00日

前回要介護度:要介護2     前回認定有効期間:H00/00/01~H00/00/31

1.一次判定(この分数は実際のケア時間を・・・)   2.認定調査項目

要介護認定等基準時間

 

 

   

3.中間評価項目得点

 
   
4.日常生活自立度  

障害高齢者自立度 :

認知症高齢者自立度:

 
5.認知機能・状態の安定性の評価結果  
   
6.現在のサービス利用状況(介護給付)  
   
7.主治医意見書項目   <特別な医療>
     

  • 認定調査項目の左側に黒丸「●」が表示されている項目があります【1】。これらは「主治医意見書」にも同種項目があることを意味し、認定審査会に対して「主治医意見書」も見るようにとの注意を促す意味で振られた●です。
  • 認定情報の文字の所々に引かれたアンダーライン【2】は、「認定調査委員の調査結果」と「主治医意見書」との間に見解の相違が見られる項目であることを意味しています。
  • 令和2年10月、認定情報のシステムに変更が行なわれました。同日以降に開示される認定情報では、若干の変更が見られます。

【1】●は、上の見本には表示していません。現物には以下の12項目に●が表示されています。

「1-1麻痺」「1-2拘縮」「2-2移動」「2-3嚥下」「2-4食事摂取」「3-1意思の伝達」「3-4短期記憶」「3-8徘徊」「4-1詐害的」「4-4昼夜逆転」「4-7介護に抵抗」「5-3日常の意思決定」

【2】アンダーラインも上の見本では、表示していません

1.一次判定・要介護認定等基準時間

厚生労働省「要介護認定・介護認定審査会委員テキスト(2009)改訂版」H24.4/34頁より抜粋
厚生労働省「要介護認定・介護認定審査会委員テキスト(2009)改訂版」H24.4/34頁より抜粋

すでにご説明した「介護認定の流れ」❸コンピューターによる一時判定の結果です。

介護の手間を「分」という単位で表示し、介護の手間の多寡により要介護度を判定したものです。

時間は、ご本人の「能力」「介助の方法」「(障害や現象の)有無」から統計データに基づき算出されます。この「分」は、実際のケア時間を示すものではありません。

認知症の場合には加算が行なわれます。

 

上図では、コンピューターが「あるご本人」について

  1. 「要介護2」と判断したこと(左から始まったグラフが50~70分の間で止まっている。)
  2. BPSD(問題行動)への対応に時間を取られるだろう「16.1分」と予測していること
  3. 認知症加算「19.0分」が行なわれていること

が分かります。

右列「2.認定調査項目」欄

認定調査員が聴取した62項目の結果が表示されています。

項目ごとの意味については、厚生労働省/「要介護認定・認定調査員テキスト2009改訂版(令和3年4月改訂)」/最終アクセス211006をご参照ください。

 第1群 身体機能・起居動作 第2群 生活機能 第3群 認知機能
1-1 麻痺(5) 2-1 移乗 3-1 意思の伝達
1-2 拘縮(4) 2-2 移動 3-2 毎日の日課を理解
1-3 寝返り 2-3 えん下 3-3 生年月日をいう
1-4 起き上がり 2-4 食事摂取 3-4 短期記憶
1-5 座位保持 2-5 排尿 3-5 自分の名前をいう
1-6 両足での立位 2-6 排便 3-6 今の季節を理解
1-7 歩行 2-7 口腔清潔 3-7 場所の理解
1-8 立ち上がり 2-8 洗顔 3-8 徘徊
1-9 片足での立位 2-9 整髪 3-9 外出して戻れない
1-10 洗身 2-10 上衣の着脱  
1-11 つめ切り 2-11 ズボン等の着脱  
1-12 視力 2-12 外出頻度  
1-13 聴力    
第4群 精神・行動障害 第5群 社会生活への適応 <特別な医療> 
4-1 被害的 5-1 薬の内服 点滴の管理
4-2 作話 5-2 金銭の管理 中心静脈栄養
4-3 感情が不安定 5-3 日常の意思決定 透析
4-4 昼夜逆転 5-4 集団への不適応 ストーマの処置
4-5 同じ話をする 5-5 買い物 酸素療法
4-6 大声を出す 5-6 簡単な調理 レスピレーター
4-7 介護に抵抗   気管切開の処置
4-8 落ち着きなし   疼痛の看護
4-9 一人で出たがる   経管栄養
4-10 収集癖   モニター測定
4-11 物や衣類を壊す   じょくそうの処置
4-12 ひどい物忘れ   カテーテル
4-13 独り言・独り笑い    
4-14 自分勝手に行動する    
4-15 話がまとまらない    

右列<特別な医療>欄

認定調査員が聴取した<特別な医療>12項目の結果が表示されています。(「主治医意見書」にも同じ項目がありますが、主治医意見書に記載されていたものではありません。)。

「3.中間評価項目得点」欄

第1群 第2群

第3群

第4群 第5群
 82.1 100.0 100.0 92.6 48.4

認定調査項目の各群においてそれぞれ、最高 100 点、最低 0 点となるように、各群内の選択の結果に基づき表示されます。

この数値は、群ごとに評価される機能・行動等に関する特徴を示しています。中間評価項目得点は、樹形モデルの中での分岐時の基準に使用されますが、直接的に介護の手間を示す指標ではないため、この値の大小のみをもって要介護度を推測することはできません。

また、調査項目は群ごとにそれぞれ異なる重みづけにより計算されているため、各群の得点の比較や、加減乗除して得られる値は意味をなしません。

「4.日常生活自立度」欄

障害高齢者自立度 :A1(J2)

認知症高齢者自立度:Ⅲa (Ⅲa)

  • 介護認定調査員による「認定調査結果」が転記されています(「主治医意見書」にも同じ項目がありますが、主治医意見書に記載されていたものではありません。)。
  • 記号の後ろに()で記載されているのは、前回の認定調査結果です。ただし、令和2年10月のシステム変更によりそれ以降に開示された情報では、前回の認定調査結果()は表示されません。
  • コンピューターによる一次判定で利用されています。
  • 障害高齢者自立度は、身体能力的に生活を自立できるかを表わしています。従って、高齢者の意思能力とは関係ありません。
  • 認知症高齢者自立度は、認知能力的に生活を自立できるかを表わしています。従って、高齢者の意思能力の有無に関係する評価です。詳しくは、厚生労働省/「要介護認定・認定調査員テキスト2009改訂版(令和3年4月改訂)」/最終アクセス211006をご参照ください。
認知症なし ↔ 軽度 ↔ 中度 ↔ 重度
自立 ↔ Ⅰ ↔ Ⅱ ↔ Ⅲ → Ⅳ ↔ M  

「5.認知機能・状態の安定性の評価結果」欄

認知症高齢者の日常生活自立度
  認定調査結果 : Ⅰ
  主治医意見書 : Ⅱa
認知症自立度Ⅱ以上の蓋然性 : 81.9%
状態の安定性 : 安定
給付区分 : 介護給付

認知症高齢者の日常生活自立度について、「認定調査員の調査結果」と「主治医意見書」の比較を行なっている欄です。

「6.現在のサービス利用状況」欄

現在受けている介護サービスの内容が表示されます。

「7.主治医意見書項目」欄

「主治医意見書」から介護サービスに影響を与える可能性が高い次の項目が抜粋して表示されます。

  • 認知症高齢者の日常生活自立度
  • 短期記憶
  • 日常の意思決定を行なうための認知能力
  • 自分の意思の伝達能力
  • 食事行為

表示された項目のそれぞれの意味については、コラム(意思能力がないことを証明するために「医療記録」を読み解く)をご参照ください。

一部が保管期間経過で開示されなかったときは「前回結果」欄

  • 「2.認定調査項目」は、認定調査員による調査結果を記載したものですが「調査結果」の右側に「前回結果」が記載されています。この部分も参考にすることができます。
  • 「4.日常生活自立度」は、認定調査員による調査結果を記載したものですが「今回の調査結果」の右側に()書きで指数が表示されていることがあります。()内は前回の指数ですので、この部分も参考にすることができます。

認定調査票(特記事項)を読み解く


認定調査員が「数字だけでは伝えきれない事項」を認定調査員ご自身の言葉で、認定審査会に伝えるために記載します。

項目ごとの意味については、こちらの記事(介護認定調査員の部屋→サイトマップ→「認定審査会に伝わる特記を書く」/山形の介護認定調査員・今田富男氏/211002最終アクセス)をご参照ください。

(介護保険)サービス提供記録を読み解く


介護保険サービスを利用していた場合、サービス提供事業者がサービス提供記録を必ず作成し、保管しています。

ご本人の体調や具体的な言動が詳細に記されています。

参考文献


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