司法書士や弁護士を頼らず、ご自身で訴訟することを「本人訴訟」といいます。私たちは、訴訟の専門家として「本人訴訟」はお薦めしません。
それでも「どうしても本人訴訟をなさりたい方」や「本人訴訟をせざるを得ない方」はいらっしゃいます。これらの方々にアドバイスするために、このコラムは執筆しました。
そんなとき、どうすれば良いのか?
もくじ | |
|
紛争解決の方法は、大きく分けて次の3つです。
どの手続を行うにしても、司法書士・弁護士に依頼せずご自身でなさること(本人訴訟といいます。)はお薦めしません。
直接、紛争の相手方と話し合う方法です。
話し合いの失敗により紛争の激化を招くことも多々あります。
裁判官に「主張」とそれを裏付ける「証拠」を提示して、白黒つけてもらう手続きです。
どういう事実については原告・被告どちらに立証責任があるのかというのが決まっており、立証責任を負う側が立証に失敗すると、負けます。
書面による証拠が揃っていない場合には、証人尋問などを要し、素人の方にはよりハードルが高くなります。
一番最初に申し立てる裁判所を第一審といいますが、次のような分類になります。
争いの価格 | 選べる裁判所(と手続) | |
第一審 | 140万円超 |
|
140万円以下 |
|
|
60万円以下 |
|
裁判所の場所を借りて、調停委員に間に入ってもらい話し合いをします。
調停委員に当たりはずれがあります。
裁判所は「争いの価格」に係わらず、簡易裁判所になります。
簡易裁判所の訴訟手続の特例です。
一日で審理を終えて判決する特別な訴訟手続です。
60万円以下の金銭の支払を求める場合に限り、利用できます。
控訴をして別の裁判官に判断を求めることができません。
主張や立証が足らない〔1〕と原告は不利ですので、私たち専門家は「少額訴訟」を使わず、簡易裁判所の通常訴訟を使うのが通常です。
〔1〕「訴訟は水もの」です。相手方の主張・立証によって、原告が再度反論する必要が出てくることも多々あります。
定型的な貸金返還請求などの際に利用します。
相手方が異議を述べると訴訟に移行します。
民事訴訟と民事調停を比較すると次表のとおりです。
民事訴訟 | 民事調停 | |
概要 |
話し合いが成立しないので、裁判官が白黒を決める手続 |
話し合いで決める手続 |
あなたがやるべきこと |
|
フワッとした話し合い |
関係者 |
裁判官は中立の立場なので、上記「1」~「3」について何もアドバイスできない。 |
調停委員も中立だが、アドバイスをしてくれることもある。 |
ここまでの まとめ |
☛正しい法律知識が必要 | ☛民事訴訟ほどではない。 |
相手方不出頭の効果 | やるべきことをキッチリやれば、あなたが勝ちます。 | 調停は不調になります。 |
【1】相手方にお金を請求するにしても、⑴契約違反に基づいて請求する場合や、⑵契約関係がない相手方に損害を与えられた場合(交通事故など)に賠償を請求する場合があります。さらに、交通事故の損害を請求する場合でも①自賠法に基づき請求する場合と②民法709条などに基づいて請求する場合があります。
【2】あなたの「お金を支払え」と主張を根拠づける事実(要件事実、主要事実、請求原因事実などといいます。)を漏らさず記載します。
【3】事実を証明する証拠を提出します。
素人の方が、裁判所手続きを利用して紛争の解決を求める場合には、簡易裁判所の「民事調停」を利用されることをお奨めします。
なお、紛争相手が親族である場合には家庭裁判所の「親族関係調整調停」を利用することも可能です。親族関係調整調停についてはこちらのコラム「親族関係調整調停」をご参照ください。