本人訴訟したい方へ、本人訴訟せざるをえない方へ「民事調停のススメ」


司法書士や弁護士を頼らず、ご自身で訴訟することを「本人訴訟」といいます。私たちは、訴訟の専門家として「本人訴訟」はお薦めしません。

それでも「どうしても本人訴訟をなさりたい方」や「本人訴訟をせざるを得ない方」はいらっしゃいます。これらの方々にアドバイスするために、このコラムは執筆しました。

  • 自分は悪くないから専門家に費用を払わずに自分でやりたい。
  • 司法書士も弁護士も嫌いだから自分でやりたい。
  • 金額が小さすぎて専門家に断わられたから自分でやるしかない。
  • 自分でやったという人がいるが、自分ならどうなの?
  • 「少額訴訟が良い」とアドバイスされたがどうなの?
  • 「支払督促が良い」とアドバイスされたがどうなの?

そんなとき、どうすれば良いのか?

もくじ
  1. 紛争解決方法の種類
  2. 少額訴訟を薦められた
  3. 支払督促を薦められた
  4. 民事訴訟と民事調停
  5. 結論
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紛争解決方法の種類


紛争解決の方法は、大きく分けて次の3つです。

どの手続を行うにしても、司法書士・弁護士に依頼せずご自身でなさること(本人訴訟といいます。)はお薦めしません。

示談折衝

直接、紛争の相手方と話し合う方法です。

話し合いの失敗により紛争の激化を招くことも多々あります。

訴訟

裁判官に「主張」とそれを裏付ける「証拠」を提示して、白黒つけてもらう手続きです。

どういう事実については原告・被告どちらに立証責任があるのかというのが決まっており、立証責任を負う側が立証に失敗すると、負けます。

書面による証拠が揃っていない場合には、証人尋問などを要し、素人の方にはよりハードルが高くなります。

一番最初に申し立てる裁判所を第一審といいますが、次のような分類になります。

争いの価格 選べる裁判所(と手続)
第一審  140万円超
  • 地方裁判所
140万円以下
  • 簡易裁判所の通常訴訟
  • 地方裁判所
60万円以下
  • 簡易裁判所の少額訴訟
  • 簡易裁判所の通常訴訟
  • 地方裁判所

調停

裁判所の場所を借りて、調停委員に間に入ってもらい話し合いをします。

調停委員に当たりはずれがあります。

裁判所は「争いの価格」に係わらず、簡易裁判所になります。

少額訴訟を薦められた


簡易裁判所の訴訟手続の特例です。

一日で審理を終えて判決する特別な訴訟手続です。

60万円以下の金銭の支払を求める場合に限り、利用できます。

控訴をして別の裁判官に判断を求めることができません。

主張や立証が足らない〔1〕と原告は不利ですので、私たち専門家は「少額訴訟」を使わず、簡易裁判所の通常訴訟を使うのが通常です。

〔1〕「訴訟は水もの」です。相手方の主張・立証によって、原告が再度反論する必要が出てくることも多々あります。

支払督促を薦められた


定型的な貸金返還請求などの際に利用します。

相手方が異議を述べると訴訟に移行します。

民事訴訟と民事調停


民事訴訟と民事調停を比較すると次表のとおりです。

  民事訴訟 民事調停
概要 

話し合いが成立しないので、裁判官が白黒を決める手続

話し合いで決める手続
あなたがやるべきこと
  1. 正しい訴訟物【1】の選択
  2. 正確な主張【2】
  3. 正確な立証【3】

フワッとした話し合い

関係者

裁判官は中立の立場なので、上記「1」~「3」について何もアドバイスできない。

調停委員も中立だが、アドバイスをしてくれることもある。

ここまでの

まとめ

☛正しい法律知識が必要 ☛民事訴訟ほどではない。
相手方不出頭の効果 やるべきことをキッチリやれば、あなたが勝ちます。 調停は不調になります。

【1】相手方にお金を請求するにしても、⑴契約違反に基づいて請求する場合や、⑵契約関係がない相手方に損害を与えられた場合(交通事故など)に賠償を請求する場合があります。さらに、交通事故の損害を請求する場合でも①自賠法に基づき請求する場合と②民法709条などに基づいて請求する場合があります。

【2】あなたの「お金を支払え」と主張を根拠づける事実(要件事実、主要事実、請求原因事実などといいます。)を漏らさず記載します。

【3】事実を証明する証拠を提出します。

結論


素人の方が、裁判所手続きを利用して紛争の解決を求める場合には、簡易裁判所の「民事調停」を利用されることをお奨めします。

なお、紛争相手が親族である場合には家庭裁判所の「親族関係調整調停」を利用することも可能です。親族関係調整調停についてはこちらのコラム「親族関係調整調停」をご参照ください。

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