非訟事件は、訴訟事件以外の裁判事件です。非訟事件は種類が多く、しかも様々な法令に散らばって規定されているため、その全体像が分からないという方が多いと思います。
概要をまとめましたのでご参照ください。
もくじ | |
|
〔凡例〕この記事では次のとおり略記することがあります。
非訟事件手続法を見ても、借地非訟や会社非訟について書かれていません。
ではどこに書いてあるのかと言いますと、それぞれ別の法律と裁判所規則で定められています。
裁判所規則は、裁判所が定めたものですが、イーガブ(eーGOVポータル)には出てきません。リンクをクリックするか、規則名をそのまま検索すると、PDFで見ることができます。
非 訟 事 件 |
非訟事件手続法に定められた非訟事件
|
||
民事非訟事件(非訟法92以下) | |||
公示催告事件(非訟99法以下) |
|||
過料事件(非訟109法以下) |
|||
会社非訟事件(商事非訟ともいいます。)
|
|||
借地非訟事件
|
|||
家事事件(家事非訟とはいわず「家事事件」といいます。)
|
非訟事件を上の4類型ごとに整理し、具体例を列挙しますと、次のとおりになります。
非訟事件手続法に定められた非訟事件(非訟事件手続法、非訟事件手続規則) | ||
民事非訟事件(非訟法92以下) | ||
|
||
公示催告事件(非訟99法以下) |
||
過料事件(非訟109法以下) |
||
会社非訟事件(商事非訟ともいう。会社法/第7編雑則/第3章非訟/868~906。会社非訟事件等手続規則) | ||
株式に関する事件 | ||
|
||
株主総会に関する事件 | ||
|
||
役員に関する事件 | ||
|
||
取締役会議事録に関する事件 | ||
|
||
会計帳簿閲覧 | ||
|
||
社債に関する事件 | ||
|
||
清算に関する事件 | ||
|
||
過料事件(会976-979) | ||
借地非訟事件(借地借家法、借地非訟事件手続規則) | ||
|
||
家事事件(家事非訟とはいわず「家事事件」といわれます。家事事件手続法、家事事件手続規則) | ||
別表第一事件 | ||
|
||
別表第二事件 | ||
|
非訟事件 | 訴訟事件 | |
性格 | 国家が私人間の生活関係に介入するために命令・処分をする民事行政 | 法令を適用して紛争を解決する民事司法 |
口頭弁論 | 口頭弁論を開かなくてよい | 公開の口頭弁論を開く |
主義 | 裁判の基礎資料につき必要があれば裁判所が職権で探知することができる(職権探知主義) | 当事者が提出した資料のみを裁判所の資料とする建前(弁論主義) |
終局 | 決定 | 判決 |
不 服 申 立 |
決定に対する不服申立ても抗告 | 判決に対して不服があるときは、さらに控訴、上告という二度の不服申立てを認められている |
具体例 |
|
非訟事件手続法第1条(趣旨) | |
この法律は、非訟事件の手続についての通則を定めるとともに、民事非訟事件、公示催告事件及び過料事件の手続を定めるものとする。 | |
非訟事件手続法第2条(最高裁判所規則) | |
この法律に定めるもののほか、非訟事件の手続に関し必要な事項は、最高裁判所規則で定める。 | |
>最高裁判所規則とは「非訟事件手続規則」のことです。 |
会社法第875条(非訟事件手続法の規定の適用除外) | |
この法律の規定による非訟事件については、非訟事件手続法第40条(筆者注:検察官の関与)及び第57条第2項第2号(筆者注:終局決定への理由の要旨の記載)の規定は適用しない。 | |
>除外された条文以外は、会社非訟事件にも非訟事件手続法が準用されます。
|
|
会社法第876条(最高裁判所規則) | |
この法律に定めるもののほか、この法律の規定による非訟事件の手続に関し必要な事項は、最高裁判所規則で定める。 | |
>最高裁判所規則とは「会社非訟事件等手続規則」のことです。 | |
会社法第233条(適用除外) | |
非訟事件手続法第四編の規定(筆者注:公示催告)は、株券については、適用しない。 |
借地借家法第41条(非訟事件手続法の適用除外及び最高裁判所規則) | |
|
|
>除外された条文以外は、借地非訟にも非訟事件手続法が適用されます。 >最高裁判所規則とは「借地非訟事件手続規則」のことです。 |
家事事件手続法第1条(趣旨) | |
家事審判及び家事調停に関する事件(以下「家事事件」という。)の手続については、他の法令に定めるもののほか、この法律の定めるところによる。 | |
>(会社非訟事件や借地非訟事件には非訟事件手続法を適用されますが)家事事件の場合には、非訟事件手続法はそのまま適用されません。【1】
|
|
家事事件手続法第3条(最高裁判所規則) | |
この法律に定めるもののほか、家事事件の手続に関し必要な事項は、最高裁判所規則で定める。 | |
家事事件手続法附則第1条(施行期日) | |
この法律(以下「新法」という。)は、非訟事件手続法の施行の日から施行する。 |
【1】「家事審判法の下では,家事審判・家事調停に関しては,特別の定めがある場合を除き,その性質に反しない限り,旧非訟事件手続法第1編(総則)の規定が準用される旨が定められていたが(家審7条),家事事件手続法においては,家事審判・家事調停に特別の規定が自己完結的に設けられているので,新たな非訟事件手続法(平成23法51)の規定の準用はされていない。(梶村太市・徳田和幸(編著)『家事事件手続法 第3版』(有斐閣、2016年)8頁」
非訟事件では、まず裁判所HPや、裁判所職員が編集に加わった書籍(「○○の実務」など)を参照することが大切です。
これらは現在の実務の到達点であり、適宜改訂も行われており、目録や運用に沿った申立てをすることで発令が迅速に行われるためです。