夫婦間、親子間、親族間それぞれに発生する「扶養義務」と「扶養請求の方法」について、簡単にまとめています。
もくじ | |
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司法書士会の研修レジメ(下表)が、一番一覧性に優れていたので抜粋します(生活保護の相談を受けた際の対応について/弁護士普門大輔先生/令和4年2月21日大阪司法書士会研修/研修レジメ6頁)。
根拠条文 | 親族関係 |
扶養義務 の有無 |
扶養義務 の程度 |
扶養の程度・方法の決定 | |
民752 | 夫婦 | 常に扶養義務を負う |
強い扶養義務 (生活保持義務)【2】 |
①まずは当事者間で協議して決める。 ②協議が整わないときは、家庭裁判所が「一切の事情」を考慮して決める。 (民法879条) |
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絶対的扶養義務者 (民877Ⅰ) |
直 系 血 族 |
未成熟子【1】に対する親 | |||
成人した親子等 |
弱い扶養義務 (生活扶助義務)【3】 |
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兄弟姉妹 | |||||
相対的扶養義務者 (民877Ⅱ) |
3親等内の親族 | 家裁が「特別の事情」があると認めた例外的な場合だけ扶養義務を負う。 |
【1】経済的に自立できていない子
【2】扶養義務者が文化的な最低限度の生活水準を維持した上で余力があれば自身と同程度の生活を
保障する義務
【3】扶養義務者とその同居の家族がその者の社会的地位にふさわしい生活を成り立たせた上でなお余裕があれば援助する義務
東京高裁平成22.7.30決定(平22〔ラ〕683号扶養料申立却下審判に対する抗告事件) | |
要旨 抗告人の大学進学は相手方である父の同意を得たものではなく,一般に成年に達した子の大学教育の費用を親が負担すべきであるとまではいえないが,4年制大学への進学率が高まってきており,相手方の学歴や抗告人の学業成績からすれば,抗告人の4年制大学進学は予想されていたこと,抗告人及び同居親である母の収入だけでは抗告人が大学で学業を続けながら生計を維持することは困難であること,相手方は今後とも一定程度の収入を得ることが見込まれること,相手方が話合いによるのであれば一定額の支払に応じると述べていることなどの一切の事情を考慮すれば,相手方に対し,抗告人の学校関係費用,生活費等の不足額の一部を,抗告人が大学を卒業すると見込まれる月まで,扶養料として支払うよう命じるのが相当である。 (要旨はWestlawJapan) |
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上記判例に関する解説 | |
扶養料を認めたといっても、成年に達した子に対する親の扶助義務は、生活扶助義務にとどまるものであって、生活扶助義務としてはもとより生活保持義務としても、親が成年に達した子が受ける大学教育のための費用を負担すべきであるとは直ちにはいいがたいという判断を前提としており、従前の養育費に相当するような金額が認められたわけではありませんので、注意が必要です。 編著/冨永忠祐(弁護士)『養育費・扶養料・婚姻費用 実務処理マニュアル』(新日本法規出版、2018年)101頁 |
老親扶養については、生活保持義務的に考える見解(広島家審平成2年9月1日家月43巻2号162頁)もある(北野=梶村・家事人訴336頁,中山・扶養132頁)。
介護施設入所費用を扶養義務者が負担することもあろう(梶村=徳田・家事手続393頁,新潟家審平成18年11月15日家月59巻9号28頁)。
以上、要件事実マニュアル5p314以下
下記は、老親に対して扶養料を支払わなかったことが相続人廃除の理由の一つとされた事例です。
福岡家裁平成19.10.31審判(平18〔家〕第772号推定相続人廃除申立事件) | |
要旨 ◆被相続人(母)の遺言執行者が遺言による相手方(長男)の推定相続人からの廃除を申し立てた事案において、被相続人が70歳を超えた高齢であり、介護が必要な状態であったにもかかわらず、被相続人の介護を妻に任せたまま出奔した上、父から相続した田畑を被相続人や親族らに知らせないまま売却し、妻との離婚後、被相続人や子らに自らの所在を明らかにせず、扶養料も全く支払わなかったものであるから、これら相手方の行為は、悪意の遺棄に該当するとともに相続的共同関係を破壊するに足りる「著しい非行」に該当するとされた事例 (要旨はWestlawJapan) |
相手方との話し合いがまとまらない場合には、相手方の住所地の家庭裁判所に対して「扶養を求める調停」を申し立てます。
扶養義務者が複数いる場合には、「扶養すべき順序を指定する調停」を申し立てることもできます。
調停が不成立になった場合には、原則として自動的に審判となり、裁判官が一切の事情を考慮して審判します。
原則:金銭 例外:引取扶養
原則:定期払い 例外:扶養義務者が希望する場合などは一括払い
「扶養を求める貴方様にはお金がなく、扶養義務者である相手方にはお金がある」という状況は非常に不利です。相手方は弁護士に依頼できるのに、貴方様は弁護士に依頼するお金が足りない状態であろうからです。
司法書士は、家庭裁判所に提出する書類の作成及び提出を行うことができますが、裁判所とのやり取りは貴方様ご自身で行っていただく必要があります。それでも宜しければ、一度問合せをお願いします。
生活費が足りない場合には、他に「生活保護の受給申請」も検討いただければ幸いです。