不動産賃貸借における関西方式・関東方式


不動産賃貸借契約では、地域(関西と関東)によって商慣習に違いがあります。

特に地域を跨いだお引っ越しをなさる方は、こんな筈じゃなかったを無くすために、事前に確認ください。 

「不動産『売買』における関西方式・関東方式」についてはこちらをご参照ください。

もくじ
  1. 契約時に支払う一時金の違い
    • 契約時に支払う一時金の種類
    • かつて
    • その後
    • 現在
    • 立場別「敷金」「敷引き」「礼金」の要否
  2. 更新料
  3. エアコンの設置・非設置
  4. 京間(きょうま)と江戸間(えどま)
    • 各地での普及
    • 不動産の表示に関する公正競争規約、同施行規則

〔凡例〕

消契法2Ⅱ:消費者契約法第2条第2項

契約時に支払う一時金の違い


契約時に支払う一時金の種類

賃貸借契約の開始のために、賃借人が賃貸人に一括で支払うお金の種類には、次のものがあります。

敷金
保証金

【1】

  • 賃借人の債務不履行(滞納賃料や退去時の原状回復未了)の担保として、賃貸借契約開始時に賃貸人が預かっておく金員
  • 賃貸借契約終了後、賃貸人が賃借人に返還する。
礼金 
  • 賃貸借契約を結んでくれた御礼として支払う金員で、賃貸人の所得になる。
  • 賃貸借契約終了後に賃貸人が賃借人に返還しない。 

【1】建設協力金もあります。詳細はコラム「敷金・保証金・建設協力金の違い」を参照ください。

かつて

かつては

  • 関東=「敷金(敷引きなし)+礼金あり」
  • 関西=「敷金(敷引きあり)+礼金なし」

が多い印象でした。

その後

賃貸借契約は終了時にトラブルになることが多く、中でも敷引特約や原状回復に関してトラブルが多数発生しています。その結果、多くの判例・裁判例が蓄積され、トラブル予防のためにガイドラインや法律が制定されました。

  1. 平成10年3月国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を発表
  2. 平成10年9月3日最判
  3. 平成13年4月1日消費者契約法の施行
  4. 平成23年3月24日最判
  5. 平成23年7月12日最判
  6. 令和2年4月1日改正民法の施行(はじめて法律で敷金を定義)

これらの詳細については、コラム「敷引特約の有効性」をご参照ください。

現在

現在では・・・

  • 関東=・・・
  • 関西=「敷金あり/なし(敷引きあり/なし)」「礼金あり/なし」が急速に混在している印象。

賃貸人/賃借人ともにそれぞれメリット/デメリットを考えたうえで、設定/契約すべきです。

立場別「敷金」「保証金」「敷引き」「礼金」の要否

  賃貸人側 賃借人側

敷金

保証金

「あり」が望ましい。

∵賃借人の賃料滞納や原状回復未了への担保のため。

「なし」が望ましい。

∵経済的負担が増える。

∵返還請求の手間が掛かることもある。

敷引き

「あり」が望ましい。

∵所得が増える。

∵退去時に返戻すべき敷金が少なくてすむ。

「なし」が望ましい。

∵退去時の返戻される敷金が少なくなる。

礼金

「あり」が望ましい。

∵所得が増える。

∵「敷引特約」は建物滅失による賃貸借契約終了の場合には無効になる(敷引きせず全額返還。平成10年9月3日最高裁判決)が、礼金であれば返還不要。

「なし」が望ましい。

∵経済的負担が増える。

更新料の有無


居住用住宅は、通常2年契約になっています。

入居者は、入居から2年経過すると更新する必要があります。

更新する際に、賃借人から賃貸人に対して支払われる金員を「更新料」といいます。

  • 関東+京都=「更新料あり」が多い印象。
  • 関西(除く京都)=「更新料なし」が多い印象。全国展開の大手仲介会社を除く。

エアコンの設置・非設置


最初から部屋にエアコンがついている(賃貸人がつけてくれている。)か、ついていない(賃借人負担で設置する。)かという問題です。

最初からエアコンがあれば、賃借人にはエアコン購入・移設・廃棄コストがかからず楽です。

  • 関東=各部屋についていることが多い。
  • 関西=ついていないことが多い。

京間(きょうま)と江戸間(えどま)


畳は、縦横比率は1:2に統一されていますが、大きさが地域によって違います。

大きい順に並べると京間>中京間>江戸間>団地間となります。

畳屋さんのホームページによりますと、次のとおりです。

  京間 中京間 江戸間 団地間
長辺:短辺 1.91m:0.955m 1.82m:0.91m 1.74m:0.87m 1.7m:0.85m
1畳の面積 1.82㎡ 1.65㎡ 1.54㎡ 1.44㎡
4.5畳 8.20㎡ 7.45㎡ 6.95㎡ 6.5㎡
6畳 10.94㎡ 9.93㎡ 9.27㎡ 8.67㎡
8畳 14.59㎡ 13.24㎡ 12.36㎡ 11.56㎡

京間、江戸間、団地間は知っていましたが、中京間というのは知りませんでした。

それどころか「一坪(3.3㎡)で畳2畳」だと習いましたので、実は中京間が標準だったのかもしれません。

 

さて、京間と団地間では、長辺で21㎝も差があります。

京間と団地間では、8畳のお部屋であれば、面積で3㎡(一坪弱)も違いがあります。

「部屋の大きさが畳表示だった場合には、全く当てにならない」のが良く分かりますよね。賃貸住宅を探していて、チラシに「○畳」と書かれていても、現地で測らないと部屋サイズは分かりません。特に地域を跨いでのお引越し等の際には、畳サイズで家具を購入しないようご注意ください。

各地での普及

  • 関西・中国・四国・九州=京間が多いが、マンションでは団地間も。
  • 中京(愛知県周辺)=中京間が多いが、マンションでは団地間も。
  • 関東=江戸間が多いが、マンションでは団地間も。

不動産の表示に関する公正競争規約、同施行規則

不動産公正取引協議会連合会が定める「不動産の表示に関する公正競争規約施行規則」第9条第16号は「住宅の居室等の広さを畳数で表示する場合においては、畳1枚当たりの広さは1.62平方メートル(各室の壁心面積を畳数で除した数値)以上の広さがあるという意味で用いること。」と定め、「不動産の表示に関する公正競争規約」第27条は、違反した事業者に対して不動産公正取引協議会が行う措置(警告、違約金、消費者庁長官への報告)について定めています。

【1】「公正競争規約」は、各業界が自主的に定めたうえ、公正取引委員会の認定を受けた各業界のル-ルです(不当景品類及び不当表示防止法31条)。

【2】「不動産の公正競争規約」は、不動産公正取引協議会に加盟している不動産業界団体【3】が申し合わせた自主規制です。各不動産業界団体に加盟している各不動産会社は、規約を遵守する義務があります。

【3】不動産業界団体には、各都道府県ごとに、鳩のマークの宅地建物取引業協会(宅建協会)、兎マークの全日本宅地建物取引業協会(全日)があり、ほとんどの不動産会社はいずれかの会員です。さらに、いずれの都道府県の宅建協会、全日ともに、各地域ごとに設置されている不動産公正取引協議会に加盟しています。 

不動産公正取引協議会連合会(公正競争規約を制定)

各地域の不動産公正取引協議会(不動産公正取引協議会連合会の会員)

各都道府県の宅建協会/各都道府県の全日(各地域の不動産公正取引協議会の会員)

各不動産会社(たいてい宅建協会か全日の会員)

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