ある日、司法書士や弁護士から内容証明で滞納賃料の督促状が届いた。
そういえば親戚が賃貸住宅に入居する際、保証人になることを頼まれていた。
「7日以内に支払わなければ、法的措置をとる」というようなことが書いてある。
いったい、どうすれば良いのでしょうか?
普段は、不動産会社の顧問として賃貸人側の立場からアドバイスしていますが、このコラムでは、気の毒な連帯保証人の具体的対応方法を書きました。ご参照ください。
もくじ | |
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焦って対応するのは、良くありません。特に、司法書士や弁護士などの代理人がついている場合には、相手はプロですから、焦って電話などをして変な言質(げんち)をとられないようにご注意ください。
ただし、賃貸借契約書(の控え)がお手元にない場合には、連絡して、賃貸借契約書を入手してください。私たち司法書士がご相談を受けるときにあった方が、より具体的なアドバイスを差し上げることができるからです。もっとも賃貸人に連絡して変なことを言ってしまうのが心配という場合には、司法書士がお受けしたのち、賃貸人に連絡して取り寄せます。
「7日以内に全額支払わないと、法的措置をとる」旨が記載されているかもしれませんが、焦る必要はありません。7日以内もテンプレートです(14日以内になっていることもあります。)。仮に少し遅れても、法的措置をはじめるために必要な訴状を1~2週間で完成させて提訴することはできません。
もっとも全て完了するまで内容証明を放置しておく訳にはいきません。誠実に対応する旨を回答し、適宜現状報告も行っていきます。まずは、お近くの司法書士や弁護士にご相談ください。
令和2(2020)年4月1日以降に成立した賃貸借契約の場合には、連帯保証の「極度額(限度額)の定め」が必要で、この定めがなければ連帯保証契約は無効です(民465の2Ⅲ)。
フローチャートでご確認ください。
賃貸借契約が成立したのは | ||||
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令和2(2020)年3月31日以前 | 令和2(2020)年4月1日以降 | |||
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▼ | 連帯保証の「極度額(限度額)の定め」はありますか? | |||
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▼ | ある | ない | ||
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貴方が「(単なる)保証人」であれば言うことができます(民法452)が、「連帯保証人」であれば言うことができません(民法454)。そして、残念ながら、賃貸借契約の保証人は、通常「連帯保証人」です。不明な場合には賃貸借契約書をご覧ください。
民法第452条(催告の抗弁) | |
債権者が保証人に債務の履行を請求したときは、保証人は、まず主たる債務者に催告をすべき旨を請求することができる。ただし、主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき、又はその行方が知れないときは、この限りでない。 | |
民法第453条(検索の抗弁) | |
債権者が前条の規定に従い主たる債務者に催告をした後であっても、保証人が主たる債務者に弁済をする資力があり、かつ、執行が容易であることを証明したときは、債権者は、まず主たる債務者の財産について執行をしなければならない。 | |
民法第454条(連帯保証の場合の特則) | |
保証人は、主たる債務者と連帯して債務を負担したときは、前二条の権利を有しない。 |
まず、全額を支払ってしまうと、滞納が無くなってしまいます。賃貸人が賃貸借契約を継続すると、また滞納される可能性があります。したがって、何もせずに全額を支払うべきではありません。
賃借人には気の毒ですが、連帯保証人に一度迷惑をかけた場合には、再度、同じことが起こる可能性は否定できません。
連帯保証人を下りることができませんかと、聞かれることもありますが、賃貸借契約が続いている以上、連帯保証契約だけを終了させることはできません。賃貸借契約を終了させるしかないのです。
連帯保証人の被害を最小限に留めるためには、賃借人の協力がどうしても必要です。
次に申し上げるとおり、賃貸借物件に居座られたときに、連帯保証人の被害は最大になってしまいます。怒鳴りつけて退去するような賃借人であれば良いですが、そうでない場合には、怒鳴りつけるのは程々になさった方が賢明です。
どうしても損害は大きくなってしまいます。その理由は、次のとおりです。
ここからは被害を最小限に留める方法をお知らせします。
賃料を滞納していた賃借人をあまり信用することはできません。
そこで、賃借人に会えたその日のうちに、できるだけ次のような対応をするようにしてください。
状態 | 対応 |
現状が不明。 |
一番不味い状態です。 すぐに賃借人に連絡して連絡がつかなければ現地訪問し確認する必要があります。 |
夜逃げしている |
賃貸借契約書で連帯保証人にも賃貸借契約の解除権が与えられている場合=賃貸借契約を解除する。 |
上記以外=連帯保証人の責任で賃貸借物件を明け渡すか検討する。 |
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賃借人が今も居住している。 |
退去すれば新たな滞納賃料が生じませんので、退去するようお願いします。 |
退去のお願いに応じないときには、賃貸人に連絡して提訴してもらうしかありません。 |
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誰か知らない人が居住している。 |
賃貸借契約が終了していない以上、保証債務は膨れ続けると考えられます。 退去するようお願いし、応じなければ、賃貸人に連絡して提訴してもらうしかありません。 |
転居する場合にもお金がかかります。
社会福祉協議会の小口資金貸付や、生活保護の受給を検討しましょう。
賃借人の退去には、最後まで立会いましょう。賃借人が翻意することを防ぐためです。
連帯保証契約は、賃貸借物件を賃貸人に返却して、賃貸借契約が終了するまで続きます。
原状回復についても、連帯保証人も立ち会うようにしましょう。
連帯保証人もお金がない場合には、その旨を賃貸人にお伝えして、一部免除後の一括返済や分割返済の合意をし、合意書をやり取りしてから、支払います。
もちろん、全額を返済する場合においても、支払ってから追加で請求されることを防ぐため、合意書を結んでから返済します。