借地上の建物を賃貸借するときの注意点|不動産賃貸借契約


素敵な空き家があったので借りたいと思い、家主らしき人に声を掛けると「土地は地主から借りてるものですけれど大丈夫ですか」と言われた場合、契約を結ぶ前に色々と確認すべき事項があります。

「借地上の建物を賃借する場合に注意すべき事項」は、簡単なようで難しいテーマです。

建物の賃貸借契約は、土地の賃貸借契約のうえに乗っかっているからです。

       
  建物の賃借人

建物の賃貸借契約 ☚本コラムのテーマ

 
 

建物の賃貸人

(建物の所有者)

土地の賃借人 

 
 

土地の賃貸借契約

 
 

土地の賃貸人

(土地の所有者)

 
       

なお「そんなにややこしい事を言うなら、あなたには貸さない」と言われても、ここに記載した事項は必ず確認する必要があります。どうしても協力を拒まれるなら、その不動産を借りるのは諦めましょう。

住み慣れて数年も経った後、突然、争いごとに巻き込まれる可能性があり、最悪退去せざるを得ない可能性があるからです。

もくじ
  1. 土地と建物の登記事項証明書を取得する
  2. 建物所有者を確認する
  3. 借地権の内容を確認する
    1. 土地所有者の確認
    2. 旧借地権か、新借地権か、定期借地権かなど借地権の種類の確認
    3. 借地契約に、建物賃貸自体を禁止する特約、承諾なき賃貸禁止の特約がないかを確認
  4. 借地権の具体的内容を確認できないときの対応方法
  5. 借地契約の終了が借家契約に及ぼす影響を理解しておく
  6. 司法書士の報酬・費用
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土地建物の登記事項証明書を取得する


不動産の登記事項証明書は、全国どの法務局でも取得することが可能ですし、登記簿の内容を確認するだけならば司法書士事務所であれば全国どの物件でもインターネットで閲覧印刷が可能です。

ご自身で法務局で取得される際には、「住所」と「土地建物の地番」は異なりますので、ご注意ください。

古い登記簿を見せられても全く無意味です。その時点での登記簿の状態しか証明できず、その発行日以降権利に変更があったかもしれないからです。

建物所有者を確認する


目の前の方が、その建物を賃貸する権限がある方か(所有者か)を登記事項証明書で確認します。

もし建物の登記名義人がその方の親である場合には、その方への名義変更を依頼するべきです。

戸籍を見せられて子どもであることを証明されても、それだけでは信用できません。相続が発生している場合には、相続人が複数存在し、あなたが借りた権利(賃借権)が不安定になるからです。

借地権の内容を確認する


借地契約書の提出を受けて、次の事項を確認します。

土地所有者・建物所有者の確認

古くからの借地権で、相続が発生しているのに名義変更をしていない場合があります。相続が発生している場合、目の前の契約者があなたに賃貸する権限を有しているとは限りません。

・土地賃貸借契約の貸主と、土地登記名義人が一致しているか

・土地賃貸借契約の借主と、建物登記名義人が一致しているか

をそれぞれ確認する必要があります。

 

一致している場合には、問題ありません。

土地賃貸借契約に記載された「貸主」と、現在の「土地」登記名義人が一致しない場合には、土地の登記事項証明書をさかのぼって見て、現在の土地登記名義人が、契約書上の貸主から「相続」や「売買」などにより所有権移転を受けていることが分かれば、問題ありません。上記以外の場合には、問題がないか司法書士に調査を依頼した方が良いでしょう。

土地賃貸借契約に記載された「借主」と、現在の「建物」登記名義人が一致しない場合には、建物の登記事項証明書をさかのぼって見て、現在の建物登記名義人が、契約書上の借主から「相続」や「売買」などにより所有権移転を受けていることが分かれば、問題ありません。上記以外の場合には、問題がないか司法書士に調査を依頼した方が良いでしょう。

 

旧借地権か、新借地権か、定期借地権かなど借地権の種類の確認

平成4年(1992年)8月1日以降に設定された借地契約であれば、定期借地権である可能性があります。定期借地権上の建物は、契約期間の終了後に更地にして土地所有者に返還しなければならないため、終了時に普通借家契約で入居している借主が退去に応じなければトラブルとなります。

 

定期借地契約の場合は、建物の賃貸借契約も原則として定期借家契約を締結し、定期借地権の契約満了時に借家契約も終了する旨を契約書に明記すべきです。

 

定期借家契約を締結するには、

・口頭ではなく書面で契約すること、

・予め更新がないこと及び期間満了により借家契約が終了することを記載した(契約書とは別の)書面を借家人に対して交付して説明すること

が必要です。

借地契約に、建物賃貸自体を禁止する特約、承諾なき賃貸禁止の特約がないかを確認

借地上の建物の賃貸については、借地人(建物所有者)は建物を自由に第三者に貸すことができ、土地所有者はこれを理由に契約の解除ができない(借地上の建物を賃貸するのは、借地権の転貸借ではない)とするのが通説・判例(大審院S8.12.11)です。

 

ただし、借地契約の中で、建物の賃貸自体を禁止する特約や賃貸するにあたり土地所有者の事前承諾が必要な特約を結んでいるケースもあります。このような特約を禁止する規定はなく、合理的である限り有効とした裁判例があります(浦和地裁S58.1.18判決)。

これらの特約があった場合は、事前に土地所有者の承諾を得る又は借地契約を変更する(賃貸禁止特約を外す)等の対応が必要です。承諾を得られない場合には、裁判所に借地条件の変更許可を求める(借地借家法17条1項)などの対応が必要です。

借地権の内容を確認できないときは・・・


建物所有者が借地契約書を所持していないなど借地権の内容を確認できないときは・・・

  • 土地所有者(土地賃貸人)に写しをもらうか
  • 土地所有者(土地賃貸人)・建物所有者(土地賃借人)間で覚書を作成してもらいその写しをもらう

必要があります。借地権の内容が分かったときは、上記チェックを行ないましょう。

借地契約の終了が借家契約に及ぼす影響を理解しておく


借地契約の合意解除または債務不履行解除の場合

土地所有者と建物所有者が借地契約を合意解除した場合は、借家人の居住の継続は認められます。

一方、借地人(建物所有者)の債務不履行によって終了したときには、その終了は借家人に対抗することができ、借家人は建物を明け渡さなければなりません(最高裁S45.12.24判決)。

 

建物所有者が地代を支払わない場合には、自分(建物賃借人)に連絡するよう土地所有者(土地賃貸人)に伝えておくと良いかもしれません。

 

借地権の存続期間満了による借地契約終了の場合

借地借家法35条を忘れないようにしましょう。

なお、同条は、強行規定とされています(借地借家法37)。

借地借家法35条(借地上の建物の賃借人の保護)
 
  1.  借地権の目的である土地の上の建物につき賃貸借がされている場合において、借地権の存続期間の満了によって建物の賃借人が土地を明け渡すべきときは、建物の賃借人が借地権の存続期間が満了することをそ1年前までに知らなかった場合に限り、裁判所は、建物の賃借人の請求により、建物の賃借人がこれを知った日から1年を超えない範囲内において、土地の明渡しにつき相当の期限を許与することができる。
  2. 前項の規定により裁判所が期限の許与をしたときは、建物の賃貸借は、その期限が到来することによって終了する。
借地借家法37条(強行規定)
  第31条〔借賃増減請求権〕、第34条〔建物賃貸借終了の場合における転借人の保護〕及び第35条〔建物賃貸借終了の場合における転借人の保護〕の規定に反する特約で建物の賃借人又は転借人に不利なものは、無効とする。

司法書士の報酬・費用


業務内容 司法書士の報酬 実費
インターネットによる登記情報の取得 1,100円(税込)/筆 334円/筆
法律相談 11,000円(税込)/時間  

契約書を作成する場合、精査する場合、次のような基準でお願いしております。

業務の種類 司法書士の報酬 実費
定型のもの

5,500円(税込)/頁

※最低11,000円(税込)

印紙税法に定める金額
非定型のもの

11,000円(税込)/頁

※最低110,000円(税込)

印紙税法に定める金額
法律・判例の調査を伴うもの +55,000円(税込)  
公正証書にする場合(公証人との折衝) +22,000円(税込) 公証人手数料
日当(公証役場などへの出張で、移動時間が2時間を超える場合) +11,000円(税込)  

※弁護士のように契約金額(契約書に記載する金額)によって、司法書士報酬・手数料が増減することはありません。
顧問契約を締結いただいた場合、割引きがございます。
※標準所要時間を大幅に短縮する納期でのご依頼の場合、割増料金(特急料金)5割増しを頂戴いたします。

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