境界トラブル(筆界と所有権界)


日本の土地は高価であり、また相手方がお隣さんということになるため、境界トラブルが起こると深刻です。

境界トラブルを発生させないためのノウハウ・発生したときの対応方法についてお伝えします。

もくじ
  1. 境界標があるか確認しましょう。
  2. 境界標のメリット(境界がハッキリわかるメリット)
  3. 設置されている境界標を守るのは、ご自身の責任です。
  4. 「筆界」と「所有権界」とは違うのか?
  5. 人気の関連ページ

境界標があるか確認しましょう。


境界標は、境界の点または線の位置を表わすための標識です。

境界標(杭)の頭の部分には、一を特定する印が付けられています。

上のイラストでいうと「●」「矢印の先端」「罫線の交わる点」が境界です。

 

また、境界標には「コンクリート製」「石製」「金属製」や「木製」があります。木製は耐久力がないため、その他の種類のものに変更するべきです。

境界標があるメリット


■1 境界紛争がなくなる

境界標が現地にあることによって、境界紛争は起こらなくなります。

■2 境界の侵害を抑止できる

境界標があることによって、少しずつ土地を取り込まれるということがなくなります。

■3 家族も管理できる

境界標は自主管理するものとされていますが、境界標があることによって、ご自身だけでなく家族親族も境界を管理することができます。

境界についてもめたときに、お隣が健在で、あなたが他界していた場合にも、ご子孫は「境界の主張」を境界標に基づいて自信をもって行なうことができます。

■4 売却や相続が速やかにできる

都市部では境界が明らかでない土地を購入することは、リスクを伴います嫌がられます。

境界標が設置されており、境界が明らかな土地であれば速やかに売却・相続することができます。

設置されている境界標を守るのは、土地所有者ご自身の権利と義務です。


民法

民法第223条(境界標の設置)
   土地の所有者は、隣地の所有者と共同の費用で、境界標を設けることができる。
民法第224条(境界標の設置及び保存の費用)
  境界標の設置及び保存の費用は、相隣者が等しい割合で負担する。ただし、測量の費用は、その土地の広狭に応じて分担する。
民法第229条(境界標等の共有の推定)
  境界線上に設けた境界標、囲障、障壁、溝及び堀は、相隣者の共有に属するものと推定する。

刑法

刑法第262条の2(境界損壊罪)
   境界標を損壊し、移動し、若しくは除去し、又はその他の方法により、土地の境界を認識することができないようにした者は、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

境界標が無くなっていたり、移動していたら・・・

土地家屋調査士にご相談ください。図面が法務局に出ている場合には、容易に(比較的低廉な費用で)境界標を復元できることもあります。

懇意にしている土地家屋調査士がいない場合には、当グループにお問い合わせください。良い土地家屋調査士をご紹介させていただきます。

「筆界」と「所有権界」


「筆界」とは

不動産登記法に定義が定められています。

不動産登記法第123条
  

この章において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

  1. 筆界 表題登記がある一筆の土地(以下単に「一筆の土地」という。)とこれに隣接する他の土地(表題登記がない土地を含む。以下同じ。)との間において、当該一筆の土地が登記された時にその境を構成するものとされた二以上の点及びこれらを結ぶ直線をいう。
  2. 筆界特定 (略)
  3. 対象土地 (略)
  4. 関係土地 (略)
  5. 所有権登記名義人等 (略)

「筆界」と「所有権界」は違うものだと明示した判例

最高裁第一小法廷判決昭和43.2.22民集22.2.270・判時514.47
   境界確定の訴は、隣接する土地の境界が事実上不明なため争いがある場合に、裁判によつて新たにその境界を確定することを求める訴であつて、土地所有権の範囲の確認を目的とするものではない。したがつて、上告人主張の取得時効の抗弁の当否は、境界確定には無関係であるといわなければならない。けだし、かりに上告人が本件三番地の四二の土地の一部を時効によつて取得したとしても、これにより三番地の四一と三番地の四二の各土地の境界が移動するわけのものではないからである。上告人が、取得時効に基づき、右の境界を越えて三番地の四二の土地の一部につき所有権を主張しようとするならば、別に当該の土地につき所有権の確認を求めるべきである。それゆえ、取得時効の成否の問題は所有権の帰属に関する問題で、相隣接する土地の境界の確定とはかかわりのない問題であるとした原審の判断は、正当である。所論引用の判例は、当裁判所の採らないところである
筆界 所有権界

国の事業として「区画割り」と「地番付与」を行なった「公法上の境界」のこと。

土地家屋調査士が「地積測量図」を作成し、法務局に保管されている。

所有権が及んでいる限界。

通常は「筆界」と「所有権界」は一致しますが、次の場合などには一致していません。

  • お隣の土地の一部を時効取得している場合
  • お隣の土地の一部を譲り受けた場合

売買などをするためには「筆界」と「所有権界」を一致させる必要があります。

もめたときには・・・どんな手続が用意されているのか?!

筆界でもめたとき 所有権界でもめたとき
  • (登記所の)筆界特定制度
  • (裁判所の)境界確定訴訟
  • 取得時効援用など
  • 示談折衝
  • 調停
  • 所有権確認訴訟

筆界特定制度や境界確定訴訟で勝訴したとしても、相手方が取得時効を主張している場合にはその後の所有権確認訴訟で負けることも十分にあり得ます。

柔軟な発想と姿勢で交渉する必要があります。

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