一部の地域では賃貸借契約に盛り込まれることが多い「更新料」
最新の裁判例の分析からご説明します。
もくじ | |
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更新料は、賃貸借契約の期間が満了し、賃貸借契約を更新する際に、賃借人と賃貸人との間で授受される金員です。
関東や京都に多い慣習で、関西では大手不動産仲介会社が作成した賃貸借契約書に見ることができます。
これがいかなる性質を有するかは,賃貸借契約成立前後の当事者双方の事情,更新料条項が成立するに至った経緯その他諸般の事情を総合考量し,具体的事実関係に即して判断されるべきである |
更新料は,賃料と共に賃貸人の事業の収益の一部を構成するのが通常であり,その支払により賃借人は円満に物件の使用を継続することができることからすると,更新料は,一般に,賃料の補充ないし前払,賃貸借契約を継続するための対価等の趣旨を含む複合的な性質を有するものと解するのが相当である。 |
更新料支払合意がない場合でも、更新料を支払うという商慣習又は事実たる慣習は存在しない。 |
更新料を請求する賃貸人は「更新料を支払うという合意の存在」を立証しなければならない。
契約書に記載されている条項が、全て有効であるとは限りません。契約書に記載されている条項が、法律に違反している場合には、裁判所が契約条項は無効であると判断することもあり得ます。
更新料条項については、どうでしょうか?
さきにご紹介した判例の事実関係をもう少し詳しくご紹介します。
事案概要 |
昭和9.12.14 借地契約締結。権利金・敷金なし。無断譲渡転貸禁止特約つき。 昭和29.12.14 更新。その後、無断増改築禁止特約を追加 昭和38 借地人が本件建物❶の無断増改築に着手。借地人が地主に承諾を求めたが地主は承諾せず中止を求めたが、借地人は完成させた。 昭和49.12.12 地主が借地人に更新料180万の支払いを請求。 昭和49.12.14 更新。 昭和50.10.30 地主が更新料の支払いを求めて宅地調停を申立 昭和50.12.7 借地人が本件建物❷を無断で建築。 昭和51.12.20 調停成立(条項は次のとおり)
昭和51.12.末 借地人が地主に更新料50万円支払い。 昭和52.3.末 借地人が地主に更新料50万円を支払わず。 昭和52.4.4 地主が借地人に催告 昭和52.4.10 地主が借地人に借地契約の解除を通知。 昭和52.4.16 借地人が地主に50万円を弁済のため提供も、地主が受領拒絶したため供託。 |
判決 | 「土地の賃貸借契約の存続期間の満了にあたり賃借人が賃貸人に対し更新料を支払う例が少なくないが、その更新料がいかなる性格のものであるか及びその不払が当該賃貸借契約の解除原因となりうるかどうかは、単にその更新料の支払がなくても法定更新がされたかどうかという事情のみならず、当該賃貸借成立後の当事者双方の事情、当該更新料の支払の合意が成立するに至つた経緯その他諸般の事情を総合考量したうえ、具体的事実関係に即して判断されるべきものと解するのが相当であるところ、原審の確定した前記事実関係によれば、本件更新料の支払は、賃料の支払と同様、更新後の本件賃貸借契約の重要な要素として組み込まれ、その賃貸借契約の当事者の信頼関係を維持する基盤をなしているものというべきであるから、その不払は、右基盤を失わせる著しい背信行為として本件賃貸借契約それ自体の解除原因となりうるものと解するのが相当である。」として更新料契約が有効であることを前提に、土地賃貸借契約の解除が認められました。 |
消費者契約法第10条(消費者の利益を一方的に害する条項の無効) | |
消費者の不作為をもって当該消費者が新たな消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたものとみなす条項その他の法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第一条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。 |
事案概要 |
平成15年4月1日建物賃貸借契約締結(下記条項がある。)
平成16年2月頃、更新料支払い 平成17年2月頃、更新料支払い 平成18年2月頃、更新料支払い 平成19年2月頃、更新料支払わず 平成19年4月1日以降も居住を継続したため法定更新 |
判決 |
「更新料条項についてみると,更新料が,一般に,賃料の補充ないし前払,賃貸借契約を継続するための対価等の趣旨を含む複合的な性質を有することは,前記(1)に説示したとおりであり,更新料の支払にはおよそ経済的合理性がないなどということはできない。また,一定の地域において,期間満了の際,賃借人が賃貸人に対し更新料の支払をする例が少なからず存することは公知であることや,従前,裁判上の和解手続等においても,更新料条項は公序良俗に反するなどとして,これを当然に無効とする取扱いがされてこなかったことは裁判所に顕著であることからすると,更新料条項が賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載され,賃借人と賃貸人との間に更新料の支払に関する明確な合意が成立している場合に,賃借人と賃貸人との間に,更新料条項に関する情報の質及び量並びに交渉力について,看過し得ないほどの格差が存するとみることもできない。 そうすると、賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載された更新料条項は,更新料の額が賃料の額,賃貸借契約が更新される期間等に照らし高額に過ぎるなどの特段の事情がない限り,消費者契約法10条にいう「民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」には当たらないと解するのが相当である。 ⑶ これを本件についてみると,前記認定事実によれば,本件条項は本件契約書に一義的かつ明確に記載されているところ,その内容は,更新料の額を賃料の2か月分とし,本件賃貸借契約が更新される期間を1年間とするものであって,上記特段の事情が存するとはいえず,これを消費者契約法10条により無効とすることはできない。また,これまで説示したところによれば,本件条項を,借地借家法30条にいう同法第3章第1節の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものということもできない。」として、更新料条項を有効であると認定しました。 |
最高裁判決の後に出た裁判例を分析しました。
このコラムの最後に「分析対象とした裁判例」をあげていますので、ご参照ください。
裁判例に現れた条件を整理すると次のとおりです。
最初の契約時 |
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契約更新時 |
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【1】更新料の条項については、具体的な金額を、ほかの契約書の条項よりも目立つくらい明記することが望ましい。下記「後日揉めないための工夫」も参照ください。
【2】適正な更新料額とは?!
新しい裁判例では、更新料の額として契約書に「新賃料1か月」「新賃料2か月分」と定められているものが多かったです。そのためか、更新料の額が大きすぎるとして更新料条項を無効とした裁判例は見つけられていません。
【3】下の「更新料条項は法定更新にも適用があるか?」で検討します。
有効な更新料条項であるにも関わらず、更新料を不払いした場合は、どうなるのか?
賃貸借契約の解除理由となる(要旨などについては既述)。
事案概要 |
●H24.11.15 建物賃貸借契約(契約条項は以下のとおり)
●H26.10.17 賃貸人から賃借人に対して「契約更新のお知らせ」更新希望の有無を問うとともに、更新する際には更新料の支払いが必要な旨の記載がある文書を送付。これに対して賃借人は更新希望と記載し署名押印し賃貸人に返送した。 ●H27.3.27 再三にわたり更新料支払、賃料等保証委託契約の締結を催告したにも関わらず未了であること,そのため原被告間の信頼関係は既に破壊されており,本件賃貸借契約の継続は不可能であること,被告において,本件賃貸借契約を更新して契約関係の継続を望むのであれば,第1回更新料に加えて,新たな更新料5万3700円を合わせた10万7400円を支払うとともに,賃料等保証委託をしない限り,本件賃貸借契約を更新するつもりはないことを通知するとともに,これら所要の手続をしない場合には本件建物賃貸借契約は終了し,本件建物から退去してもらうことになることを通知するとともに,これら所要の手続をしない場合には本件建物賃貸借契約は終了し,本件建物から退去してもらうことになることを通知 ●H27.12.9 賃借人が賃貸人の会社を突然家族とともに訪問し、賃貸人からの退去の求めに応じなかったため、警察官に臨場を求める事態となった。 ●H28.12.2 賃借人が加入する義務ある火災保険の保険期間が切れた。その後、賃貸人からの催告にかかわらず加入せず。 ●H29.6.25 賃貸人が更新料の不払い等を解除理由として、訴状をもって、賃貸借契約を解除する旨の意思表示をした。 |
判決 |
本件更新料の不払の期間が相当長期に及んでおり,不払の額も少額ではないこと,被告が合理的な理由なく本件更新料の不払をしており,今後も当該不払が任意に解消される見込みは低く,原被告間の協議でその解消を図ることも期待できないことなどに照らすと,本件更新料の不払は賃貸借契約の当事者の信頼関係を維持する基盤を失わせるに足る程度の著しい背信行為であるということができる。 したがって,本件更新料の不払は本件賃貸借契約の無催告解除の原因となるから,これを理由とする本件賃貸借契約の解除の意思表示が被告に到達したことによって,本件賃貸借契約は終了した。 よって,被告は,原告に対し,本件賃貸借契約の終了に基づき,本件建物を明け渡す義務を負う。 |
賃貸借契約の更新には、合意更新(賃貸人と賃借人が話し合って更新するもの)と法定更新(一切の話し合いなく更新されるもの)とがあります。
賃貸人が契約期間を管理できておらず、賃貸借契約がいつの間にか、法定更新された場合にも、更新日以降に、更新料条項に基づき、(過去の)更新料を請求することは可能でしょうか?
裁判例によって、結論が分かれています。その理由は「契約書文言」にもよると思います。
したがって、更新料を取得しようとする者は、法定更新とならないような「契約書文言」「更新時の対応」を行う必要があります。詳しくは下の「後日揉めないための工夫」を参照ください。
平成23年最判以降では、該当する論点について判断した裁判例を見つけられませんでした。
更新料の支払い義務を否定されないために、そして法定更新の場合にも請求することができるように契約書の文言を工夫する必要があります。
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次のような文言も必要に応じていれておくと良いかもしれません。
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【1】1か月又は2か月分が多く、これを無効とした裁判例は見つけられませんでした。
【2】「みなす」とは、後日反対の事実を主張立証してもひっくり返らないことを意味します。合意更新とみなすことにより「合意更新ではなく、法定更新である」という主張をはねつけることが可能です。
判例検索ソフトWestlawJAPANで検索した裁判例について、分類しています。検索条件は、最高裁平成23.7.15判決以降で、検索語は「更新料」と設定しました。
〔分析済裁判例〕
高裁裁判例は、最高裁平成23年7月15日判決以降でWestlawJAPANに掲載されたもの全て。
地裁裁判例は、東京地裁令和3年3月25日判決から遡り、東京地裁令和2年7月31日判決まで完了。
(令和3年10月17日、司法書士佐藤大輔)
裁判例 | 事案の概要 | 争点に対する判断 | ||
分類 | 更新料条項 | 更新料条項は有効か | その他 | |
東京高裁H25.3.28判決 | 借家 | 消費者契約法に基づく適格消費者団体による差止請求控訴事件 | 更新料支払条項は消費者契約法9条1号又は10条に規定する消費者契約の条項に該当するものとは認められないので、無効ではない。 | - |
東京地裁H27.4.10判決 | 借地 | 賃貸借契約の期間満了の場合,地上建物が朽廃せずに現存するときは,賃借人は,賃借地を返還するか又は之に代えて賃借地の更地価格(契約期間満了時の)10ないし9パーセントの更新料を支払って賃貸借契約の更新を求めることができる。この場合,賃貸人は賃借人の建物の増改築を承認するものとする。 | 有効 |
〔解除事由となるか〕 更新料不払いを理由に解除は有効 |
東京地裁H29.9.28判決 | 借家 | 賃料1か月分 | 有効 |
〔解除事由となるか〕 更新料長期不払いは信頼関係破壊となる。 |
さいたま地方裁判所川越支部H31.1.24判決 (控訴審:東京高裁R1.11.20判決) |
借家 | 更新される場合には,更新料として賃料1か月分を支払わなければならない |
契約期間満了の3か月前までに書面で賃貸借契約の存続に関し何らの申出をしない場合には,当該期間満了の翌日から起算してさらに3年間賃料等を同一条件として賃貸借契約を合意更新したものとみなすと規定されているから、合意更新されたものと解するのが相当である。 賃借人は,法定更新の場合には,更新料支払合意の適用はない旨主張するが,前提において採用することができない。 |
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東京高裁R1.11.20判決 (原審:さいたま地方裁判所川越支部H31.1.24判決) |
借家 | 更新される場合には,更新料として賃料1か月分を支払わなければならない | 同上 | ー |
東京地裁R2.2.27判決 (控訴審:東京高裁R2.7.20判決で逆転) |
借地 | 相当の更新料を支払う。 |
合意の時点で次回更新が約6年も先のことであったことを併せ考慮すれば,上記可能性を考慮して「相当の更新料」と記載したことには相応の合理性,相当性が認められるというべきであって,当該文言をもって第3項が一義的かつ具体的な合意ではないとか,特定に欠けるということはできない。 更新料の支払について協議するという程度の合意でしかないと認識していた旨主張する。しかしながら,上記のとおり,本件合意第3項には「相当の更新料を支払う。」と明確に記載されており,更新料を支払うか否かという点が協議の対象となると解することは困難である |
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東京高裁R2.7.20判決 (原審:東京地裁R2.2.27判決を逆転) |
借地 | 相当の更新料を支払う | 更新料の支払請求権が具体的権利性を有するのは,それが,更新料の額を算出することができる程度の具体的基準が定められていることが必要であるところ,「相当の更新料」という文言が,抽象的で,裁判所において客観的に更新料の額を算出することが出来る程度の具体的基準ではないから,具体的権利性を肯定することはできない。 | ー |
東京地裁R2.7.31 | 借地 | 原告と被告会社の合意により本件賃貸借契約を更新する場合には,被告会社は相当の更新料を原告に支払う |
更新条項が一義的かつ具体的な記載ではないなどの理由により法的効力を有さないとの被告らの主張は採用できないが,法定更新の場合にも本件更新条項が適用されるとの原告の主張も採用できない 賃貸人と賃借人との間に更新料を支払う旨の合意がない場合に,更新料を支払うべき事実たる慣習又は商慣習が存在すると認めるには足りない。 交渉経緯から賃貸借契約を更新する場合は,相当額の更新料を支払うものと認識していたといえ,この限度で意思の合致が認められる・・・。なお,賃借人は,更新料の具体的な金額の合意がない以上,更新料支払の合意があったとはいえないと主張するが,当事者の意思を合理的に解釈すれば,相当額とは,当事者間に争いが生じた場合には,裁判所が定める額と解すべきであるから,更新料額について合意がないとはいえない。 |
〔解除事由となるか〕 更新料の不払は,本件賃貸借契約の債務不履行とはならず,原告は,これを理由に,本件賃貸借契約を解除することはできない |
東京地裁R2.9.3判決 | 借家 | 裁判例からは判然としない。 | (有効を前提に右判断) |
〔解除事由となるか〕 賃料月額66,000円。入金が更新料等又は滞納賃料等のいずれに充当されたかを問わず,令和2年1月6日時点における賃料等の未払額は,少なくとも合計額23万4856円であり,賃借人は,13か月にわたって毎月,約定の支払期日を遅滞して賃料等を支払っていたことが認められる。 以上によれば,令和2年1月6日時点において,本件賃貸借契約の基礎となる原被告間の信頼関係が破壊されていたことは明らか |
東京地裁R2.9.18判決 | 借家 | 更新料条項なし | 更新料支払合意は成立していない。 | ー |
東京地裁R2.9.23判決 | 借地 | 更新料条項なし |
昭和54年契約に伴い800万円が支払われ,その際「契約更新料として」との記載のある領収書が発行されている。 しかし,昭和54年契約において,昭和15年契約における木造建物所有目的を鉄筋コンクリート造建物所有目的に変更していることからすれば,800万円の支払は,契約の更新に当たって目的を変更するため,「契約更新料」名下で支払われたものと考えられ,そのような契約内容の変更がなくとも契約更新料を支払うとの合意が成立したことを直ちに推認させるものとはいえない。 かえって,昭和15年契約及び昭和54年契約には,契約更新料の支払に関する条項はないこと,法定更新されているが,更新料の請求をしたと認めるに足りる証拠はないことからすれば,更新料支払合意の存在を認めることはできない。 |
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東京地裁R2.10.7判決 | 借地 | 2350万円。将来の更新料についての明文の規定はない。 |
従前の2回の更新時には被告からいずれも相当額の更新料が支払われてきた 賃借人は,賃借人作成の文書「借地契約の更新について」と題する書面では,従前の更新料及び地代の決定の経緯を記載した上で,更新料及び地代の金額とその振り分け方について賃借人の考え方が記載されており,更新料を支払うことは前提であったと評価せざるを得ない。 裁判所が更新料2178万円認定 |
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東京地裁R2.10.7判決 | 借地 | 改訂契約書には,契約更新に関する定めがない |
契約更新料の支払実績がない 賃貸人は契約更新拒絶を理由とする先行訴訟を提起し,賃料受取口座も解約するなど受領拒絶の意思を明確に示していた などから更新料支払合意がない。 |
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東京地裁R2.10.21判決 | 借家 | 賃借人は,本件賃貸借契約が法定更新された場合においても,賃貸人に対し,賃料の1.5か月分の更新料を支払わなければならない | (有効を前提に右判断) |
〔法定更新と更新料〕 法定更新でも更新料支払い義務を負う。 |
東京地裁R2.11.5判決 | 借地 | 契約書に更新料の定めなし |
従前更新料を支払っていたことを指摘する。しかし,建物の建替えについての承諾料であって更新料ではない。 過去に更新料の授受があったとしても,この1回のみの授受である点に鑑みれば,本件契約更新時に更新料を支払う旨の慣行が被告との間で確立していたとはいえない |
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東京地裁R2.11.10判決 | 借地 | 契約書に更新料の定めなし | 過去の契約更新時に更新料が支払われていたとしても、その後の契約更新時にも更新料を支払う旨の合意が成立していたとみることはできない。 | ー |
東京地裁R2.11.26判決 | 借家 | 期間満了の場合,原被告合意の上更新することができる。更新料は,新賃料の1か月分とする。 | (有効を前提に右判断) |
〔法定更新と更新料〕 平成25年に合意による更新がなされたことの事実の主張立証はない。そうすると,本件賃貸借契約は,平成25年11月に借地借家法26条1項によって更新され,期間の定めのないものとなったとみるほかなく,更新料の請求は失当 |
東京地裁R2.12.1判決 | 借家 | 2年ごとに新賃料の1か月分を更新料として支払う | (有効を前提に右判断) |
〔法定更新と更新料〕 仮に,法定更新と認めた場合であっても,本件賃貸借契約が更新された場合には,本件更新条項が適用され,更新料を支払う義務がある |
東京地裁R2.12.9判決 | 借家 | 契約が更新された場合には,賃借人は,2年ごとに,賃貸人に対し,新賃料の1か月分相当額を更新期間の開始日の前日又は以後2年ごとの期間開始日の前日までに更新料として支払う | (有効を前提に右判断) |
〔法定更新と更新料〕 法定更新でも更新料支払い義務あり |
東京地裁R3.1.18判決 | 借地 | 契約書に定めなし | 前回の更新の際に更新料として200万円が支払われたというだけでは,前回の更新の際に同更新に係る更新料として200万円を支払う旨の合意が成立したことを推認させるにとどまり,次回の更新の際にも更新料を支払う旨の合意の存在を当然に推認させることにはならない。また,仮に,次回の更新の際にも更新料を支払う旨の合意の存在を推認することができたとしても,次回も更新料の額を200万円とする旨の合意の存在が認められることになるわけではなく,更新料200万円の支払を求めることのできる具体的な請求権の発生を基礎付けることにはならない。そして,ほかに,本件借地契約に関し,平成23年の更新よりも前に,次回の更新の際に被告が更新料として200万円を支払う旨の合意が成立していたことを認めるに足りる証拠はなく | ー |
東京地裁R3.1.19判決 | 借家 | 更新可―新賃料の1ヶ月 | (有効を前提に右判断) |
〔法定更新と更新料〕 これらの条項に鑑みれば,本件賃貸借契約上,賃借人が約定更新料支払義務を負うのは,合意更新の場合に限られる |
東京地裁R3.1.21判決 | 借家 | 更新料は新賃料1か月分/更新事務手数料は新賃料の0.5か月分/更新料、更新事務手数料を,合意更新又は法定更新のいかんに関わらず支払う | (有効を前提に右判断) |
〔法定更新と事務手数料〕 法定更新であっても更新事務手数料の支払い義務はある(更新料については争わず) |
東京地裁R3.2.10判決 | 借家 | 新規賃料の1.5か月分 | (有効を前提に右判断) |
〔法定更新と更新料〕 更新の際に更新料を支払うとの定めをするものであること,更新の際には,更新料に加えて,事務手数料を支払うものとされているが,これはその名称から更新手続に伴う事務に対する手数料と解され,合意更新を想定しているものと考えられること,更新料の支払期日を契約期間満了日の1週間前までとすることも,法定更新による場合を想定していないと解されることからすると,本件賃貸借契約において支払うことを合意している更新料は合意更新を前提としており,法定更新の場合にも賃借人に同様の更新料の支払義務を負わせる規定であるとは解されない。 このように解すれば,賃借人は,法定更新を選ぶことによって更新料の支払を免れることになるが,そもそも賃借人は,賃貸借契約を締結するにあたって,法定更新の場合にも更新料を支払う旨の契約書を用意して賃貸借契約を締結することが可能であるし,賃借人は,合意更新によって期間の定めのある賃貸借契約を継続することができ,法定更新による場合よりも相対的に有利な契約条件にすることができるから,合意更新につき賃借人にも有利な点があり,上記の解釈が当事者による合意更新を妨げるものではないことを考慮すると,不当な結論であるとはいえない。 |
東京地裁R3.3.8判決 | 借家 | 契約更新時には更新料として借主は新家賃の1ヶ月分を貸主に支払う事 | (有効を前提に右判断) |
〔法定更新と更新料〕 更新料の支払合意がなされている場合には,法定更新の際に更新料の支払義務が発生するというべき |
東京地裁R3.3.22判決 | 借地 | 更新料の定めなし/過去の合意更新で一度310万支払った |
更新料条項の合意はない。 更新料の支払義務を負う旨の慣行の存在を認めるには足りない。 |
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東京地裁R3.3.23判決 | 借家 | 期間満了により本契約を更新する場合,更新料として新賃料の1か月分相当額 | (有効を前提に右判断) |
〔法定更新と更新料〕 この定め方では法定更新には適用がない。 |
東京地裁R3.3.25判決 | 借地 | 協議の上相当の更新料を支払って本件賃貸借契約を更新することができる | (有効を前提に右判断) |
〔法定更新と更新料〕 この定め方では法定更新には適用がない。 |