賃貸借契約で遅延損害金を年14.6%とする条項は有効か?


賃貸借契約書の条項の中には「記載されていても無効な(当事者間で効力を生じない)条項」が多数見受けられます。

それでは、家賃が遅れた場合の遅延損害金の利率を年14.6%に定めた条項は有効でしょうか?

もくじ
  1. 民法の原則
  2. 消費者契約法による原則の修正
  3. まとめ

民法の原則


家賃の支払いが遅れた場合には、遅延損害金が発生します(民419Ⅰ)。

賃貸借契約(約定)で、遅延損害金の利率を定めていないときには年3%になります(民419Ⅰ、民404Ⅱ)。

賃貸借契約(約定)で定めた遅延損害金の利率が年3%を超えるときは、その約定利率になります(民419Ⅰただし書)。

遅延損害金の利率の上限は、「民法では」定められていません。

なお、家賃は、金銭消費貸借によって発生する債務ではありません。したがって、家賃の支払いが遅れた場合の遅延損害金の利率に利息制限法の適用はありません(利息制限法1条4条参照。)。

民法第419条(金銭債務の特則)

 
  1. 金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。
  2. 3.(略)

民法第404条(法定利率)

 
  1. 利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、その利息が生じた最初の時点における法定利率による。
  2. 法定利率は、年3パーセントとする。
  3. ~5.(略)【1】

【1】改正民法では法定利率が変動することになりました。3~5項にはその計算方法が定められています。令和8年3月31日までの法定利率は定まっていて、次のとおりです。

  • 令和2年3月31日までの法定利率 = 年5%
  • 令和2年4月1日から令和5年3月31日までの法定利率 = 年3%
  • 令和5年4月1日から令和8年3月31日までの法定利率 = 年3%
  • 令和8年4月1日以降の法定利率 = 未確定

消費者契約法による原則の修正


賃借人(入居者)が消費者の場合には、民法の原則は、消費者契約法によって修正を受けます。

すなわち年14.6%を超えると超えた部分は無効になります(消費者契約法9Ⅰ②)。

賃借人(入居者)が事業者や法人の場合には、消費者契約法は適用されませんので、遅延損害金の利率に上限はありません(民法の原則どおり)。

消費者契約法第9条(消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効等)

 
  1. 次の各号に掲げる消費者契約の条項は、当該各号に定める部分について、無効とする。
    一 (略)
    二 当該消費者契約に基づき支払うべき金銭の全部又は一部を消費者が支払期日(支払回数が2以上である場合には、それぞれの支払期日。以下この号において同じ。)までに支払わない場合における損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、支払期日の翌日からその支払をする日までの期間について、その日数に応じ、当該支払期日に支払うべき額から当該支払期日に支払うべき額のうち既に支払われた額を控除した額に年14・6パーセントの割合を乗じて計算した額を超えるもの 当該超える部分
  2. (略)

まとめ


  家賃の支払いを遅延した場合の遅延損害金の利率
  下限 上限

賃借人(入居者)が

消費者の場合

(約束なくても)年3%

(年14.6%超で合意しても)年14.6%

(年14.6%を超える部分は無効)

賃借人(入居者)が

消費者以外の場合

(約束なくても)年3%

法律上、上限なし

年14.6%超で合意ならその利率でOK

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