全く身に覚えがないのに、裁判所から会社に差押命令が届いた。
そんなときは、貴社の債務が焦げ付いて銀行から差押を受けたとは限りません。
従業員が借金の返済を滞って、貴社へ差押命令が届いたのかもしれません。
どういうことか?詳しくご説明します。
もくじ | |
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差押え命令で、登場するのは次の3つの立場です。
用語 | 意味 |
債権者
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債務者に対して、金銭の請求をすることができる人。 差押命令においては、債務者に対して、金銭の請求をできることが裁判所によって判断されたり、公正証書によって認められている人。 |
裁判所の判決や、公証人の公正証書によって、請求できる。
債務者
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債権者に対して、金銭の支払い義務を負っている人。 差押命令においては、債権者に対して、金銭の支払義務があることが裁判所によって判断されたり、公正証書によって認められている人。 |
何等かの金銭を請求できる?と、債権者が考えている。請求できるとは限らない。
第三債務者
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債権者が「この人は、債務者に対して、何等かの支払い義務があるのではないか」と考えた人。 |
貴社の財産が差押えられたのか、従業員の給与が差押えられたのか、見分ける方法は、次のとおり簡単です。
債権差押命令2頁「当事者目録」 | 同封物 | 意味 |
「債務者」として貴社名 「第三債務者」として銀行名 |
債権差押命令のみ | 貴社財産が差押えられた |
「第三債務者」として貴社名 |
債権差押命令 陳述書 事情届 返信用封筒 |
従業員などの給与が差押えられた |
第三債務者は、債務者に対して「差押された給与部分」を弁済してはいけません。
債権者に対しても、まだ支払ってはいけません。
債務者への送達が、第三債務者への送達よりも後であるのは、債務者が先に差押えの事実を知ると、債務者は債権者よりも先に支払いを受けようとするからです。
債権者は、第三債務者に対して、直接支払いを求める権利が発生します(民事執行法155Ⅰ)。
債権者から第三債務者に対して、連絡があります。
第三債務者は、送達証明書の提出を受けて、債務者が受け取ってから1週間経過したこと(=債権者に取立権が発生していること)を確認してください。
第三債務者は、債権者への支払方法(貴社に取りに来るのか、債権者口座に振り込むのか)を調整してください。振込の場合には、振込手数料は債権者負担です。
場合 | 対応 |
債務者をそもそも雇っていない | 陳述書を提出すれば終了 |
従業員がとっくに退職している | 陳述書を提出すれば終了 |
従業員は既に退職しているがこれから払う給与や退職金がある |
陳述書を裁判所・債権者に提出。 差押命令に従い支払う。 |
債務者と契約はあるものの雇用契約ではない。 | 陳述書を提出すれば終了 |
債務者は従業員でなく当社の役員である | 陳述書を提出すれば終了【1】 |
債務者から「支払ったから差押えをやめて欲しい」と言われた |
陳述書を裁判所・債権者に提出。 差押命令に従い支払う【2】。 |
同じ従業員に対して別の債権者から差押命令が2通きた。 |
陳述書を裁判所・債権者に提出 供託する 事情届を提出 |
裁判所から取下書が来た | 給料全額を債務者へ支払う |
【1】債権差押命令の差押債権目録をよくご覧ください。単に「給料債権」とだけある場合には、「役員報酬」は含まれませんので、差押の効力は及んでおらず、支払う必要はありません。
【2】債務者に対して「差押命令を取り下げるよう債権者に連絡をとるよう。裁判所から取下書が来るまではずっと債権者に支払う義務がある」とお伝えください。
場合 | リスク・デメリット |
差押命令に従わないで従業員に支払った場合 | 二重払いのリスクが生じる。 |
貴社が記載した陳述書の記載内容に、債権者が納得しないとき | 債権者は、貴社を被告にして取立訴訟を起こすことがある。 |