持株比率が50:50になってしまい「にっちもさっちも行かない」状態のことを『デッドロック』といいます。
AさんBさんの持株比率が50:50で、両方が取締役の場合には大変です。
このコラムではデッドロックの解消方法を検討したいと思います。
もくじ | |
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株主総会の決議には、決議する事項の重要度に応じて種類が分かれます。主な種類を重要度が高い順に並べると「総株主の同意」「特別決議」「普通決議」です。
その「普通決議」の要件は次のとおりです。
会社法第309条(株主総会の決議) | |
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条文の前半は定足数(会議が成立するための要件)を定めています。
基本的に過半数が出席しないと会議自体が成立しないことになるのです。
スキームを考えるために、確認いただきたい定款の条項は次のとおりです。
取締役会(取締役会非設置会社においては取締役過半数の一致)で招集を適法に決定することができれば、株主総会を開催することはできます。
それでも、反対派が株主総会に出席して議案に反対すれば議決することはできません。
持株比率が50:50であっても、取締役の数が3名以上いる場合には、過半数の取締役が協力して株主総会の招集を決定することができます。
仮に反対派が代表取締役であったとしても、上記定款規定があれば、代表取締役以外の取締役が招集することも理論上可能です。
デッドロック状態に陥った会社の代表取締役が全く働かなくなり、取引先からもクレームが来るようになってしまった場合のスキームを検討してみましょう。
少数株主による株主総会開催 + 代表取締役の職務代行者選任申立 |
解散の訴え + 新会社設立 |
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論 点 整 理 |
●裁判所に対して職務代行者の選任のみを申立てることはできるか?
→本案の訴えとして取締役解任の訴えを起こす必要があるため、職務代行者の選任のみは不可【1】
●取締役解任の訴えは起こせるか? →前提として株主総会において取締役解任議案の否決が必要(会854ⅠⅡ)。
→招集権限を持っている代表取締役が招集に協力しない場合、前提となる株主総会の開催がそもそもできない【2】。
●株主としての立場で会社に対して、取締役の選任と解任を議案として株主総会の招集を請求する(会297Ⅰ)。 →招集権限を持っている代表取締役が招集に協力しない場合、少数株主として、裁判所に対して株主総会の招集許可を申し立てる【3】(会297Ⅳ、868Ⅰ)。
●株主総会を開催したとしても、持株比率50:50のままでは解任決議は成立せず流会となります。 →取締役解任の訴え(会854Ⅰ)の「解任決議が否決されたとき」には株主総会が流会となった場合も含む【4】。 |
●解散の訴えは、デッドロック状態の会社による利用が典型例の一つ【5】
●解散の訴えの要件は?【6】
●取引先を引き継ぐために新会社を設立します。 →新会社を設立した取締役は、デッドロック状態の会社の取締役でもあるので、競業避止義務違反になる可能性がある。 →許認可事業の場合には、新会社での許認可取得に時間を要する可能性がある。
●依頼主がデッドロック状態の会社の存続を望んでいる場合には適さない。 |
実際の流れ |
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問題点 |
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【1】森・濱田松本法律事務所、弁護士法人淀屋橋山上合同編/『書式・会社非訟の実務』民事法研究会/平成20/274頁
【2】株主総会の招集のためには、取締役会決議が必要です。取締役会決議を行わずに招集された株主総会の効果については次の判例を参照ください。
【3】裁判所による「少数株主による株主総会開催許可の要件」は、次の3つです(会297)。
【4】江頭憲治郎『株式会社法第8版』有斐閣/2021/413頁、高松高裁決定平成18年11月27日平18(ラ)149号。
【5】江頭憲治郎『株式会社法第8版』有斐閣/2021/1041頁
【6】解散の訴えの要件は次の通りです。
【7】「対立が極めて強い株主グループの保有株式数が5割ずつで、膠着状態にある場合」は株式会社が業務の執行において著しく困難な状況に至りに該当する(東京高判平成12年2月23日平11(ネ)5820号、東京高判平成30年6月27日平30(ネ)677号、❼東京地判令和元年8月30日平29(ネ)43836号など)。