生まれてくるお子さんが、夫とは別の男性の子供であるときには、急いでください。
夫が嫡出否認できるのは、夫が子の出生を知ってから1年以内のみです。この短期間で、夫を説得して、訴えてもらう必要があるのです。
現在の最高裁の考え方は、子供の法的身分の安定を重視するあまり、DNA鑑定の結果がそれとは異なっても、後日争うことは出来なくなります。
ただし、
➊「懐胎時期に関する証明書」を医師から発行してもらえる場合及び❷前夫の子を妊娠することが不可能であることが客観的に明白である場合は、コチラをご覧ください。
また、
子供の出生時期と各解決方法の関係は、コチラをご覧ください。
嫡出否認が出来るのは、夫だけです。
よって、次のようなことを説明して、夫の協力を得る必要があります。
最高裁H26.7.17判決(平成24(受)1402号事件、原審札幌高裁) 【事案の概要】 懐胎当初「夫婦としての実態」が失われていなかった。 H21.出産。妻は夫に「別の男性の子」と告げる。夫は夫妻の子として出生届提出。 H22.親権者を妻と定めて協議離婚。妻は、子を連れて、「別の男性」と同居開始。DNA鑑定で「別の男性」の子と判明。 H23.妻は子の親権者として元夫に対して親子関係不存在確認の訴えを提起。 ※ 夫が子の出生を知ってから1年を経過していたので、嫡出否認の訴えを提起できず、やむを得ず親子関係不存在確認の訴えを提起したものと思われる。 |
最高裁H26.7.17判決(平成25年(受)233号事件、原審大阪高裁) 【事案の概要】 H16.婚姻 H19.夫は単身赴任。丁度その頃から妻は別の男性と交際開始するも、「夫婦としての実態」は失われていなかった。 H20.妊娠 H21.出産 H23.夫が妻の別の男性との交際を知る。妻は子を連れ別の男性と同居。DNA鑑定で「別の男性」の子と判明。 H23.妻は子の法定代理人として夫に対して親子関係不存在確認の訴えを提起。 |
【一審・二審の判決】 DNA鑑定結果は、親子関係を覆す究極の事実であるとして、父子関係を取り消す判決。 つまりDNA鑑定は、嫡出推定を破るという結論。 これを不服として夫が「父子関係の維持を求めて」上告
【最高裁判決】 夫と子との間に生物学上の父子関係が認められないことが科学的証拠により明らかであり,かつ,
(札幌高裁の事案)夫と妻が既に離婚して別居し,子が親権者である妻の下で監護されているという事情があっても, (大阪高裁の事案)子が,現時点において夫の下で監護されておらず,妻及び生物学上の父の下で順調に成長しているという事情があっても,
子の身分関係の法的安定を保持する必要が当然になくなるものではないから,上記の事情が存在するからといって,同条による嫡出の推定が及ばなくなるものとはいえず,親子関係不存在確認の訴えをもって当該父子関係の存否を争うことはできないものと解するのが相当である。このように解すると,法律上の父子関係が生物学上の父子関係と一致しない場合が生ずることになるが,同条及び774条から778条までの規定はこのような不一致が生ずることをも容認しているものと解される。 |
訴訟を起こす前に、調停をすることが必要です(調停前置主義:家事事件手続法257)。
当事者の合意だけでは足りず、裁判所が必要な調査(通常はDNA鑑定)を行ったうえで、合意にかわる審判を行う必要があります。
嫡出否認調停は、当事者の合意だけでは成立せず、裁判所が必要な調査を行った上で、審判をします。
そして、必要な調査として必ずDNA鑑定(父・母・子から検体を採取し行う)が実施される取扱いがなされています。
裁判所の職権による鑑定ですので、特に鑑定申立ては不要です。
ただし、鑑定費用は申立人負担で、おおよそ10~20万円程度です。
調停申立前に私的に鑑定をすることもありますが、私的鑑定を裁判所が採用するかは、裁判官の判断になりますので、採用してもらえないと私的鑑定が無駄になることもあり得ます。
なお、私的鑑定の費用は、10万円前後(簡易な方法だと1~2万円)です。
手続名 | 司法書士の報酬 | 実費 |
嫡出否認調停の申立書作成・提出 | 11万円(税込) |
収入印紙1200円 郵券 鑑定費用10~20万円 |
追加主張書面提出 | 5.5万円(税込) |