財産分与の登記:離婚のときに簡単に「財産分与」を登記原因として登記してはいけない理由と代替案


住宅ローンが残っているのに、妻名義に所有権移転して大丈夫か?!

妻名義に変更しない場合どんなリスクがあるのか?!

どんな税金がかかる可能性があるのか?

後日、問題にならないのか?!

なんか良い方法はないのか?!

「あなたのまちの司法書士事務所グループ」にご相談ください。

もくじ
  1. 財産分与とは
  2. 元の家にどうしても住み続けたい場合
  3. 登記原因と税金
  4. 登記原因「財産分与」の注意点
  5. 標準的な所要時間
  6. 司法書士の報酬・費用
  7. 人気の関連ページ

財産分与とは


夫婦が婚姻中に協力して取得した財産を、離婚する際又は離婚後に分けることを言います。話し合いがまとまらない場合には、調停を申し立てます。

また、財産分与によって、不動産の名義を取得された場合には、忘れずに登記しなければなりません。

元の家にどうしても住み続けたい場合


元の家は、夫名義だけれど住み続けたい。

住宅ローンの債務者(支払い義務者)も夫になっている場合、どうすれば良いでしょうか?

二つの方法がございます。

そんなときは?

<奥様に一定の給与があり、奥様の名義で住宅ローンを組める場合>

奥様名義で新たに住宅ローンを借りて、夫の住宅ローンの残高を全額返済することで、不動産の名義を夫から奥様へ変更することが可能です。

奥様名義で住宅ローンを組めないけれど、奥様が支払っていく場合

銀行は、所有者と住宅ローンの債務者(支払い義務者)が一致していることを要求しています。また、住宅ローンを完済せず、名義を変更することは銀行との契約違反であり、銀行に見つかれば一括返済を求められることもあり得ます。

では、どうすれば良いでしょうか?

 

奥様が夫に代わり、住宅ローンを支払っていくという約束が夫婦間ででき、奥様にその決意・返済原資もある場合、銀行との契約違反になることを承知いただいたうえ、夫から奥様へ所有権移転登記をしてしまうことをオススメします。

 

なぜなら、住宅ローンを奥様が完済したのち、名義をかえようとしても、夫の協力を得られるとは限らないからです。また、名義を変えず奥様が住宅ローンを支払い続けたのに、夫が破産すると、奥様は家を取られてしまうリスクもあるからです。

なお、夫側のリスクを低減するためには、履行引受契約を締結されておくことをオススメします。

(平成28年12月。司法書士佐藤大輔)

登記原因と税金


不動産の名義変更をする場合「登記原因」によって、税金が大きく異なります。必ずしも「財産分与」を原因に移転登記することが正しいとは限らないのです。当グループでは、あなたのお話しをお伺いし、あなたにとって最適な登記原因を選択し、ご提案します。

また、当グループでは、どの程度の税金がかかるのか、提携税理士に試算を依頼したうえで、ご提案いたしますので、ご安心ください。

●=課税される ▲=課税可能性あり ×=課税されない

  財産分与 売買 負担付贈与 贈与

譲渡所得税/住民税

【0】

▲時価で譲渡したとみなされる。購入時より時価が高騰していたとき課税される【1】

 

▲購入時より高額で売却したとき

 

 

×

贈与税

 

▲時価より高い売却のとき

【2】

▲負担が贈与財産より過大であるとき

×

不動産取得税

×

登録免許税

固定資産税評価額の20/1000

(以下同じ)

土地15/1000

建物20/1000

但し居住用のとき

建物3/1000

20/1000 20/1000

贈与税

×但し【3】

▲時価より安い売却のとき【2】

▲時価から負担額を控除した金額について【2】

▲相続税評価額

【2】

固定資産税

【0】譲渡所得税は国税で、住民税は地方税です。

不動産の「購入価格<売却価格」のときに課税されます。購入時価格は、建物を減価消却する必要があります。そのため、購入時の売買契約書の金額よりも低い価格で仕入れたことになるので注意が必要です。

【1】時価で売却したものとして、購入したときの売買代金との差額について、課税されます。不動産を元配偶者に無償で渡しているのに、なぜ所得税が発生するのかという疑問を良くいただきます。所得があがる結果、保険料もあがることになるので、注意が必要です。

【2】固定資産税評価額=時価の7割、相続税評価(路線価)=時価の8割というのが一般的です。つまり、時価を⑩とすると次のような価格になります。

    固定資産税評価額⑦ < 相続税評価⑧ < 時価⑩

贈与のときには「相続税評価額」で税額を算出するのに対して、

負担付贈与のときには「時価」を基準に税額を算出することに注意が必要です。

(国税庁『負担付贈与又は対価を伴う取引により取得した土地等及び家屋等に係る評価並びに相続税法第7条及び第9条の規定の適用について』平成3年12月18日最終改訂/最終アクセス241008)いわゆる「負担付贈与通達」です。負担付贈与通達は、財産評価基本通達の特例です。

【3】次に該当するときは、贈与税が課税されます。(相続税基本通達9-8)

A)その分与に係る財産の額が婚姻中の夫婦の協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮してもなお過当であると認められる場合における当該過当である部分

B)離婚を手段として贈与税若しくは相続税のほ脱を図ると認められる場合における当該離婚により取得した財産の価額

 

(平成30年3月・あなまち司法書士事務所・司法書士佐藤大輔)

登記原因「財産分与」の注意点


登記原因として「財産分与」を選択した場合、注意点は次の4点です。

  1. 協議離婚以外の場合、すなわち調停・審判・裁判による離婚の場合には、調停調書、審判書や判決書で「財産分与」以外の登記原因を指定していないか確認が必要です。
  2. 「財産分与」という登記原因を使えるのは、離婚した(離婚届を提出した)夫婦のみです。
  3. 「財産分与」という登記原因を使うと、不動産をあげる側に譲渡所得税が課税されます。譲渡所得税が大きかったため、こんな筈ではなかった(錯誤無効)と財産分与登記の抹消を求めて提訴し、あげた側が勝訴した(無効な登記となった)裁判例がございます。
  4. 登記原因日付は、次のとおりになります。
  「離婚届」と「財産分与の合意」時期の先後

採用すべき登記原因日付

パターンA
  1. 離婚届を提出
  2. 財産分与の合意
財産分与の合意をした日
パターンB
  1. 財産分与の合意
  2. 離婚届を提出
離婚届を提出した日

標準的な所要時間


財産分与手続完了までの標準的所要時間は、約1か月です。

業務内容 所要時間
財産分与契約書案の作成 7日
登記申請~登記完了 14日
登記ミスなどのチェック 7日
合計 1か月ほど

司法書士報酬・手数料


次のような基準でお願いしております。

業務の種類 司法書士の報酬 実費
財産分与契約書(定型のもの) 33,000円(税込) 印紙税法に定める金額
所有権移転登記 55,000円(税込)~ 評価額の20/1000
登記原因証明情報など作成 11,000円(税込)~  
登記簿閲覧・調査 3,300円(税込)~  
日当(公証役場などへの出張で、移動時間が2時間を超える場合) +11,000円(税込)  

次のような場合には、追加料金が発生します。

追加のご要望 業務の種類 司法書士の報酬 実費
養育費やその他離婚に関する全ての合意をまとめた書類も作って欲しい 離婚合意書作成 110,000円(税込) 印紙税法に定める金額【1】
奥様名義で住宅ローンを組めないけれど、奥様が支払っていく場合 負担付贈与・履行引受契約書作成  165,000円(税込) 印紙税法に定める金額
登記簿上の住所が、現住所と異なる 住所変更登記 11,000円(税込)  1,000円/筆
抵当権の抹消 抹消登記 11,000円(税込)  1,000円/筆

【1】 公正証書にする場合には、公証人手数料も必要です。

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