家事審判に対する即時抗告の可否、効力発生時期、確定証明書の要否


家庭裁判所の審判の確定時期は、その後の手続に影響するため、重要です。

❶審判に対する即時抗告の可否、❷審判の効力発生時期そして❸確定証明書の要否について、まとめました。

もくじ
  1. 家事審判の効力発生時期
  2. 即時抗告ができる(2週間待つ必要がある)審判
  3. 即時抗告できない(告知で効力を生じる)審判
  4. 確定証明書の要否

〔凡例〕この記事では、下記の通り略記します。

家事123Ⅰ①:家事事件手続法(平成二十三年法律第五十二号)第123条第1項第1号

家事審判の効力発生時期


「審判は確定が必要か」という点では、全ての審判において確定が必要です。

いつ確定するのかという点は、家事事件手続法74条2項に規定があります。

即時抗告可能な審判かどうかで、確定の時期は変わります。

 

例えば、

  • 後見開始の審判は、即時抗告可能(家事123Ⅰ①)なので、告知から2週間の経過が必要です(家事74Ⅱただし書、同74Ⅳ)。
  • 相続財産清算人選任の審判は、即時抗告不可(家事206参照)なので、告知と同時に確定します(家事74Ⅱ本文)。
家事事件手続法第74条(審判の告知及び効力の発生等)
 
  1. 審判は、特別の定めがある場合を除き、当事者及び利害関係参加人並びにこれらの者以外の審判を受ける者に対し、相当と認める方法で告知しなければならない。
  2. 審判(申立てを却下する審判を除く。)は、特別の定めがある場合を除き、審判を受ける者(審判を受ける者が数人あるときは、そのうちの一人)に告知することによってその効力を生ずる。ただし、即時抗告をすることができる審判は、確定しなければその効力を生じない。
  3. 申立てを却下する審判は、申立人に告知することによってその効力を生ずる。
  4. 審判は、即時抗告の期間の満了前には確定しないものとする。
  5. 審判の確定は、前項の期間内にした即時抗告の提起により、遮断される。
家事事件手続法第85条(即時抗告をすることができる審判)
 
  1. 審判に対しては、特別の定めがある場合に限り、即時抗告をすることができる
  2. 手続費用の負担の裁判に対しては、独立して即時抗告をすることができない。

家事事件手続法第86条(即時抗告期間)
 
  1. 審判に対する即時抗告は、特別の定めがある場合を除き、2週間の不変期間内にしなければならない。ただし、その期間前に提起した即時抗告の効力を妨げない。
  2. 即時抗告の期間は、特別の定めがある場合を除き、即時抗告をする者が、審判の告知を受ける者である場合にあってはその者が審判の告知を受けた日から、審判の告知を受ける者でない場合にあっては申立人が審判の告知を受けた日(2以上あるときは、当該日のうち最も遅い日)から、それぞれ進行する。

なお、家事事件の即時抗告期間には、1週間のものと2週間のものがありますので、ご注意ください。

家事事件手続法第101条(即時抗告期間等)
 
  1. 審判以外の裁判に対する即時抗告は、一週間の不変期間内にしなければならない。ただし、その期間前に提起した即時抗告の効力を妨げない。
  2. 前項の即時抗告は、特別の定めがある場合を除き、執行停止の効力を有しない。ただし、抗告裁判所又は原裁判所は、申立てにより、担保を立てさせて、又は立てさせないで、即時抗告について裁判があるまで、原裁判の執行の停止その他必要な処分を命ずることができる。

  3. 第九十五条第二項及び第三項の規定は、前項ただし書の規定により担保を立てる場合における供託及び担保について準用する。

即時抗告ができる(2週間待つ必要がある)審判


  • 旧法:家事審判規則、特別家事審判規則で定めていた。
  • 新法(家事事件手続法):新法第2編(家事審判に関する手続)第2章(家事審判事件)において規定する家事審判事件の各則において個別に定めている。

(参照:金子修『逐条解説家事事件手続法』商事法務/2013/242頁以下)

つまり・・・

  ▼

  • 審判が告知によって直ちに効力を生じるものか?
  • 審判が即時抗告をすることができるものか(2週間待つ必要があるか)?
については・・・

  ▼

家事事件手続法第2編第2章をチェックして、即時抗告ができるものか否かを見るのが一番早い。

事事件手続法第2編第2章に規定されている各事件は次のとおりです。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

第一節 成年後見に関する審判事件(第117条―第127条)

第二節 保佐に関する審判事件(第128条―第135条)

第三節 補助に関する審判事件(第136条―第144条)

第四節 不在者の財産の管理に関する処分の審判事件(第145条―第147条)

第五節 失踪の宣告に関する審判事件

第一款 失踪の宣告の審判事件(第148条)

第二款 失踪の宣告の取消しの審判事件(第149条)

第六節 婚姻等に関する審判事件(第150条―第158条)

第七節 親子に関する審判事件

第一款 嫡出否認の訴えの特別代理人の選任の審判事件(第159条)

第二款 子の氏の変更についての許可の審判事件(第160条)

第三款 養子縁組をするについての許可の審判事件(第161条)

第四款 死後離縁をするについての許可の審判事件(第162条)

第五款 離縁等の場合における祭具等の所有権の承継者の指定の審判事件(第163条)

第六款 特別養子縁組に関する審判事件(第164条―第166条)

第八節 親権に関する審判事件(第167条―第175条)

第九節 未成年後見に関する審判事件(第176条―第181条)

第十節 扶養に関する審判事件(第182条―第187条)

第十一節 推定相続人の廃除に関する審判事件(第188条・第189条)

第十二節 相続の場合における祭具等の所有権の承継者の指定の審判事件(第190条)

第十二節の二 相続財産の保存に関する処分の審判事件(第190条の2)

第十三節 遺産の分割に関する審判事件(第191条―第200条)

第十四節 相続の承認及び放棄に関する審判事件(第201条)

第十五節 財産分離に関する審判事件(第202条)

第十六節 相続人の不存在に関する審判事件(第203条―第208条)

第十七節 遺言に関する審判事件(第209条―第215条)

第十八節 遺留分に関する審判事件(第216条)

第十八節の二 特別の寄与に関する審判事件(第216条の2―第216条の5)

第十九節 任意後見契約法に規定する審判事件(第217条―第225条)

第二十節 戸籍法に規定する審判事件(第226条―第231条)

第二十一節 性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律に規定する審判事件(第232条)

第二十二節 厚生年金保険法に規定する審判事件(第233条)

第二十三節 児童福祉法に規定する審判事件(第234条―第239条)

第二十四節 生活保護法等に規定する審判事件(第240条)

第二十五節 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律に規定する審判事件(第241条)

第二十六節 破産法に規定する審判事件(第242条)

第二十七節 中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律に規定する審判事件(第243条)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

即時抗告できない(告知で効力を生じる)審判


即時抗告できる旨の規定がなければ、即時抗告できない(=告知によって即時効力発生)

と言われても・・・

「本当に規定がないのか?(自分が)見つけられないだけでは?」と不安になりますよね。

安心してください。

即時抗告できる旨の規定がない(告知で効力を生じる)家事審判事件の一覧は次のとおりです。

分類 手続名

第一節 成年後見に関する審判事件(第117条―第127条)

 

  • 後見開始の審判(申立人は不可。ただし、申立人以外の〔本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官〕は可能なので、2週間待ち必要。家事123)
  • 成年後見人選任の審判(民843ⅡⅢ)

第二節 保佐に関する審判事件(第128条―第135条)

 
  • 保佐開始の審判(申立人は不可。ただし、申立人以外の〔本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、補助人、補助監督人又は検察官〕は可能なので、2週間待ち必要。家事132) 
  • 保佐開始の審判の取消しの審判(民14Ⅰ、民19)
  • 保佐人の同意を得なければならない行為の定めの審判の取消しの審判(民14Ⅱ)
  • 保佐人選任の審判(民876の2ⅠⅡ→民843ⅡⅢ)
  • 臨時保佐人選任の審判(民876の2Ⅲ)

第三節 補助に関する審判事件(第136条―第144条)

 
  • 補助開始の審判(申立人は不可。ただし、申立人以外の〔本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人又は検察官〕は可能なので、2週間待ち必要。家事142)
  • 補助開始の審判の取消しの審判(民18Ⅰ、民19)
  • 補助人の同意を得なければならない行為の定めの審判の取消しの審判(民18Ⅱ)
  • 補助人選任の審判(民876の7ⅠⅡ→民843ⅡⅢ)
  • 臨時補助人選任の審判(民876の7Ⅲ)

第四節 不在者の財産の管理に関する処分の審判事件(第145条―第147条)

 
  • 規定がない→全て即時抗告できない

第五節 第一款 失踪の宣告の審判事件(第148条)

 
  • 即時抗告できる(家事148Ⅴ)。

第五節 第二款 失踪の宣告の取消しの審判事件(第149条)

 
  • 即時抗告できる(家事149Ⅳ)。
第六節 婚姻等に関する審判事件(第150条―第158条)
 
  • 家事156参照

第七節 第一款 嫡出否認の訴えの特別代理人の選任の審判事件(第159条)

 
  • 家事159Ⅲ参照

第七節 第二款 子の氏の変更についての許可の審判事件(第160条)

 
  • 家事160Ⅲ参照

第七節 第三款 養子縁組をするについての許可の審判事件(第161条)

 
  • 家事161Ⅳ参照

第七節 第四款 死後離縁をするについての許可の審判事件(第162条)

 
  • 家事162Ⅳ参照

第七節 第五款 離縁等の場合における祭具等の所有権の承継者の指定の審判事件(第163条)

 
  • 家事163Ⅲ参照

第七節 第六款 特別養子縁組に関する審判事件(第164条―第166条)

 
  • 家事164Ⅷ、家事165Ⅶ参照

第八節 親権に関する審判事件(第167条―第175条)

 
  • 家事172参照

第九節 未成年後見に関する審判事件(第176条―第181条)

 
  • 家事179参照

第十節 扶養に関する審判事件(第182条―第187条)

 
  • 家事186参照

第十一節 推定相続人の廃除に関する審判事件(第188条・第189条)

 
  • 家事188Ⅴ参照

第十二節 相続の場合における祭具等の所有権の承継者の指定の審判事件(第190条) 

 
  • 即時抗告できる(家事190Ⅲ)。

第十二節の二 相続財産の保存に関する処分の審判事件(第190条の2) 

 
  • <未調査>

第十三節 遺産の分割に関する審判事件(第191条―第200条)

 
  • 家事198参照。

第十四節 相続の承認及び放棄に関する審判事件(第二百一条)

 
  • 家事201Ⅸ参照。

第十五節 財産分離に関する審判事件(第二百二条)

 
  • 家事202Ⅱ
第十六節 相続人の不存在に関する審判事件(第203条ー第208条)
 
  • 相続財産清算人選任審判には、即時抗告できない。
  • 相続財産清算人選任を却下する審判には、即時抗告できない。

第十七節 遺言に関する審判事件(第209条―第215条)

 
  • 家事214参照。

第十八節 遺留分に関する審判事件(第216条)

 
  • 遺留分放棄を許可する審判には、即時抗告できない(家事216Ⅱ参照)。
第十八節の二 特別の寄与に関する審判事件(第216条の2―第216条の5)
 
  • 家事216の4参照

第十九節 任意後見契約法に規定する審判事件(第217条―第225条)

 
  • 家事223参照

第二十節 戸籍法に規定する審判事件(第226条―第231条)

 
  • 家事231参照

第二十一節 性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律に規定する審判事件(第232条)

 
  • 家事232Ⅲ参照

第二十二節 厚生年金保険法に規定する審判事件(第233条)

 
  • 家事233Ⅱ参照

第二十三節 児童福祉法に規定する審判事件(第234条―第239条)

 
  • 家事238参照

第二十四節 生活保護法等に規定する審判事件(第240条)

 
  • 家事240Ⅵ参照

第二十五節 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律に規定する審判事件(第241条)

 
  • 家事241Ⅲ参照

第二十六節 破産法に規定する審判事件(第242条)

 
  • 家事242Ⅱ参照
第二十七節 中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律に規定する審判事件(第243条)
 
  • 家事243Ⅲ参照

確定証明書の要否


告知によって直ちに効力が発生している(確定している)ことと、確定証明が必要なことは異なります。例えば、相続財産清算人選任の審判は、告知によって直ちに効力を発生しますが、確定証明書がないと金融機関は、手続に応じてくれません。

したがって、審判の確定証明書は、告知で効力が生じる場合においても取得しておくべきです。

原案


この記事を執筆するにあたり、当グループの髙野守道司法書士より原案の提供を受けました。

司法書士 髙野守道

川のほとり司法書士事務所

平成28年司法書士登録

葛飾生まれ、葛飾育ち、葛飾在住、事務所も葛飾

 

開業当初から、世の中の「困った」を一つでも多く解消すること、軽減させることを念頭に、先義後利の精神で今日も駆けずり回っている。

義理と人情溢れる下町の頼りになる司法書士になれたらいいな、なれるといいな。