被相続人が、「特別受益の持戻し」計算を免除する意思を表示することです(民法903Ⅲ)。
被相続人が「持戻しを免除する」と明確に意思表示していることは、ほぼありません。
そこで、実務では遺言や生前贈与の内容から被相続人が「特別受益の持戻免除」を行っていたか否かを推認することになります。
もくじ | |
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生前贈与に関する持戻し免除の方法 | 遺贈(遺言で贈与)に関する持戻し免除の方法 |
どんな方法でも良い ▼ 「黙示の免除」が認められうる。 ▼ どんな場合に、「黙示の免除」が認められるか? |
遺言で「持戻し免除」の意思表示が必要【1】 |
【1】かつて、学説では、遺贈に対する持戻し免除の意思表示については、遺言によってなされなければならないとの解釈が有力であった。しかし、現在では、遺言に限定する必要はないとする解釈が多数を占めている(新版注釈(27)(補訂版)220-221頁有地=床谷)。
実務上、遺贈の持戻し免除を、遺言ではなく生前の書面で行うことが出来れば、メリットは大きい(例えば、遺言の場合には他の相続人に対して隠すことはできない〔隠匿は相続欠格事由・民法891⑤〕が、生前に別の書面によって作成した場合には、必要に応じて他の相続人に開示すれば良いなど)が、明確に認めた判例があるわけでもないので、採用するのには十分な考慮が必要です。
次のような場合には、被相続人が持戻し免除の意思表示をしていたとされます。
✔ 具体的相続分を指定した場合 ✔ 特定相続人により多くの遺産を取得させようという意図で生前贈与した場合 ✔ 各相続人に同程度の生前贈与を行っている場合 ✔ 自立生活が困難な者に、将来の扶養を目的として生前贈与を行った場合 ✔ 生前贈与した代わりに被相続人が何等かの利益を得ている場合 ✔ 配偶者への居住不動産の贈与 |
令和元年7月1日、民法903条4項として下記条項が追加されました。
但し、施行日前になされた遺贈・贈与には適用されません(改正民法附則4条)
婚姻期間が20年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住の用に供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与をしたときは、当該被相続人は、その遺贈又は贈与について第一項の規定を適用しない旨の意思を表示したものと推定する。 |
遺留分が優先されます。
つまり、持戻し免除がなされたとしても、遺留分算定にあたっては、特別受益は遺留分算定の基礎となる財産額に参入され、また、遺留分減殺の対象になります(最高裁平成24.1.26決定)。
また、遺留分減殺の算定に入れる特別受益の範囲は、過去10年内になされたものに限定されることとなりました(改正民法1044Ⅲ)