遺言無効


自分が知らない間に遺言が作られていたが・・・

  • 認知症の被相続人にこんなに複雑な遺言が書ける筈がない。
  • 「あなたの相続分は無し」とされている。

そんなときには、遺言の無効を検討すべきです。

もくじ
  1. 形式的不備による無効
    1. 自筆証書遺言の方式違反
    2. 公正証書遺言の方式違反
  2. 遺言能力がない場合の無効
    1. 形式的に遺言能力がない場合
    2. 実質的に遺言能力がない場合
  3. 遺言無効の証拠収集
  4. 遺言無効主張の手続
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形式的不備による無効


遺言は、民法に定める方式を守って作成しなければなりません(要式行為)ので、方式を欠いた遺言は無効となります。

1.自筆証書遺言の方式違反(民968)

2.公正証書遺言の方式違反

⑴ 遺言の口授がない。

  1. 「遺言者による口授→公証人筆記→公証人読み聞かせ→署名押印」という方式(民969)を実践していないと主張する方法。
  2. 「遺言者は、認知症だったから口授できなかった」と主張する方法。 

 

⑵ 不適格な証人を立ち会わせた(民974)

遺言能力がない場合の無効


1.形式的に遺言能力がない場合

⑴ 15歳未満の者による遺言(民961)

 

⑵ 成年被後見人による遺言で、医師2名以上の立ち会いがなかった(民973)

 

⑶ 成年被後見人による遺言で、後見人の利益となるべき遺言をした(民966)

2.実質的に遺言能力がない場合

認知症であったとしても、その方は「成年被後見人(精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある)」とは限りません。

同様に、認知症であったとしても、その方が「遺言能力なし」とは限りません。

 認知症である ≠ 通常の形式の遺言能力なし(=成年被後見人である)

 

民法973条1項は、成年後見人の遺言に関する条文ですが、

成年被後見人が『事理を弁識する能力』を一時回復した時において遺言をするには、医師二人以上の立会いがなければならない。

と定めていて、遺言は、『事理弁識能力』があれば有効であることを間接的に定めています。

 

『事理弁識能力』とは、裁判例によれば、

「遺言の内容及び当該遺言に基づく法的結果を弁識、判断するに足りる能力」をいいます。

つまり

「この人は、この時点では一切遺言は書けない」という風に考えるのではなくって

「この人でも、この程度の簡単な遺言であれば書くことが出来る」という風に考えるのです。

複雑な遺言 弁識・判断能力は高度なものが要求される。
簡単な遺言  弁識・判断能力はそれ程高度なものが要求されない。

遺言無効の証拠収集


次のように証拠を入手していきます。

入院先がわからないとき

  • 国保・後期高齢者広域連合へ照会▶通院先病院がわかる▶病院に照会状・診療録などの開示請求

入通院先がわかっているとき

  • 入通院先病院に照会状・診療録などの開示請求

入通所していた介護施設がわからないとき

  • 介護保険へ照会▶入居施設がわかる▶施設に照会状・アセスメントなどの開示請求

入通所介護施設がわかっているとき

  • 入通所していた介護施設に照会状を送り、アセスメントなどの開示請求

家族関係者から

  • 事情を聴取
  • 故人の写真・日記などの提供を求めます。

自筆証書遺言の場合

  • 筆跡鑑定を行います。

遺言無効主張の手続


内容証明郵便

遺言が無効であるので、遺言執行を停止するよう通知します。

予備的に遺留分侵害額請求も行うこともあります。

提訴予告通知

遺言無効確認訴訟などは、印紙代が高額になることが考えられます。

そこで、訴状に匹敵する請求原因事実を記載し、証拠を添付した提訴予告通知(民訴132の1以下)を送付し、相手方の対応を確認します。

遺言執行者解任審判申立・遺言執行者職務執行停止申立て

地裁に対して、民事保全法に基づく仮の地位を定める仮処分を申立てることも可能ですが、担保の額が相当高額になりますので、遺言執行者解任審判(を本案として)の申立と同時に、遺言執行者職務執行停止の仮処分を申立てます。

(遺言無効確認調停)

調停前置(家事事件手続法257)

遺言無効確認請求訴訟

調停での合意の成立が見込めない場合には、その旨を記載して、いきなり地裁・簡裁に提訴します(家事事件手続法257Ⅱ)。

遺言執行者がいる場合には、その者を被告として提訴します。

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