外国人が日本で不動産を購入しても、所有者名をアルファベットで登記することはできず、カタカナに直して登記することとなります〔1〕。
ところが、アルファベット商号の株式会社(アルファベットで会社法人登記をしている株式会社)が不動産を購入した場合には、所有者名をアルファベットで登記できます。
簡単なようで、ややこしい(面倒くさい)登記ルールを一覧にまとめました。
〔1〕令和6年4月1日より、外国人はローマ字併記も必要になりました。あくまでカタカナで表記したうえで、()書きでローマ字を併記する方法です。
法務省ホームページ「令和6年4月1日以降にする所有権に関する登記の申請について」の項目「3 外国人を所有権の登記名義人とする登記の申請について」をご参照ください(最終アクセス令和7年1月12日)
もくじ | |
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〔凡例〕
下表では、次の記号はそれぞれ次の意味です。
○=制限なく使用できるもの、●=使えたことはあるが全法務局で可能か不明なもの
△=制限はあるが使用できるもの、▲=本来使用できないが登記されることもあるもの
×=使用できないもの
ー=想定できないもの
商業登記(会社法人登記) | 不動産登記【2】 | |||||||||||
商号 【1】 |
本店 |
役員 氏名 |
役員 住所 |
その他 の事項 |
個人の場合 | 会社法人の場合 | ||||||
氏名 | 住所 |
商号 【3】 |
本店 | |||||||||
漢字【5】 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |||
ひらがな | あいう | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ||
カタカナ | アイウ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ||
ローマ字(大文字) アルファベット(大文字) |
ABC | ○ | ○ | ○ |
× 【4】 |
○ | ○ | ○ | ||||
ローマ字(小文字) アルファベット(小文字) |
abc | ○ | ○ | ○ |
× 【4】 |
○ | ○ | ○ | ||||
アラビア数字 | 123 | ○ | ○ | ー | ○ | ○ | ー | ○ | ○ | ○ | ||
ローマ数字(大文字) | ⅠⅡⅢ | × | ● | ー | ○ | ー | ● | × | ||||
ローマ数字(小文字) | ⅰⅱⅲ | × | ● | ー | ○ | |||||||
丸囲み数字 | ①②③ | × | ー | ー | × | |||||||
アンパサンド | & | △ | ー | ー | △ | |||||||
アポストロフィー | ’ | △ | ー | ー | △ | |||||||
コンマ | , | △ | ー | ー | △ | |||||||
ハイフン | - | △ | ○ | ー | ー | ○ | △ | ○ | ||||
中点 | ・ | △ | × | △ | ||||||||
ピリオド | . | △ | △ | |||||||||
スペース・空白 | △ | × | × | △ | ||||||||
まる | ○●◎ | × | ー | ー | × | |||||||
ばつ | × | × | ー | ー | × | |||||||
かっこ | ()〔〕 | × | ー | ー | × |
【1】これについてのみ詳しい先例があります。後ほど詳しく説明します。
【2】不動産登記は、公的書類に基づき、原則として公的書類の記載そのままを登記することが求められます。
【3】商業登記(会社法人登記)をしたままの文字で、不動産登記もなされます。したがって、商業登記で「商号として使えない文字【1】」は、不動産登記でも使えない文字ということになります。
【4】カタカナに直して登記します。ただし、令和6年4月1日より、外国人は、ローマ字併記も必要になりました。あくまでカタカナで表記したうえで、()書きでローマ字を併記する方法です。
法務省の記載例では次のとおりになっています。
ジョン・スミス(JOHN SMITH) |
本来、不動産登記の個人の氏名では「・(中点)」は使えなかった筈なのですが・・・
法務省ホームページ「令和6年4月1日以降にする所有権に関する登記の申請について」の項目「3 外国人を所有権の登記名義人とする登記の申請について」をご参照ください(最終アクセス令和7年1月12日)
【5】すべての漢字が、登記で使用できるわけではありません。申請用総合ソフトの漢字検索機能で該当したものは「登記統一文字」として利用することができます。
「登記・供託オンライン申請システムで取り扱う文字について」/法務省:登記・供託オンライン申請システム/最終アクセス221229
これについてのみ詳しい先例があります。
会社や各種法人が登記する際に使用可能・使用不可能な文字は次のとおりです(平成14年法務省告示第315号)。
文字 | 使用の制限 |
漢字・ひらがな・カタカナ | 商号の先頭・中間・末尾どこでも使える。 |
小さな「ァ」「ィ」「ゥ」「ェ」「ォ」 | 商号の先頭で使えるかは未確認。 |
以下は、平成14年の商業登記規則などの改正により使用できるようになった文字です(商業登記規則50)。 | |
ローマ字(大文字及び小文字)
アルファベット(大文字及び小文字) |
商号の先頭・中間・末尾どこでも使える。 |
アラビヤ数字「0」「1」「2」「3」「4」「5」「6」「7」「8」「9」 |
商号の先頭・中間・末尾どこでも使える。 |
「&」(アンパサンド) 「’」(アポストロフィー) 「,」(コンマ) 「-」(ハイフン) 「・」(中点) |
字句(日本文字を含む。)を区切る際の符号として使用する場合に限り用いることができます。商号の先頭又は末尾に用いることはできません。 |
「.」(ピリオド) |
字句(日本文字を含む。)を区切る際の符号として使用できます。 商号の先頭に用いることはできません。 省略を表すものとして商号の末尾に使用できます。 ○株式会社さとう. ×さとう株式会社. |
「 」(スペース・空白) | ローマ字を用いて複数の単語を表記する場合に限り、当該単語の間を区切るために用いることもできます。 |
「〇」(マル)
「×」(バツ)。「X」(エックス)を使うことは可能です。
ローマ数字「Ⅰ」「Ⅱ」「Ⅲ」「Ⅳ」「Ⅴ」「Ⅵ」「Ⅶ」「Ⅷ」「Ⅸ」「Ⅹ」「Ⅺ」「Ⅻ」など