ホームページに「会社設立」を取扱業務として掲載している行政書士や税理士は多いです。でも、彼らの資格で会社設立に手を出すことは違法であり、犯罪であり、消費者被害が発生する温床です。
どうしてダメなのか?!キッチリとご説明します。
一般の方は、絶対に登記を行政書士や税理士に依頼してはいけません。
税理士も行政書士も、自ら「会社設立」を謳って集客してはいけないのは勿論、たとえ顧問先がやってくれと言っても登記申請書の作成をしてはダメです。犯罪ですから。
同業司法書士の方は、税理士や行政書士が登記申請に関与している事実を発見した場合には、このページで理論武装をして、しかるべき対応をしてください。それが、市民を守ることになるのです。
法務局職員の方は、犯罪があると思うときは告発をする義務があること、告発義務違反には罰則もあることを忘れずに、しかるべき対応をしていただきたいと思います。
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日本の資格制度は細かく専門に分かれて高度なサービスが行われています。
という風に11種類以上の国家資格があります。
そして資格ごとに試験があり、資格ごとに試験問題となる法律が異なります。
会社の登記は、会社法・商業登記法などに従って行ないますが、
不動産の登記は、民法・不動産登記法などに従って行ないますが、
よって、行政書士・税理士は、(登記をして良い資格)試験合格という能力担保がありません。
裁判例も、登記に関する能力担保がなされていない行政書士には登記は無理だという。
原判決が詳細に認定判示した司法書士及び行政書士の各制度の沿革からすると、登記申請手続に関する業務は、行政書士ではなく、司法書士に集中されたものであることが明らかである(略) ところで、司法書士は、その資格の取得に不動産登記法や商業登記法といった登記に関する専門知識の修得が要求されている上、登記、供託及び訴訟に関する知識や、民法、商法、刑法といった幅広い法律分野における試験が課される等、法律実務上の知識と判断力が要求されていることに加え、司法書士法上、司法書士の資格を有する者が司法書士となるには、司法書士名簿に一定事項の登録を受ける必要があることや、司法書士が違反行為をしたときは法務局又は地方法務局の長が懲戒処分をすることができること等、職務の適正な遂行のための種々の規律が定められていることなどからすると、司法書士は、登記業務を扱う十分な適格性を有するものということができる。 これに対し、行政書士は、主として行政官庁に提出する書類の作成や、私人間の権利義務又は事実証明に関する書類の作成を業務としており、その業務を行うに当たり、登記に関する専門的知識は必須のものではなく(行政書士法上、行政書士試験は、前記のような業務に関し必要な知識及び能力について行う旨規定され、司法書士試験においては、前記のとおり、登記や法律に関する知識の試験が課されるのに比して、行政書士試験においては、その内容が行政書士法上定められておらず、同法四条三項により、その試験の施行に関する事務は都道府県知事に委任されているに止まる。)、社会一般において、行政書士が登記等の専門家とはみられておらず、しかも、行政書士は、本来の業務としてはもとよりこれに付随する業務としても、登記申請の代理ないし代行行為を行うことはできないというのが、全国の行政書士会の一致した見解である上、行政書士の資格で登記申請の代理ないし代行行為が実務上行われているという実態もないのであって、行政書士は、現行法上一切登記申請の代理ないし代行行為ができないというのが一般の社会通念であると認められる。 以上のような種々の観点から、登記申請手続に関する業務については、行政書士ではなく司法書士に集中されたものと考えられるのであって、これによると、本件の被告人による各登記申請の代理行為が、行政書士に認められた正当な業務であるとの主張はもとより、本来の業務に付随する正当な行為であるとの主張も、採用の余地がないといわなければならない。 |
司法書士は、一生懸命に勉強し細心の注意を払って実務を行なっていますが、それでも万一失敗したときにお客様に迷惑を掛けないために、司法書士賠償責任保険に加入しています。
しかし、行政書士・税理士にとって、登記は業務ではないので、もちろん無保険です。やってはいけない仕事であるうえ、失敗してもその補償もできないのです。
このように司法書士(弁護士)以外の者が登記申請書を作成したり、登記申請をすると大変危険ですので、法律は最高刑に「懲役」を規定して、厳しく禁じています。
※ 行政書士や税理士が作成した文書が「依頼者本人名」であっても、罪に該当します。
第73条第1項の規定に違反した者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。 |
司法書士会に入会している司法書士又は司法書士法人でない者は、第3条第1項第1号から第5号までに規定する業務を行つてはならない。ただし、他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。 |
【1】「他の法律」とは、弁護士法を指します。
司法書士は、この法律の定めるところにより、他人の依頼を受けて、次に掲げる事務を行うことを業とする。 | |
1 | 登記又は供託に関する手続について代理すること。 |
2 | 法務局又は地方法務局に提出し、又は提供する書類又は電磁的記録を作成すること。 |
3 | (略) |
4 | (略) |
5 |
前各号の事務について相談に応ずること。 |
行政書士である被告人が、延べ17件の登記申請を行ったことについて業務性を認定し、罰金25万円の刑罰が確定した事件 |
行政書士は、議事録を作っても良い資格ですが登記申請書は一切作ってはいけません。また、登記の添付書類となる場合、議事録も作成できません。
税理士が、議事録を作っても良い資格なのかは知りませんが、前述のとおり試験科目に会社法すら入っていないので、おやめになった方が良いでしょう。
ちなみに「会社設立」は登記が必要です。
彼らに頼んでも、途中までしか会社設立は出来ないのです。
途中までしか出来ない仕事を、普通は宣伝しないものです。
行政書士は、遺産分割協議書を作っても良い資格ですが登記申請書は一切作ってはいけません。また、不動産を含む遺産分割協議書は作成できません。
税理士が、遺産分割協議書を作っても良い資格なのかは知りませんが、前述のとおり試験科目に民法すら入っていないので、おやめになった方が良いでしょう。
ちなみに「相続登記」は登記が必要です。
彼らに頼んでも、途中までしか相続登記は出来ないのです。
また、行政書士の中には、遺産分割協議書の作成は行政書士に、相続登記は提携している司法書士にと宣伝している方もいらっしゃいますが、二種類の専門家を経由すれば費用が高くなってしまいます。
設問の書類が登記を申請するために作成するものである場合には後段のお見込のとおり。
問 | 「不動産売渡証書」「不動産抵当権設定証書」は、行政書士法第一条の「権利義務」に関する書類であるから、その作成業務は、当然行政書士の業務であるものと主張するものと、司法書士法第一条による「法務局、若しくは地方法務局に提出する書類」 (注…不動産登記法により提出して登記を受くべき原因書煩である。)に該当するから、行政書士法第一条第二項の「他の法律において、制限されている」旨の規定が適用され、行政書士は作成することができないと主張するものがいるが、いずれが正しいか。 |
答 | 設問の書類が登記を申請するために作成するものである場合には後段のお見込のとおり。 |
被告人である行政書士の有罪が確定した事例。
行政書士が代理人として登記申請手続をすることは、行政書士の正当な業務に付随する行為に当たらないから、行政書士である被告人が業として登記申請手続について代理した本件各行為が司法書士法一九条一項に違反するとした原判断は、正当である。 |
(福崎伸一郎/最高裁判所判例解説 刑事篇(平成12年度)/法曹会/平成15年/1頁)
登記原因証書となる売買契約書等は、権利義務に関する書類であるから、一般的には、行政書士が作成することができる書類に該当する。しかし、これらの書類は、初めから登記原因証書として作成される場合は、登記申請の添付書類として法務局又は地方法務局に提出する書類に該当するから、司法書士が作成すべきものであって、行政書士が作成することはできないと解される。司法書士に関する事項を所掌する法務省、当時、行政書士法の施行に関することを所掌していた自治省とも、同様の見解に立っていた。したがって、行政書士は登記原因証書作成業務の付随行為として登記事務を行うことができるという見解は、前提において誤っているものと考えられる。 |
登記原因証書となり得る書類は、一般的には、権利義務に関する書類として、行政書士が作成することができる書類に該当するが、初めから登記原因証書として作成される場合は、登記申請の添付書類として法務局又は地方法務局に提出する書類に該当するから、司法書士が作成すべきものと解される。 |
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司法書士でない者が継続反覆の意思をもつて司法書士法所定の書類を作成するときは、報酬を得る目的の有無にかかわりなく司法書士法に違反する。 |
司法書士業務を定めた司法書士法第3条に「報酬を得て」との文言がない(無償独占)。すなわち、司法書士でない者は無報酬でも他人の登記などの手続き等の司法書士業務はできない(司法書士法73)。
司法書士法第3条(司法書士の業務) | |
司法書士は、この法律の定めるところにより、他人の依頼を受けて、次に掲げる事務を行うことを業とする。 (以下略) |
司法書士法第73条(非司法書士等の取締り) | |
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司法書士法第78条(刑罰) | |
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行政書士法には「業として」「報酬を得て」という文言がある(有償独占)。
したがって、報酬を得なければ、誰でも行政書士業務を行い得ることとなる。
行政書士法第1条の2(行政書士の業務) | |
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行政書士法第19条(業務の制限) | |
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行政書士による違反事例が目立ちます。
司法書士資格がないにもかかわらず、行政書士が複数の依頼者から委任を受けて株式会社の設立登記の申請書作成などを行ったことが確認された事案で、大阪司法書士会が所轄警察署に対して告発したところ、所轄警察署による厳正な捜査の結果、当該行政書士が大阪地方検察庁に送検された。大阪地方検察庁は、当該行政書士を略式起訴し、裁判所は、当該行政書士に対して司法書士法違反として罰金を科する略式命令とし、当該行政書士の刑事処分が確定したもの(令和3年2月1日大阪司法書士会「当会が刑事告発し、司法書士でない者が登記申請書作成などを行なったとして、検察が起訴した事件についての会長声明」最終アクセス令和3年2月2日)。
大阪入国管理局元次長であり大阪市内に事務所を置く行政書士が司法書士の資格がなににも関わらず、業として他人の会社設立手続を代行した疑いがあるとして、大阪府警に逮捕されたもの(平成30年1月31日大阪司法書士会「行政書士が会社設立登記を行ったとして司法書士法違反で逮捕された事件についての会長声明」最終アクセス令和3年1月1日)。
当会の調査により、県内の行政書士について、司法書士の資格を持たずして、司法書士法に定められた司法書士の業務を行ったこと(非司行為)が判明し、当会は、平成26年11月13日付で、県に対して、行政書士法に基づく厳正な措置をとるように請求を行いました。当該措置請求に基づく県の調査により、「非司法書士等の取締り」を定めた司法書士法第73条第1項違反、及び行政書士法第1条の2第2項及び同法第1条の3但書違反の事実が認められたため、平成29年10月5日、県知事により、当該行政書士に対して、1か月間の業務停止処分の措置がなされました。
当該行政書士は、司法書士の資格を持たずして、顧客である企業から役員変更等の登記申請などに関する相談を受け、業として、登記申請書の作成及び当該書類の作成に関する相談業務を取り扱った事実が認めらました。これらの事実が司法書士法及び行政書士法に反するとして、県知事より、1か月間の業務停止処分がなされたものです(2017年10月26日付兵庫県司法書士会「当会の措置請求により県内の行政書士が懲戒処分を受けたことについての会長声明」・最終アクセス令和3年1月1日)。
司法書士の資格がないのに登記申請業務をしたとして、大阪地検特捜部が司法書士法違反罪で大阪市の行政書士を略式起訴し、大阪簡裁が罰金50万円の略式命令を出したもので、大阪司法書士会が告発していた(産経新聞デジタル「司法書士法違反で略式起訴 資格ないのに登記申請」最終アクセス令和3年1月1日)。
容疑の概要は、当該行政書士が、外国人に長期の在留資格を得させるため、司法書士の資格が必要な会社の法人登記の申請を無資格で行ったというもの(平成28年1月29日付日本行政書士会連合会会長談話「司法書士法違反容疑での行政書士の逮捕に関して」最終アクセス令和3年1月1日)。
アダルトサイトに接続し料金を請求され、消費生活センターに相談しようとしてインターネットで検索した結果、本来は業務としては行うことができないアダルトサイトとのトラブル解決をうたっている一部の行政書士に救済を依頼し、費用を請求されたという相談が2014年度に急増しました。消費生活センターに似せた名前で相談窓口を運営したり、広告を出しているケースもあります。
そこで、同様の相談事例を紹介し、消費者トラブルに遭わないための注意点等について消費者に情報提供をするとともに、行政書士の団体に業務の適正化を図ること等を要望します(平成27年5月14日付独立行政法人国民生活センター「アダルトサイトとの解約交渉を行政書士はできません!」最終アクセス令和3年1月1日)。
土地家屋調査士・行政書士の資格を有するが司法書士の資格を有さない者が、不動産権利登記及び法人に関する登記を行ったため「土地家屋調査士の業務禁止」処分を受けたため、その取消訴訟を提起していたが、最高裁で上告棄却、上告受理申立ての不受理となったもの。
土地家屋調査士・行政書士の「土地家屋調査士の業務禁止」が確定した。
(登記情報567号111頁)
平成12年2月8日最高裁第三小法廷判決(平9年〔あ〕613号) | |
所論は、司法書士法一九条一項、二五条一項は、憲法二二条一項に違反すると主張する。しかし、司法書士法の右各規定は、登記制度が国民の権利義務等社会生活上の利益に重大な影響を及ぼすものであることなどにかんがみ、法律に別段の定めがある場合を除き、司法書士及び公共嘱託登記司法書士協会以外の者が、他人の嘱託を受けて、登記に関する手続について代理する業務及び登記申請書類を作成する業務を行うことを禁止し、これに違反した者を処罰することにしたものであって、右規制が公共の福祉に合致した合理的なもので憲法二二条一項に違反するものでないことは、当裁判所の判例(最高裁昭和三三年(あ)第四一一号同三四年七月八日大法廷判決・刑集一三巻七号一一三二頁、最高裁昭和四三年(行ツ)第一二〇号同五〇年四月三〇日大法廷判決・民集二九巻四号五七二頁)の趣旨に徴し明らかである。所論は理由がない。
(以下略) |
平成12年2月8日最高裁第三小法廷判決(平9年〔あ〕613号) | |
行政書士が代理人として登記申請手続をすることは、行政書士の正当な業務に付随する行為に当たらないから、行政書士である被告人が業として登記申請手続について代理した本件各行為が司法書士法一九条一項に違反するとした原判断は、正当である。 (以下略) |
刑事訴訟法第239条第2項は、公務員に対して犯罪の告発義務を課しています。
さらに、国家公務員法第82条1項2号によって、告発義務に違反したときには罰則の適用もあります。
市民の権利を水際で守るのは、自分達であるという矜恃をもって、登記行政につとめていただきたいと思います。
一番簡単にできる情報提供の方法です。
東京司法書士会・非司法書士排除委員会への情報提供
各県には、必ず司法書士会が設置されています。
全国の司法書士会一覧(日本司法書士会連合会HP)から、最寄りの司法書士会の連絡先をご確認のうえ、「非司法書士に関する情報提供です」とお電話又はFAXで情報提供をお願いします。
司法書士法違反は親告罪(犯罪被害者による告訴が必要な罪)ではありませんので、一般の方が警察や検察庁に告発することも可能です。しかしながら、それはとてもハードルが高いことですので、司法書士会に情報提供いただけることが一番です。
下記ファイルは、当職が令和2年8月11日付で法務省民事局民事第二課、同局商事課及び神戸地方法務局総務課に対して執行した文書です。
事案は、当職の面前で「税理士に作成させた」と言いながら商業登記申請を行なった申請人に対して、受付窓口職員が「そうですか」と言いながらこれを受け取ったものです。
司法書士同職の皆様も、同種事案があれば使えると思いますので、添付いたします。
会社設立がさも行政書士業務のように見えるよう表現を工夫された文言
「行政書士は途中までしかできません」と明記すべき。
もっとも先に引用した昭和37年自治丁行や平成12年最判によれば、この記載自体がオカシイです。
同じページのもう少し下には「会社の定款変更」が行政書士業務のように見せかけた記載があります。
会社の定款変更は、さも議事録だけ作れば完了するように見せかけていますが、実際には、最後に登記をする必要があります。
(日本行政書士会連合会/https://www.gyosei.or.jp/information/service/case-corporate.html/最終アクセス2022.5.5)。
本来、行政書士の「綱紀の乱れをただす」役割を担うはずの行政書士会が、こういう項目で統計を取っているということは、行政書士会が非司法書士を「黙認」どころか「推奨」しているということです(日本行政書士会連合会/https://www.gyosei.or.jp/about/disclosure/reward.html/最終アクセス2021.6.9)。
日本司法書士会連合会及び各地司法書士会は、直ちに日行連に対して警告を、消費者庁に対して取締りの要請を行うべきであると、思料いたします。
少なくとも報酬統計におけるアンケート項目は、
等と記載させるべきです。
そうでないと、市民ばかりか、市中の行政書士自身も登記ができると誤解してしまうからです。