昔は、「休業届」には、様々なメリットがあったと聞いています。
今は、どんな取扱いになっているのか?税理士に色々聞いてみました。
休業届を選択するケースもあろうかと思いますので、ご参照ください。
休業と廃業を比較すると、下表のとおりです(〇=メリット、×=デメリット)。
休業(休眠) | 廃業(解散) | |
休業届を出すだけなので、会社は消滅しない。 別事業で新たな船出をするときに、社歴を引き継げる。 |
解散登記をすると清算事務以外の事業活動は出来なくなる。 清算結了すると会社(法人格)は消滅する。 |
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役員変更など登記 |
〇 解散などの登記を行う必要がない。 ☓ 定款に定めた役員の任期(1~10年)満了ごとに登記が必要。 ☓ 役員の住所など登記すべき事項に変更が生じれば登記が必要。 ☓ 株式会社は、最後の登記から12年経過すればみなし解散登記がなされる。 |
☓ 解散などの登記を行う必要がある。 |
法人税 |
☓ 毎年の確定申告は必要(確定申告しなければ青色申告が取消される)。 〇 事業活動をしていなければ、利益がないので、結果法人税はかからない。 |
☓ 毎年の確定申告は必要(確定申告しなければ青色申告が取消される)。 〇 事業活動をしていなければ、利益がないので、結果法人税はかからない。 |
消費税 |
☓ 消費税は休業しても会社が存在する限りすぐには免税にはなりません。前々期(例外あり)の課税売上高が1000万円超であれば休業中でも課税事業者です。逆に、前々期(例外あり)の課税売上高が1000万円以下になれば免税となります。 |
☓ 消費税は解散しても会社が存在する限りすぐには免税にはなりません。前々期(例外あり)の課税売上高が1000万円超であれば休業中でも課税事業者です。逆に、前々期(例外あり)の課税売上高が1000万円以下になれば免税となります。 |
市県民税 | ☓ 休業というよりも「事務所廃止」の結果、申告義務と均等割課税がなくなります。 | ☓ 解散というよりも「事務所廃止」の結果、申告義務と均等割課税がなくなります。 |
更にまとめると次のとおりです。
休業の メリット |
① 新たな船出のときに社歴を引き継げる。 ② 解散登記を行うコストが不要。 ③ 税理士の毎月の顧問料が不要になり、年一度の申告報酬だけで済むようになる。 |
休業の デメリット |
① 10年以上放置すると、みなし解散登記を職権でなされるリスクがある。 ② 税金的な面でのメリットは、ほぼ無い。 |
法人が休業するための手続は、次の書面を各役所に提出します。
提出先 | 提出書類 |
法務局 |
●「休業」に関しては、一切の手続不要 ☛今後も定期的に役員変更登記などが必要 |
税務署 |
➊ 異動届出書【1】 ❷ 給与支払事務所の廃止届 ❸ 消費税の納税義務者でなくなった旨の届出【2】 |
県税事務所 | ● 異動届出書【3】 |
市税事務所 | ● 異動届出書【3】 |
年金事務所 | ● 健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届 |
【1】税務署への申告では「休業」による特別扱いはありませんので、実務上は提出しません。
申告義務の免除もありませんので、2期提出しなければ青色申告を取消されます。
【2】消費税は休業しても会社が存在する限りすぐには免税にはなりません。前々期(例外あり)の課税売上高が1000万円超であれば休業中でも課税事業者です。逆に、前々期(例外あり)の課税売上高が1000万円以下になれば免税となります。【国税庁】消費税の納税義務者でなくなった旨の届出
【3】「休業」というよりも「事務所廃止」によって、申告義務と均等割課税が無くなります。
異動届出書の「異動事項等」欄に「休業」の旨、「異動年月日」欄に「休業年月日」を記載する。これらを証する書面は添付を要さない。