「二人代表」ってどうでしょうか?!
お二人が親子である場合には問題になりません。親代表取締役は、子代表取締役に徐々に権限を移行していく過程であって、親代表取締役はそのうち引退するからです。
本コラムでは、そうではないパターン、つまり二人代表取締役でずっと舵を取っていくパターンについて検討しました。
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二人代表取締役について、お話しする前に、会社の意思決定についておさらいをお願いします。
会社は事業活動のために色々な意思決定をしています。
例えば、ある不動産を購入するか否か、株主総会をいつ招集するか、二店舗目をどこに出店するかといった大きな意思決定もあれば、どこのコピー機をリースするか、消耗品の購入など小さな意思決定もあります。
小さな意思決定は代表取締役が行ないます(場合によっては、取締役・部長・課長・係長などが決定権限をもっている場合もあります。)が、重要な意思決定は、代表取締役が一人で決めて良いわけではありません。
簡単に表にすると、次のような関係になります。
最重要な事項の意思決定 | 株主総会(会社法295Ⅲ) |
重要な意思決定 | 取締役会(会社法348) |
日常的な意思決定 | 代表取締役単独(代表取締役が二人いても一人で決定できる) |
さらに、この意思決定は企業の規模によっても重要な事項か、些細な事項かは変わってきます。
例えば、数千万円の不動産を購入する場合を思い浮かべて下さい。小さな企業であれば社運を掛けた大きな意思決定になるでしょうが、大企業にとっては小さな意思決定になることが分かると思います。
決めるべき事項の重要度によって、
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ということをご理解ください。
二人の代表取締役は、「それぞれ」が独立した代表取締役です。
旧商法にあった「共同してでなければ代表権を行使できない代表取締役」の制度は、平成18年5月施行の会社法では廃止されました。
現在では、共同代表制度は代表取締役に対する単なる会社内部での制限(代表取締役と名のつく以上、社外では通用しない制限)として位置づけられています。
二人の代表取締役で一つの法人実印を共用することはできません。
二人代表取締役がいる場合には、どちらかが法務局に印鑑を届出れば、その印鑑が法人実印となります。一人しか印鑑届出をしていない場合には、その代表取締役しか契約書に押印できません(法人の印鑑証明書の添付を要求されない契約書を除く)。
もっとも代表取締役であれば、本人が単独で印鑑届出をして、その代表取締役の使用する法人実印を登録することができます。
本題です。表にまとめると次のようになります。
メリット | デメリット |
仲良し二人組には丁度良い。 | 二人代表の持株比率に差があると、持株比率がものを言う。 |
専門領域の高い人材による高度な分業ができる。 | 分業は外部からは分かりにくい。 |
カリスマ経営者の跡をつぐときに、権限分担で負担軽減が可能である。 | |
業務執行を迅速化できる。 | |
目標に向かって代表取締役それぞれが役割をこなせば最強の経営集団となりえる。 | 意思決定の足並みが揃わなければ企業は空中分解する。 |
一人の代表取締役が突然倒れても、当面はもう一人の代表取締役が企業を牽引できる。 |
二人代表取締役は、
・上手く行けば最強になれる
・下手をすれば企業の空中分解を招く
「諸刃の剣」といえるでしょう。
二人代表取締役の会社が空中分解する様を何度も見てきました。
単に一方が退社する場合もあれば、会社分割などをして企業が割れてしまうこともあります。
しかし、中には、最強の二人代表と言える企業も関与先・顧問先もあります。
「どうして巧くいったとお考えか?」
実際にインタビューした結果は、次のとおりです。
企業が、全従業員に「企業の目的・ビジョン」を共有してもらう必要があることは当然です。
しかし、代表取締役という権限を得たとたん、変わってしまう方もいるのです。
代表取締役は「企業の目的・ビジョン」を真に達成しようと考えている方でないと務まりません。
企業が「その目的・ビジョン」を達成するための手段には様々なものがあります。
二人代表取締役には、得意なこと・苦手なこともあるでしょう。
ですから「手段」は違っていたとしても、お互いに「手段」には口出ししないことも重要です。
役員報酬の取り合いはしない。
最初にルールを決めておくことをオススメします。
ルールも様々あります。例えば、
・二人代表取締役の報酬は同額にする。
・二人代表取締役の報酬は1.5倍以上差がつかないようにする。
などなど、企業にあうルール、二人の代表取締役が納得するルールを決めましょう。
二人代表取締役は「二人代取が諸刃の剣である」ことを理解し、「最強の二人代取」になるべく、お互いに敬意をもって接する必要があります。
代表取締役を監督するとともに、盛り立てていく責任を負う取締役の皆様も、二人の代表取締役に対して均等に敬意を払って接する必要があります。
また、〇〇代表取締役派など派閥を作ってしまうことも企業にとっては愚の骨頂です。
株主から経営を任された取締役として、忘れてはならないことです。
このコラムを参照して戴いた企業様が、最強の二人代表取締役を導入して、強い企業が増えることを祈念いたしております。
なお、最強の二人代表取締役に関しては、今後もインタビューを続け、記事を更新していきます。
二人代表取締役になる場合には、株式も二人で持つときが多いと思います。
そんなときには、万一のときのために創業株主間契約の締結をオススメしています。