会社法違反事件(選任懈怠・登記懈怠)の過料を支払わなかったらどうなるのか?!


会社法違反事件(選任懈怠・登記懈怠)の『過料』を支払わなかったらどうなる』のでしょうか?!

過料相場や異議申立の手続については、記事「会社法違反事件の過料相場と異議申立手続」をご参照ください。

もくじ
  1. 会社法違反事件の過料の位置づけ
    1. 位置づけ
    2. 労役場に留置されることはあるのか?
    3. 延滞金は発生するのか?
  2. 長期不在等の理由で過料を支払えない場合どうすればよいか?!
  3. 執筆者紹介
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会社法違反事件の過料の位置づけ


位置づけ

会社法違反事件の過料は、行政上の秩序罰ですので「行政上の秩序の維持のために違反者に制裁として金銭的負担を課すもの」であり、「刑罰ではないので、刑法総論や刑事訴訟法の適用はなく、国の法律違反については、非訟事件手続法(119条以下)に基づき裁判所によって科され」ます(中原茂樹(2018)『基本行政法』日本評論社224頁)。

非訟事件手続法第121条(過料の裁判の執行)
 
  1. 過料の裁判は、検察官の命令で執行する。この命令は、執行力のある債務名義と同一の効力を有する。
  2. 過料の裁判の執行は、民事執行法(昭和五十四年法律第四号)その他強制執行の手続に関する法令の規定に従ってする。ただし、執行をする前に裁判の送達をすることを要しない。
  3. 刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)第507条の規定は、過料の裁判の執行について準用する。
  4. 過料の裁判の執行があった後に当該裁判(以下この項において「原裁判」という。)に対して前条第三項の即時抗告があった場合において、抗告裁判所が当該即時抗告を理由があると認めて原裁判を取り消して更に過料の裁判をしたときは、その金額の限度において当該過料の裁判の執行があったものとみなす。この場合において、原裁判の執行によって得た金額が当該過料の金額を超えるときは、その超過額は、これを還付しなければならない。
   
刑事訴訟法第507条
  検察官又は裁判所若しくは裁判官は、裁判の執行に関して必要があると認めるときは、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。

労役場に留置されることはあるのか?!

刑法に違反して刑罰として罰金や科料を課せられたときに、それらのお金が支払えないと労役場に留置されます(刑法第18条)。

刑法第18条(労役場留置)
 
  1. 罰金を完納することができない者は、一日以上二年以下の期間、労役場に留置する。
  2. 科料を完納することができない者は、一日以上三十日以下の期間、労役場に留置する。
  3. (以下略)

過料の裁判の執行は、民事執行法の手続きに従う(民執121Ⅱ)とされており、刑法上の刑罰とは異なるため、過料を完納することができなかった者が労役場に留置されることはありません。

延滞金は発生するのか?!

また、地方公共団体の条例や規則違反に対して地方公共団体の長が科す過料の場合と異なり(地方自治法14条3項・231条の3)、延滞金が徴収されることもありません。 

地方自治法第14

 
  1. (略)
  2. (略)
  3.  普通地方公共団体は、法令に特別の定めがあるものを除くほか、その条例中に、条例に違反した者に対し、2年以下の懲役若しくは禁錮、100万円以下の罰金、拘留、科料若しくは没収の刑又は5万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができる。

 

地方自治法第231条の3(督促、滞納処分等)

 
  1. 分担金、使用料、加入金、手数料、過料その他の普通地方公共団体の歳入を納期限までに納付しない者があるときは、普通地方公共団体の長は、期限を指定してこれを督促しなければならない。
  2. 普通地方公共団体の長は、前項の歳入について同項の規定による督促をした場合には、条例で定めるところにより、手数料及び延滞金を徴収することができる。
  3. 普通地方公共団体の長は、分担金、加入金、過料又は法律で定める使用料その他の普通地方公共団体の歳入(以下この項及び次条第一項において「分担金等」という。)につき第一項の規定による督促を受けた者が同項の規定により指定された期限までにその納付すべき金額を納付しないときは、当該分担金等並びに当該分担金等に係る前項の手数料及び延滞金について、地方税の滞納処分の例により処分することができる。この場合におけるこれらの徴収金の先取特権の順位は、国税及び地方税に次ぐものとする。
  4. 第一項の歳入並びに第二項の手数料及び延滞金の還付並びにこれらの徴収金の徴収又は還付に関する書類の送達及び公示送達については、地方税の例による。
  5. 乃至12(略)

長期不在等の理由で過料を支払えない場合どうすれよいか?!


過料の支払いがなかったからといってすぐに強制執行がなされることはありませんが、会社代表者の住所や会社の本店所在地に督促状が届いても長期間対応できないような特殊な事情がある場合は、前もって管轄の検察庁に連絡をいれておくと配慮してもらえることがあるようです(R4.2.20東京地方検察庁確認)。

この記事の執筆者


司法書士 南麻由実

 

平成22年司法書士登録

 

不動産登記・商業登記を勤務する10年間に多数経験。

独立後(司法書士みなみ事務所)、誰もが一度は直面する相続・後見・遺言にかかわる業務に特化。

現在、中小企業の社長様から「ご家族のご相談」から「会社法務のご相談まで」困りごとをいつでも相談できる「かかりつけ」として信任を得ている。



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