「信教の自由」を保護するため、宗教法人法などは次の二つの特例を設けています。
キッチリとおさえて、宗教法人であるメリットを享受しましょう。
もくじ | |
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以下、単に「法」と記載しているときは、「宗教法人法」を意味します。
非課税証明の申請・交付窓口 |
都道府県知事 |
非課税証明書を提出すれば、次の税金が非課税になります。
税目 | 根拠規定 | 非課税証明書の提出先 |
登録免許税 | 登録免許税法別表第三12 | 法務局 |
不動産取得税 | 地方税法第73条の4 | 県税事務所 |
固定資産税 | 地方税法第348Ⅱ③④⑨ | 市町村役場 |
次の要件にすべて該当する必要があります。
1 |
下記⑴~⑷のいずれかに該当(登録免許税法別表第三12) |
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⑴ |
宗教法人が専ら自己又はその包括する宗教法人の宗教の用に供する宗教法人法第3条(境内建物及び境内地の定義)に規定する境内建物の所有権の取得登記又は同条に規定する境内地の権利の取得登記【1】 |
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⑵ |
宗教法人の設置運営する幼稚園(学校教育法1)の校舎等の所有権の取得登記又は当該校舎等の敷地、当該学校の運動場、実習用地その他の直接に保育若しくは教育の用に供する土地の権利の取得登記 | |
⑶ |
自己の設置運営する保育所若しくは家庭的保育事業等の用に供する建物の所有権の取得登記又は当該建物の敷地その他の直接に保育の用に供する土地の権利の取得登記 | |
⑷ |
自己の設置運営する認定こども園の用に供する建物の所有権の取得登記又は当該建物の敷地その他の直接に保育若しくは教育の用に供する土地の権利の取得登記 |
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⑸ |
墳墓地(登録免許税法5⑩) |
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2 |
宗教法人法その他の法令に適合していること |
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※ 農地法5Ⅰに基づく農地転用許可、国土利用計画法、建築基準法6に基づく建築確認通知など |
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3 |
宗教法人法に定める手続を経て取得していること |
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4 |
宗教法人の内規(規則)に定める手続を経て取得していること |
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5 |
不動産所在地の県知事に申請し(登録免許税法施行規則4)、非課税証明書の交付を受けること |
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※ 上記1~4の要件を証明して交付申請します。 |
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6 |
非課税証明書を添付して登記申請すること |
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※ 上記5の非課税証明書を添付します。 |
【1】実際に宗教の用に供することが確認できてから証明が出ます。「将来、宗教で使う予定」という計画では不可
1 |
下記⑴~⑷のいずれかに該当(地方税法73の4) |
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⑴ |
宗教法人が専らその本来の用に供する宗教法人法第3条(境内建物及び境内地の定義)に規定する境内建物及び境内地 (同条Ⅰ②) |
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⑵ |
宗教法人が設置する幼稚園において直接保育の用に供する不動産(同条Ⅰ③) | |
⑶ |
宗教法人が設置する博物館(博物館法2Ⅰ)において直接その用に供する不動産(同条Ⅰ③) | |
⑷ |
墓地(同条Ⅲ) | |
2 |
宗教法人法その他の法令に適合していること |
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※ 農地法5Ⅰに基づく農地転用許可、国土利用計画法、建築基準法6に基づく建築確認通知など |
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3 |
宗教法人法に定める手続を経て取得していること |
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4 |
宗教法人の内規(規則)に定める手続を経て取得していること |
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5 |
不動産所在地の県知事に申請し、非課税証明書の交付を受けること |
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※ 上記1~4の要件を証明して交付申請します。 ※ 不動産取得税用の非課税証明書を発行しない都道府県もあるようです。その場合には、登録免許税用の非課税証明書の写しを提出します。 |
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6 |
不動産登記が完了したら、早めに非課税証明書を添付して非課税申告すること |
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※ 非課税申告をしなくても、県税事務所職員が現地調査をして課税・非課税を決定しますが、適正な非課税決定を得るために申告します。 ※ 上記5の非課税証明書を添付します。 |
1 |
下記⑴~⑷のいずれかに該当(地方税法348) |
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⑴ |
宗教法人が専らその本来の用に供する宗教法人法第3条(境内建物及び境内地の定義)に規定する境内建物及び境内地 (同条Ⅱ③) |
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⑵ |
宗教法人が設置する幼稚園において直接保育の用に供する不動産(同条Ⅱ⑨) | |
⑶ |
宗教法人が設置する博物館(博物館法2Ⅰ)において直接その用に供する不動産(同条Ⅱ⑨) | |
⑷ |
墓地(同条Ⅱ④) | |
2 |
宗教法人法その他の法令に適合していること |
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※ 農地法5Ⅰに基づく農地転用許可、国土利用計画法、建築基準法6に基づく建築確認通知など |
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3 |
宗教法人法に定める手続を経て取得していること |
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4 |
宗教法人の内規(規則)に定める手続を経て取得していること |
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5 |
不動産所在地の県知事に申請し、非課税証明書の交付を受けること |
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※ 上記1~4の要件を証明して交付申請します。 ※ 固定資産税用の非課税証明書を発行しない都道府県もあるようです。その場合には、登録免許税用の非課税証明書の写しを提出します。 |
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6 |
不動産登記が完了したら、非課税証明書を添付して非課税申告すること |
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※ 非課税申告をしなくても、市町村役場職員が現地調査をして課税・非課税を決定しますが、適正な非課税決定を得るために申告します。 ※ 上記5の非課税証明書を添付します。 |
宗教法人を当事者とする財産取得のチェック項目は多岐に渡ります。
不動産会社が仲介に入っている場合も含めて、契約締結前に、必ず司法書士に相談することをオススメします。
次のような特約が必要です。
●贈与・寄付される場合、現金で購入する場合【通常事務の決定】
規則に定められた方法に従って決定します。
規則に定めがなければ責任役員の定数の過半数で決定します(法19)。
●融資を受けて購入する場合【財産処分の決定】
規則に定められた方法に従って決定します。
規則に定めがなければ責任役員の定数の過半数で決定します(法23②)。
●贈与・寄付される場合、現金で購入する場合【通常事務】
規則に特別の規定がなければ、公告は必要ありません。
●融資を受けて購入する場合【財産処分の決定】
融資を受ける少なくとも1か月前に公告します(法23②)。
司法書士が都道府県知事に対して交付を申請します。
兵庫県の場合、申請してから10日~2週間で交付されます。
司法書士が宗教法人法及び宗教法人内規(規則)に定められた手続がすべて有効に実行されたことを確認したうえ、売買代金の支払いなどをご指示させていただきます。
滅多にお目にかかることはありませんが、宗教法人の所有する不動産については「公衆礼拝用登記」というものがあります。
公衆礼拝用登記をした場合
原則 | 差押できません(宗教法人法83)。 |
例外① | 宗教法人が自ら登記した先取特権、抵当権、根抵当権、質権の実行による場合 |
例外② |
私法上の債権以外の場合 例)税金などによる差押 |
例外③ | 宗教法人が破産した場合 |
確かに、公衆礼拝用登記をしていなくても、訴訟で敗訴しなければ差押はされません。
しかしながら、不意打ちの仮差押・仮処分が登記されてしまうリスクをなくすためには礼拝用登記を行なうべきです。後日勝訴して抹消しても、抹消された登記記録として公衆の目に触れるためです。
前所有者から新所有者たる宗教法人に所有権移転登記がされたときに、前所有者がした「公衆礼拝用登記」は登記官が職権で抹消してしまいます。宗教法人の合併による移転登記を除く(法70)。
よって、新所有者たる宗教法人において、もう一度「公衆礼拝用登記」を申請する必要があります。
県が発行してくれる「非課税証明書」とは異なり、「公衆礼拝用土地である旨の証明書」を発行してくれる公的機関はありません。
県に提出する非課税証明書を取得するための添付書類をもう一部用意しておいて、これを法務局に提出します。
また、宗教法人の代表役員が作成した上申書(法人の印鑑証明書つき)も添付します。
登記申請書 | |
登記の目的 | 公衆礼拝用登記 |
登記原因 | ー |
登記すべき事項
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表題部の土地は順位〇番に登記した宗教法人において礼拝の用に供する建物の敷地である。 |
申請人 | 新所有者たる宗教法人 |
添付書類 | 公衆礼拝用土地である旨の証明書 |
登録免許税 | 非課税 |
登記申請書 | |
登記の目的 | 公衆礼拝用登記 |
登記原因 | ー |
登記すべき事項
|
表題部の建物は順位〇番に登記した宗教法人において礼拝の用に供する建物である。 |
申請人 | 新所有者たる宗教法人 |
添付書類 | 公衆礼拝用建物である旨の証明書 |
登録免許税 | 非課税 |
通常の不動産取引の報酬に次の金額を加算して申し受けます。
業務の種類 | 司法書士の報酬・費用 | 実費 |
非課税証明書の取得 | +330,000円(税込) | 400円程度/通 |
写真撮影などで現地出張を行なったとき |
日当:調査に関する移動時間1時間ごとに 11,000円(税込) |
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公衆礼拝用建物及び敷地の登記 (非課税証明書取得も受託の場合) |
55,000円(税込) |
若手司法書士から質問を受けましたが、次の通達に基づき問題なく司法書士業務です。
昭和35年11月10日自治省行発第44号岩手県総務部長宛行政課長回答 | |
問 司法書士が宗教法人を設立しようとする者又は宗教法人からの依頼をうけ報酬を得て次のような業務を行なうことは、行政書士法第十九条第一項但し書に規定する「正当の業務に付随して行う場合」と解して良いか。
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答
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(地方自治制度研究会・編集/詳解行政書士法第4次改訂版/ぎょうせい/H28/429頁)
令和4年11月、当職は、総務省行政課に対して「上記通達が現在においても有効であるか」照会を行った。その結果、同課から「上記通達については(行政書士法などの改正があったとしても)現在も同様の解釈です。」との回答を得た。口頭による回答であるものの「(余人から)照会があれば、同趣旨の回答を行う」とのことである。
宗教法人
登記以外