役員欠格事由一覧(会社・社団・法人)


役員欠格事由とひと口に言っても、会社法人の種類によってバラバラです。整理して一覧にまとめました。実務に携わる専門家の方々、受験生の皆さん、ご参照ください。

もくじ
  1. 会社役員の欠格事由(身分)
  2. 会社役員の欠格事由(兼任禁止)
  3. 成年被後見人・被保佐人であることは欠格事由か?(各種法人ごと)
  4. 破産者であることは欠格事由か?(各種法人ごと)

会社役員の欠格事由(身分)


会社法331条(取締役)、同335条(監査役)は、次のとおり定めています。

⑴ 欠格事由に該当する場合には、新規に役員になることができません。

⑵ 役員が次の状態となった場合には、役員である資格を失い退任します。

事由 欠格か コメント
法人 欠格 持分会社の役員になることはできます。
成年被後見人 欠格ではないが、委任の終了事由

令和3年3月1日施行の改正会社法によって成年被後見人・被保佐人は、役員の欠格事由から除外されています【0】。

成年被保佐人 欠格ではない。委任の終了事由でもない。

一定の法律【1】に定められた罪によって刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなった日から

2年を経過していない者

欠格  

上以外の法令に違反し、禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者

(刑の執行猶予中の者を除く。)

欠格  

破産者【2】

欠格ではない

かつては欠格事由でしたが、破産者の再起を阻害するという理由から欠格事由から削除されました。

もっとも就任中の役員が破産すると委任の終了事由【3】となり(民653)、続投するためには、株主総会で再選される必要があります。

未成年者

欠格ではない

欠格ではありません。

会社役員になるということは、会社と委任契約を結ぶということです。

委任契約を結ぶためには、親権者の同意(民5Ⅰ)が必要です。

【0】会社法331条1項2号にあった「成年被後見人若しくは被保佐人」を取締役の欠格事由とする規定が削除され、同削除は令和3年3月1日に施行されています。

ただし、会社と役員との関係は「委任」契約であるところ、民法653条3号は次のとおり定めています。

 

第653条(委任の終了事由)
  委任は、次に掲げる事由によって終了する。
  1. 委任者又は受任者の死亡
  2. 委任者又は受任者が破産手続開始の決定を受けたこと。
  3. 受任者が後見開始の審判を受けたこと。

ややこしいですよね。これらを整理すると下表のとおりです。

 

  現在就任している場合 新たに選任すること
成年被後見人 委任の終了事由(民653③)に該当し、役員資格を喪失し退任する。 可能
被保佐人 委任の終了事由に該当しないので、役員資格はそのまま。 可能
被補助人 委任の終了事由に該当しないので、役員資格はそのまま。 可能

 

 

【1】一定の法律は次のとおりです。

会社法  
一般社団法人及び一般財団法人に関する法律  
金融商品取引法  
民事再生法  
外国倒産処理手続の承認援助に関する法律  
会社更生法  
破産法  

 

【2】破産手続開始の決定を受け、復権していない者 

破産法255条(復権)

次の事由のいずれかに該当すれば復権する。

①免責許可決定の確定

②全債権者の同意を得て破産手続廃止決定が確定したとき(破産法218Ⅰ)

③再生計画認可決定の確定

④破産手続開始決定後、10年間、詐欺破産罪の確定判決を受けなかったとき

破産法256条(復権の決定)

弁済その他の方法により破産債権者に対する債務の全部についてその責任を免れたときに、破産者が復権の申立てをしたとき、破産裁判所は復権の決定をしなければならない。

【3】役員と会社の契約関係は、委任契約です。

会社役員の欠格事由(兼任禁止)


業務執行をする取締役と、それを監督する監査役が兼任することは禁止されています。

また、親会社の監査役が子会社の取締役を兼任することも禁止されています。

受験時代、左の図を指して「取監取監Zは駄目」と覚えるよう指導されました。


成年被後見人・被保佐人であることは欠格か?


厚労省資料からの転載で、各法律の条文までを確認したわけではありません。実際に検討する際には各法律をあたってください。

  資格・業種・業務

欠格でない=〇

欠格である=×

 

株式会社 ○【1】
一般社団法人 ○【2】
医療法人(医療法) ▲【3】
社会福祉法人(社会福祉法) ▲【4】
宗教法人(宗教法人法) ▲【5】
学校法人(私立学校法) ▲【6】
NPO法人(特定非営利活動促進法) ▲【7】
特定目的会社(資産の流動化に関する法律) ▲【8】
商店街振興組合、商店街振興組合連合会(商店街振興組合法) ▲【9】
消費生活協同組合、消費生活協同組合連合会(消費生活協同組合法) ▲【10】
銀行(銀行法) ▲【11】
信用金庫、信用金庫連合会(信用金庫法) ▲【12】
森林組合(森林組合法) ▲【13】
漁業協同組合(水産業協同組合法) ▲【14】

投資法人(投資信託及び投資法人に関する法律)

▲【15】

遺留分等に係る合意の効力

(中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律)

弁護士(弁護士法7)○

司法書士(司法書士法5)○

土地家屋調査士(土地家屋調査士法5)○

不動産鑑定士(不動産の鑑定評価に関する法律16⑦→同施行規則21の2)▲

税理士(税理士法4)○

公認会計士(公認会計士法4)○

弁理士(弁理士法8)○

社会保険労務士(社会保険労務士法5)○

海事代理士(海事代理士法3⑤→同施行規則1)▲

行政書士(行政書士法2の2)○

宅地建物取引士(宅地建物取引業法17の4)○

社会福祉士・介護福祉士(社会福祉士及び介護福祉士法3①→同施行規則1の2)▲

マンション管理士(マンション管理の適正化の推進に関する法律41の3)○

 

建築士(建築士法8③→同施行規則1の3)▲

医師(医師法4①→医師法施行規則1)▲

歯科医師(歯科医師法4①→同施行規則1)▲

獣医師(獣医師法5Ⅰ①→同施行規則1の2)▲

薬剤師(薬剤師法5①→同施行規則1の2)▲

校長、教員(学校教育法9)○

保育士ほか(児童福祉法18の5→同施行規則6の2の2)▲

左記のとおり

【1】成年被後見人等を欠格事由としていた会社法331Ⅰ②は、令和3年削除された。

【2】成年被後見人等を欠格事由としていた一般社団法人及び一般財団法人に関する法律65Ⅰ②は令和3年削除された。

【3】医療法46の5Ⅴ→同46の4Ⅱ→医療法施行規則31の3の6。

【4】社会福祉法40Ⅰ②(評議員の欠格事由)→同44Ⅰ(役員の欠格事由)→社会福祉法施行規則2の6の2

【5】「心身の故障によりその職務を行うに当たつて必要となる認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者/代表役員、責任役員、代務者、仮代表役員又は仮責任役員となることができない。」宗教法人法22②

【6】「心身の故障のため役員の職務の適正な執行ができない者として文部科学省令で定めるもの」私立学校法38Ⅷ②

【7】特定非営利活動促進法20⑥→特定非営利活動促進法施行規則2の2

【8】資産の流動化に関する法律70Ⅰ②→資産の流動化に関する法律施行規則51の2

【9】商店街振興組合法45の3→商店街振興組合施行規則5の2

【10】消費生活協同組合法29の3Ⅰ②→消費生活協同組合法施行規則57の2

【11】銀行法7の2Ⅱ①→銀行法施行規則7の2

【12】信用金庫法34③→信用金庫法施行規則18の2

【13】森林組合法44の3Ⅰ②→森林組合法施行規則10の2

【14】水産業協同組合法34の4Ⅰ②→水産業協同組合法施行規則94の2

【15】投資信託及び投資法人に関する法律98②→投資信託及び投資法人に関する法律施行規則

破産者であることは欠格か?


破産を受けたことが役員の欠格事由になっていない法人の種類であっても、法人と役員との関係は「委任契約」であるため、破産を受けると委任契約の終了事由となります。破産を受けた役員は退任することになりますので、注意が必要です。

  資格・業種・業務

欠格でない=〇

欠格である=×

 

株式会社 ○【1】
一般社団法人 ○【2】
医療法人(医療法) ○【3】
社会福祉法人(社会福祉法) ○【4】
宗教法人(宗教法人法) ○【5】
学校法人(私立学校法) ○【6】
NPO法人(特定非営利活動促進法) ×【7】
特定目的会社(資産の流動化に関する法律) ×【8】 
商店街振興組合、商店街振興組合連合会(商店街振興組合法) ○【9】
消費生活協同組合、消費生活協同組合連合会(消費生活協同組合法) ×【10】
銀行(銀行法) ×【11】
信用金庫、信用金庫連合会(信用金庫法) ×【12】 
森林組合(森林組合法) ○【13】
水産業協同組合法 ○【14】 
投資法人(投資信託及び投資法人に関する法律) ×【15】

遺留分等に係る合意の効力

(中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律)

 

弁護士(弁護士法7④)×

司法書士(司法書士法5③)×

土地家屋調査士(土地家屋調査士法5③)×

不動産鑑定士(不動産の鑑定評価に関する法律16②)×

税理士(税理士法4②)×

公認会計士(公認会計士法4④)×

弁理士(弁理士法8⑪)×

社会保険労務士(社会保険労務士法5②)×

海事代理士(海事代理士法3)○

行政書士(行政書士法2の2②)×

宅地建物取引士(宅地建物取引業法17の4)○

社会福祉士・介護福祉士(社会福祉士及び介護福祉士法3)○

マンション管理士(マンション管理の適正化の推進に関する法律41の3)○

 

建築士(建築士法7、8)○

医師(医師法3、4)○

歯科医師(歯科医師法3、4)○

獣医師(獣医師法4、5)○

薬剤師(薬剤師法4、5)○

校長、教員(学校教育法9)○

保育士ほか(児童福祉法18の5)○

左記のとおり 

【1】破産を欠格事由とする旧商法254の2②は会社法には引き継がれなかった。会社法331参照。

【2】一般社団法人及び一般財団法人に関する法律65Ⅰ参照。

【3】医療法46の5Ⅴ→同46の4Ⅱ参照。

【4】社会福祉法40Ⅰ(評議員の欠格事由)→同44Ⅰ参照。

【5】宗教法人法22参照。

【6】私立学校法38Ⅷ①→学校教育法9→教育職員免許法10Ⅰ②③、教育職員免許法11ⅠⅡⅢ→公立学校教員のみ地方公務員法28Ⅰ①③参照。

【7】特定非営利活動促進法20①

【8】試算の流動化に関する法律70Ⅰ③

【9】商店街振興組合法45の3参照。

【10】消費生活協同組合法29の3Ⅱ

【11】銀行法7の2Ⅱ②

【12】信用金庫法34②

【13】森林組合法44の3Ⅰ参照。

【14】水産業協同組合法34の4Ⅰ参照。

【15】投資信託及び投資法人に関する法律98③

 

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