従業員→取締役→代表取締役と出世すると、何が変わるのか?!


会社に就職し出世すると『法律上の地位』は、次のように変わっていきます。

 

「従業員」→「取締役」→「代表取締役」

 

法律上の地位が違うと、何か違ってくるのでしょうか?解説します。

もくじ
  1. 従業員と役員
  2. 従業員兼務役員(使用人兼務役員)とは
  3. 取締役と代表取締役 

従業員と役員


代表取締役・取締役・監査役のことを役員と言います。

従業員・社員・労働者は同じ意味です。

 

従業員と役員の場合の違いは、以下のとおりです。

  従業員=社員=労働者 役員=取締役・監査役
会社との契約形態 雇用契約 委任契約
 
地位

労働基準法が適用される。

容易に解雇できない(労基法など)。

雇用保険・労災保険に加入できる。

定年まで働ける。

労働基準法が適用されない。

いつでも解任できる(民法651)。

雇用保険・労災保険に加入できない。

会社定款規定の1~10年の任期制。

再任には株主総会の承認が必要。

給与・報酬

従業員給与

下がりにくい。

残業代が出る。

賞与は税法上損金計上できる。

従業員給与・賞与は規定で決まる。

役員報酬

業績によって下がることがある。

残業代は出ない。

賞与は原則税法上損金計上できない。

役員報酬・役員賞与は株主総会で決める。

退職金・

退職慰労金

退職金

退職慰労金

責任追及

自身の違法行為のみ責任追及される。

他の取締役の違法行為も責任追及されうる

(会社法429、847など)。

会社登記

従業員の氏名が登記されることはありません。

役員の氏名は登記されます。

代表取締役の場合は住所も登記されます。

従業員兼務役員(使用人兼務役員)とは


従業員兼務役員(使用人兼務役員)は、「従業員の立場」と「役員の立場」の両方をもっている方です。

従業員 執行役員 従業員兼務役員(使用人兼務役員) 取締役 代表取締役
従業員 従業員と役員の両方の立場をもつ 役員
雇用契約

従業員部分:雇用契約

役員部分:委任契約

委任契約

【1】執行役員という法律用語はありませんが、近年導入が増えているため、便宜上追加しました。執行役員は、従業員の中のトップという意味で使用されています。

使用人兼務役員のメリット

次のようなメリットがあります。

使用人給与と役員報酬とを比較して使用人給与が大きい場合などには、雇用保険が適用されうる。

 

役員のうち使用人兼務役員になれない人

次の方は、「使用人兼務役員」になることができません(国税庁タックスアンサーNo.5205)。

中小企業は、太字部分のみご覧いただければ用が足りると思います。

1

 

同族会社の使用人のうち(職制上使用人としての地位のみを有する者に限ります。)のうち、次に掲げる全ての要件を満たす者で、その会社の経営に従事している者(税務上のみなし役員)
 

 

 

 

 

その会社の株主グループ【9】をその所有割合の大きいものから順に並べた場合に、その使用人が所有割合50%を超える第一順位の株主グループに属しているか、第一順位と第二順位の株主グループの所有割合を合計したときに初めて50%を超える場合のこれらの株主グループに属しているか、又は第一順位から第三順位までの株主グループの所有割合を合計したときに初めて50%を超える場合のこれらの株主グループに属していること。
  その使用人の属する株主グループの所有割合が10%を超えていること。
 

 

その使用人(その配偶者及びこれらの者の所有割合が50%を超える場合における他の会社を含みます。)の所有割合が5%を超えていること。
2 代表取締役、代表執行役【2】、代表理事【3】及び清算人【4】
3 副社長、専務、常務その他これらに準ずる職制上の地位を有する役員
4 委員会設置会社【5】の取締役
5 監査役、会計参与【6】、監事【7】
6 合名会社、合資会社及び合同会社の業務執行社員
7 同族会社の役員のうち所有割合【8】によって判定した結果、次の全ての要件を満たす役員
 

 

 

 

 

その会社の株主グループ【9】をその所有割合の大きいものから順に並べた場合に、その役員が所有割合50%を超える第一順位の株主グループに属しているか、第一順位と第二順位の株主グループの所有割合を合計したときに初めて50%を超える場合のこれらの株主グループに属しているか、又は第一順位から第三順位までの株主グループの所有割合を合計したときに初めて50%を超える場合のこれらの株主グループに属していること。
  その役員の属する株主グループの所有割合が10%を超えていること。
 

 

その役員(その配偶者及びこれらの者の所有割合が50%を超える場合における他の会社を含みます。)の所有割合が5%を超えていること。

【2】「代表執行役」は、大企業が導入する指名委員会等設置会社のトップです。

【3】「代表理事」は、社団・財団のトップです。

【4】「清算人」は、解散した会社の清算手続中のトップです。

【5】委員会設置会社は、指名委員会等設置会社と同じ意味です。

【6】「会計参与」は、会計書類作成専門の役員で、税理士のみが就任できます。

【7】「監事」は、社団・財団における監査役のことです。

【8】「所有割合」とは、次に掲げる場合に応じて、それぞれ次に定める割合をいいます。

1 その会社がその株主等の有する株式又は出資の数又は金額による判定により同族会社に該当する場合 その株主グループの有する株式の数又は出資の金額の合計額がその会社の発行済株式又は出資(その会社が有する自己の株式又は出資を除きます。)の総数又は総額のうちに占める割合
2 その会社が一定の議決権による判定により同族会社に該当することとなる場合 その株主グループの有する議決権の数がその会社の議決権の総数(議決権を行使することができない株主等が有するその議決権を除きます。)のうちに占める割合
3 その会社が社員又は業務執行社員の数による判定により同族会社に該当する場合 その株主グループに属する社員又は業務執行社員の数がその会社の社員又は業務執行社員の総数のうちに占める割合

【9】「株主グループ」とは、その会社の一の株主等及びその株主等と親族関係など特殊な関係のある個人や法人をいいます。

取締役と代表取締役


取締役 代表取締役
株主総会で選ばれる。

取締役会がある会社は、取締役会で選ばれる。

取締役会がない会社は、株主総会か取締役の互選で選ばれる。

会社外部の第三者との契約などを締結できない。

会社外部の第三者との契約などを締結できる。

契約書は常に代表取締役が押印する。

代表取締役がすべて決めるわけではない。

契約の重要度により取締役会承認などを要する。

使用人兼務役員になることができる。

使用人給与が役員報酬より大きいなど要件を満たせば、雇用保険適用の対象となる。

 

使用人兼務役員になることはできない。 

雇用保険の適用対象外。

 

健康保険の適用対象。

厚生年金の適用対象。

健康保険の適用対象(取締役と同じ)。

厚生年金の適用対象(取締役と同じ)。

法人が融資を受けるときでも、連帯保証人になるように言われることは少ない。 法人が融資を受けるときには、連帯保証人になるようほぼ確実に言われる。
法人が融資を受けるときに、取締役個人の信用情報等が照会されることがある。 法人が融資を受けるときに、代表取締役個人の信用情報等が照会されることが多い。

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