有限会社の役員に関する登記


有限会社の取締役・監査役に関する登記は、株式会社の取締役会非設置会社のものと、だいたい同じです(異なるところもあります。)。

この記事では、有限会社の取締役・監査役・代表取締役の登記について、解説しています。

もくじ
  1. 有限会社の特徴
  2. 有限会社と株式会社の役員登記(比較)
  3. 有限会社において取締役を選任する手続
  4. 有限会社における代表取締役に関する登記
    1. 基本
    2. 代表取締役の資格及び氏名抹消登記
  5. 標準的な所要時間
  6. 司法書士の報酬・費用
  7. 執筆者の紹介
  8. 人気の関連ページ

〔凡例〕

この記事では、次のとおり略記します。

  • 有:有限会社法【廃止日:平成18年5月1日】
  • 整備法:会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律【施行日:平成18年5月1日】
  • 会:会社法【施行日:平成18年5月1日】 
  • 商登:商業登記法
  • 商登規:商業登記規則

有限会社の特徴


有限会社の特徴のうち、役員に関連する部分は次のとおりです。

有限会社の特徴のすべてについては、記事「新しく設立できないけれど実は優れもの?有限会社の特徴」をご参照ください。

 

必ず非公開会社(整備法9条)

法律により、全ての株式について、株式の譲渡制限規定があるものとみなされます。

有限会社は、株式の譲渡制限を撤廃することはできません(整備法9Ⅱ)。

 

機関設計に制限(整備法17条)。

株主総会、取締役、監査役のみ設置できます。

取締役会、会計参与、監査役、監査役会、会計監査人、監査等委員会、指名委員会等の設置はできません。

 

取締役、監査役に任期なし(整備法18条)。

一度就任登記すれば、役員に住所・氏名の変更、辞任・解任・死亡などが発生しない限り、基本的に役員変更登記は不要です。

 

監査役は、会計監査限定(整備法24条)

監査役は、①取締役の業務執行を監督する権限と、②会計を監査する権限の両方を持っているのが原則です。

有限会社の監査役は、②会計監査の権限しか持っていません。

株式会社は定款に定めれば、会計監査権限のみにすることができます。

有限会社と株式会社の役員登記(比較)


  有限会社 株式会社
取締役・監査役の選任機関 定時株主総会、臨時株主総会どちらでも可能。 定時株主総会、臨時株主総会どちらでも可能。
定足数 議決権行使可能株主の議決権の過半数を有する株主出席 議決権行使可能株主の議決権の過半数を有する株主出席
決議要件 出席株主の議決権の過半数 出席株主の議決権の過半数
席上就任承諾 可能【1】 可能
役員の任期 定款に定めない限り任期無制限。従って、原則として任期満了による退任、重任の登記が発生しない。 取締役2年、監査役4年。非公開会社は定款に定めることで10年まで伸長可能。
役員の登記事項

取締役・監査役の住所氏名。

代表取締役は氏名のみ。

取締役、監査役は氏名のみ。

代表取締役は住所氏名。

代表取締役の登記

会社を代表しない取締役が存在する場合のみ、代表取締役を登記できる。

取締役全員を代表取締役として登記することも可能。

【1】席上就任承諾があった場合において、株主総会議事録と就任承諾書を一体化させるときの「株主総会議事録」の記載例

  第1号議案 取締役1名選任の件

議長は、今般取締役を追加選任する必要がある旨を述べ、その選任を議場に諮ったところ、次の通り可決確定した。

神戸市灘区鹿ノ下通二丁目4番15号(※)

 取締役 甲野太郎(新任)

なお、被選任者は席上、即時就任を承諾した。 

(※)有限会社では、取締役・監査役の住所も必須です。登記事項となるためです。

有限会社において取締役・監査役を選任する手続


<事例>

有限会社あなまち商事が、甲野太郎を取締役に選任する場合の手続は次のとおりです。

会社法(実体の要件) 商業登記法(添付書面、作成すべき書面)
有限会社あなまち商事が株主総会を開催し、甲野太郎を取締役に選任することを決議する(会329)
  • 株主総会議事録(商登46Ⅱ)
  • 株主リスト(商登規61)
甲野太郎が取締役に就任することを承諾(会330→民法643)。
  • 就任承諾書(商登54Ⅰ)
  • 本人確認書類(運転免許証の写し)又は印鑑証明書
 
  • 特例有限会社役員変更登記申請書(商登17)
  • 委任状(商登18)

有限会社における代表取締役に関する登記


基本

  1. 有限会社の代表取締役は、氏名のみが登記事項です。
  2. 代表取締役の選定方法は、株式会社の取締役会非設置会社と同じです。すなわち、①定款に直接代取の氏名を記載するか、②株主総会決議、③取締役による互選です。
  3. 有限会社の代表取締役の登記は「会社を代表しない取締役が存在する場合」にのみ申請することができます。
    >「定款・株主総会で代取を選定した場合は、選定された代表取締役以外の取締役の代表権が制限される」という発想が背景にあります。

代表取締役の資格及び氏名抹消登記

<事例>有限会社の取締役全員を代表取締役にした場合の登記

有限会社あなまち商事で、以下のような役員登記がされている場合において、乙野二郎を追加で代表取締役に選定したときは、どのような登記を申請すべきでしょうか?

 取締役 甲野太郎(住所略)

 取締役 乙野二郎(住所略)

 代表取締役 甲野太郎

 

特例有限会社の代表取締役の登記は会社を代表しない取締役が存在する場合に限って認められる。

→取締役の全員が代表取締役になると、会社を代表しない取締役が存在しないことになります。

→「代表取締役 甲野太郎の資格及び氏名抹消」登記を申請することになります(昭和31年12月4日民事甲2740号民事局長回答)。

標準的な所要時間


 業務の種類 期間※
役員変更登記 3週間

※打合わせ完了→書類作成→登記申請→登記完了までの期間の目安です。

司法書士の報酬・費用


  • こちらに記載のない登記につきましても、全ての登記に対応可能です。記載のない場合、お問い合わせをお願いいたします。 
  • 手数料には、基本的な議事録などの作成報酬を含みます。議事録はA4一通5,500円(税込)で計算しております。
  • 顧問契約を締結いただいている場合、割引きがございます。
  • 代表取締役の友好的ではない交代やM&Aなどの際には、後日、議事が取消・無効などとならないよう司法書士にご用命くださいますようお願いいたします。
業務の種類 司法書士の手数料 実費
役員変更
  • 役員変更登記申請
  • 申請前の登記簿調査
  • 議事録等作成
  • 会社登記事項証明書取得(1通)
45,100円(税込) 11,100円(資本金1億円まで)
取締役の住所変更  
  • 役員変更登記申請
  • 申請前の登記簿調査
  • 議事録等作成
  • 会社登記事項証明書取得(1通)

16,500円(税込)

11,100円(資本金1億円まで)

印鑑届出(代表取締役交代のとき)
  • 印鑑届出
  • 印鑑カード交付申請
  • 印鑑証明書交付申請

12,100円(税込)

450円

株主総会招集通知の作成・発送代行及び報告
 

33,000円(税込)~

に発送先1名様ごとに1,100円を加算

 
株主総会シナリオ・想定問答集作成
  55,000円(税込)~  
株主総会立会 
  55,000円(税込)~  

執筆者の紹介


司法書士 河村 賢一(かわむら・けんいち)

あなまち司法書士事務所在籍。

中央大学・法学部・法律学科(国際政治学ゼミ)卒業。

 

平成28年埼玉と東京の司法書士事務所に勤務。徹底的に不動産登記を学ぶ。

令和4年8月神戸へ転居と同時に「あなまち司法書士事務所」に入所

令和4年11月司法書士試験合格

令和5年2月司法書士登録(組織再編、スタートアップ資金調達を担当)

令和5年11月開業。同時に「あなたのまちの司法書士事務所グループ」へ参画。

特技:英語原典の推理小説を読むこと、独学で英検準1級を取得。



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