取締役会の大切な役割と効果的運営方法


「これまで身内だけでやってきたけれど、今後は、外部の者(親族以外や従業員)を取締役に入れてバリバリやっていきたい。外部の者を入れるに当たっては、法令遵守でやっていきたいから、色々教えて欲しい」というご依頼を多く受けます。

そんなとき最初にご説明するのが「取締役会を実体のあるもの、意義あるものにすること」です。

 

ここでは、

  1. 取締役会メンバーに外部の方(親族以外や従業員)を招く場合
  2. 取締役会のない会社が、取締役会設置会社へ移行する場合(移行を検討する場合)

に取締役会を意義あるものにするためのノウハウをお伝えします。

もくじ
  1. 取締役会を設置する意義
    1. アクセルとしての役割
    2. ブレーキとしての役割
    3. アクセル・ブレーキが十分機能するための仕組み
  2. 一般的な取締役会の流れ
  3. 効果的な取締役会の運営方法

取締役会を設置する意義


経営を加速させる「アクセル」としての役割

複数人数で経営することによるメリットは次のとおりです。

  1. 一人で考えるよりも、三人四人で議論する方が良いアイデアが出ることが多い。
  2. 各部門責任者に取締役を選任し、分業(業務分掌)することで、ビジネスをスピードアップできる。
  3. 年代の違う取締役が参加することで、後継者を育てることもできる。

良い点ばかりのように見えますが、このままでは、会社は業務分掌によってバラバラになります。

そこで、業務分掌によってバラバラになった各部門を連携させるための仕組みが必要です。その仕組みが取締役会です。取締役会は、会社の経営を複数で行なうことによるメリットを十分に発揮できるようにするための会社経営の仕組みです。

危ないときにストップをかける「ブレーキ」としての役割

全取締役が集まって、取締役会で行なう業務(取締役会の権限)は次の4つです。

  1. 各取締役からその業務執行の報告を受ける(会363Ⅱ)
  2. 報告を受けて、他の取締役は質問し、疑問点を解消することで『業務執行の監督』を行なう(会362Ⅱ②)
  3. 会社法に定められた『重要な業務執行の決定』(会362Ⅳ)
  4. 代表取締役ほか業務執行取締役の選定及び解職(会362Ⅱ③)

これらの権限を通じて、取締役会は、代表取締役や業務執行取締役の監督を行ない、適切なブレーキ役をも果たすのです。

会社法第362条(取締役会の権限等)

  1. 取締役会は、すべての取締役で組織する。
  2. 取締役会は、次に掲げる職務を行う。
    1. 取締役会設置会社の業務執行の決定
    2. 取締役の職務の執行の監督
    3. 代表取締役の選定及び解職
  3. 取締役会は、取締役の中から代表取締役を選定しなければならない。
  4. 取締役会は、次に掲げる事項その他の重要な業務執行の決定を取締役に委任することができない。
    1. 重要な財産の処分及び譲受け
    2. 多額の借財
    3. 支配人その他の重要な使用人の選任及び解任
    4. 支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止
    5. 第676条第1号に掲げる事項その他の社債を引き受ける者の募集に関する重要な事項として法務省令で定める事項
    6. 取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務並びに当該株式会社及びその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備
    7. 第426条第1項の規定による定款の定めに基づく第423条第1項の責任の免除
  5. 大会社である取締役会設置会社においては、取締役会は、前項第6号に掲げる事項を決定しなければならない。

アクセルとブレーキが十分に働くための工夫

取締役会によるアクセル機能とブレーキ機能を十分に働かせるためには、定期的に会議を開くことが重要です。

 

会社法では「業務執行を行なう取締役は、3か月に1回以上、自己の職務の執行の状況を取締役会に報告しなければならない。」との規定があり(会社法363条2項)、これが「取締役会の開催頻度は最低3か月に1回以上」とされている理由です。

 

私の経験によれば、法律が定めるのは最低限ですので、定期的な取締役会は、少なくとも月一回以上は開くべきだと考えます。人は場に慣れることによって、自由に発言することができるようになるからです。

 

また、緊急事態が発生したときに、臨時の取締役会を開催できることは当然です。

一般的な取締役会の流れ


リアルに集まって開催する取締役会は、次のとおりです。

取締役会のオンライン開催、書面決議(会370)、書面報告(会372)については、コチラをご参照ください。

取締役会の招集決定

会社法第366条(招集権者)

  1. 取締役会は、各取締役が招集する。ただし、取締役会を招集する取締役を定款又は取締役会で定めたときは、その取締役が招集する。
  2. 前項ただし書に規定する場合には、同項ただし書の規定により定められた取締役(以下この章において「招集権者」という。)以外の取締役は、招集権者に対し、取締役会の目的である事項を示して、取締役会の招集を請求することができる。
  3. 前項の規定による請求があった日から5日以内に、その請求があった日から2週間以内の日を取締役会の日とする取締役会の招集の通知が発せられない場合には、その請求をした取締役は、取締役会を招集することができる。

取締役会の招集通知

通知は書面で行なう必要はなく、電話やメールで通知しても問題ありません。

取締役全員に通知する必要があります。

業務監査権限ある監査役の場合には、監査役にも通知が必要です。

会社法第368条(招集手続)

  1. 取締役会を招集する者は、取締役会の日の一週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前までに、各取締役(監査役設置会社にあっては、各取締役及び各監査役)に対してその通知を発しなければならない。
  2. 前項の規定にかかわらず、取締役会は、取締役(監査役設置会社にあっては、取締役及び監査役)の全員の同意があるときは、招集の手続を経ることなく開催することができる。

取締役会の開催

  • 取締役会の議長は、通常は定款で「代表取締役がつとめる」となっております。定款に定めがないときは取締役会ごとに決めれば結構です。貴社の定款を確認ください。
  • 取締役会の決議は、議決に加わることができる取締役の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)が出席し、その過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)をもって行う(会社法369Ⅰ)。
  • 決議について特別の利害関係を有する取締役は、議決に加わることができません(会369Ⅱ)。

議事録の作成

取締役会の議事については、法務省令(会社法施行規則101Ⅳ)で定めるところにより、議事録を作成する必要があります(会社法369Ⅲ)。

取締役・監査役への回覧&押印

議事録の回覧を受けた取締役は、ご自身が反対した議案に反対取締役としてご自身の名前が記載されているかチェックし、場合によっては修正を依頼します。取締役会の決議に参加した取締役であって議事録に異議をとどめないものは、その決議に賛成したものと推定され(会社法369Ⅴ)、その議決が後日問題となった場合には、取締役個人として責任追及を受ける可能性があるからです。

取締役会議事録が書面をもって作成されているときは、出席した取締役及び監査役は、これに署名し、又は記名押印しなければなりません(会社法369Ⅲ)。

議事録の保管

取締役会設置会社は、取締役会の日から10年間、会社本店に取締役会議事録を保管する必要があります(会社法371Ⅰ)。

議事録閲覧請求への対応

株主、債権者から取締役会議事録の閲覧を受けたときは、適切に対応する必要があります(会社法371Ⅱ~Ⅵ)。こちらの記事「会社が書類の提出を求められたときの対応(はじめに)」もご参照ください。

効果的な取締役会の運営方法


出来るだけストレスなく、開催することを目指して、次のような方法をご提案します。

 

月一度の定期開催日を決めておく

次回の取締役会開催日時は、一般的には、会議の最後に決めたり、開催直前になってから決めることが多いですが、これは無駄なことで、ストレスになります。

よって、月一度開催するならば、第1月曜日午前8時からなど開催日時を固定してしまいましょう。

議題・議案の事前通知

取締役会メンバーが、会議が始まってから、議題(何について話し合うか)や議案(こうしたいという案)を知るようでは、各自議案に対して検討する時間が足りません。

そうなってくると、会議は空転してしまいます。

議題や議案は、○日前までに通知するようルール作りをしましょう。

議事録にチェック機能を持たせる

次のような形式の議事録を推奨しています。

積み残し課題の担当者欄・期限欄を設けることで、実効性は抜群です。

   取締役会議事録  
  日時 令和3年5月10日午前8時~午前9時30分  
  場所 当社本店社長室      
  出席 A社長、B取締役、C取締役、D取締役、E監査役  
       
  議  事 担当取締役 期限  
  報告事項1:○○○○      
    (発言者名) (発言概要)      
             
  議題1:定時株主総会招集の件      
   

議案:当社第○回定時株主総会を次の要領で開催する。

日時:令和○年○月○日午前○時

場所:当社本店大会議室

     
    (発言者名) (発言概要)      
    多数決結果 全員一致で可決確定      
             
  議題2:定時株主総会に提出する決算に関する件        
    議案:添付の決算書のとおり      
    A社長 思っていたよりも○○の数字が大きいが?      
    B取締役 顧問税理士に確認し、追って報告します B取締役 5/13  
    A社長 回答あるまで審議は延期してよいか?      
    全員 異議なし      
             
  議案3:○○に関する件      
    議案:・・・・・      
    C取締役 これを進めるには○○という問題点がある。      
    A社長 ・・・      
    D取締役 ・・・      
    多数決結果 C取締役を除く全取締役の承認により可決      
             
      あなまちサムライサポート株式会社・取締役会   
  令和3年5月10日        
      議長代表取締役 A (法人印)      
      (議事録作成者)      
      出席取締役 B       
      出席取締役 C       
      出席取締役 D       
      出席監査役 E       
             

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