取締役会設置会社と非設置会社の違い(取締役会設置や取締役会廃止のタイミング)


取締役会がある会社のことを「取締役会設置会社」といい(会2⑦)、取締役会がない会社のことを「取締役会非設置会社」といいます。

取締役会設置会社と非設置会社で、どんな違いがあるのでしょうか?

取締役会設置のタイミング、取締役会廃止のタイミングについてもお知らせします。

もくじ
  1. 取締役会設置会社/非設置会社の違い
  2. 取締役会設置のタイミング
  3. 取締役会廃止のタイミング
  4. 司法書士の報酬・費用

〔凡例〕この記事では、次のとおり略記します。

会327Ⅰ①:会社法第327条第1項第1号

取締役会設置会社/非設置会社の違い


概要は次のとおりです。

左に取締役会設置会社/右に非設置会社について書いています。

  • 取締役会の開催頻度、招集手続などが面倒ではある。/面倒は少ない。
  • 役員が最低4名必要(人数ぎりぎりなら後任選びも大変)。/少人数ですむ。
  • 株主総会の招集も手間がかかる。/手間は少ない。
  • 株主総会の権限は小さい。/大きい。
  • 株主総会で株主から不意打ちされる可能性が小さい。/不意打ちされる可能性がある。
  • 大きい会社のように見える。/小さな会社のように見える。

 

もう少し詳しく説明しますと下表のとおりです。

  取締役会設置会社 取締役会非設置会社
取締役会
  • あり
  • 3か月に1回以上の定期開催が必要(会363Ⅱ)
  • ない
  • 法律上、開催頻度に関する規制はない。
業務執行の決定
  • 取締役会に集まって行う(会362Ⅱ)
  • 取締役会の招集手続が手間(会368)
  • 取締役会の決議省略もできるが全員一致が必要(会370)
  • 取締役会の決議は、取締役の過半数出席、出席取締役の過半数の同意で行う(同369Ⅰ)

 

  • 集まって決議する必要がない(書面、メールなどでも決議可能)。
  • 招集手続が不要。
  • 全員一致でなくても書面、メールで決議が可能。
  • 取締役過半数の一致(会348Ⅱ)

 

取締役へ決定を委任できる事項
  • 少ない。取締役会設置会社は、重要財産処分及び譲受け多額の借財をすることの決定を各取締役に委任できない(会362Ⅳ)。【0】
  • 多い。取締役会非設置会社は、重要財産処分及び譲受け多額の借財をすることの決定を各取締役に委任できる(会348Ⅲ)。【0】
監査役
  • 必要(会327Ⅱ)
  • 任意
必要人数

 

  • 取締役:3名
  • 監査役:1名

 

  • 取締役:1名
株主総会の招集

 

  • 株主総会の1週間前(公開会社は2週間前)(会299Ⅰ)
  • 書面で招集必要(会299Ⅱ)
  • 定時総会招集通知には、事業報告・計算書類の添付必要(会437)

 

  • 株主総会の1週間前。定款でさらに短縮可能(会299Ⅰ)
  • 電話や口頭でも可能。書面による議決権行使を認める場合には書面で招集必要(会299Ⅱ)
  • 定時総会招集通知でも、事業報告・計算書類の添付不要。ただし書面決議を認めるときは必要(会301、302)
株主総会の権限

 

  • 法律で決められた事項(役員の選任解任、決算承認、定款変更など)と、定款で定められた事項のみ決議できる(会295Ⅱ)。

 

  • 株式会社に関する一切の事項について決議をすることができる(会295Ⅰ)。
株主提案権

 

  • 「議題」を提出できる株主に制限がある。「議題」提出時期は総会の8週間前(会303ⅡⅢ)。【1】

 

  • 「議題」を提出できる株主に制限なし(株主であれば誰でも)。「議題」提出時期は総会当日も可能(会303Ⅰ)【1】

【0】会社が各取締役に決定を委任できる事項=○、できない事項=×

 

取締役会

設置会社

取締役会

非設置会社

  会362Ⅳ 会348Ⅲ
重要な財産の処分及び譲受け ×
多額の借財 ×
支配人その他の重要な使用人の選任及び解任(支配人の選任及び解任) × ×
支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止(支店の設置、移転及び廃止) × ×
第676条第1号に掲げる事項その他の社債を引き受ける者の募集に関する重要な事項として法務省令で定める事項=社債に関する事項 ×
第298条第1項各号(第325条において準用する場合を含む。)に掲げる事項=株主総会の日時・場所・目的事項ほか

×

会298Ⅳ

×
取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務並びに当該株式会社及びその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備 × ×
第426条第1項の規定による定款の定めに基づく第423条第1項の責任の免除 × ×

【1】株主提案権については、次のとおり

  取締役会設置会社 取締役会非設置会社
  公開会社 非公開会社 非公開会社
議題提出【2】
  • 「1/100以上議決権OR議決権300個以上」を「6か月間」保有の株主
  • 株主総会の8週間前

(会303Ⅱ)

  • 「1/100以上議決権OR議決権300個以上」を保有の株主
  • 株主総会の8週間前

(会303Ⅲ)

  • 一株でも保有している株主
  • 株主総会当日提出可能

(会303Ⅰ)

議案提出【3】
  • 一株でも保有している株主であれば、株主総会当日提出も可能(会304)

【2】「議題」とは、話合うテーマです。

【3】「議案」とは、予め決められた議題(テーマ)に関して、会社提案への対案を示すことです。

株主提案権についての詳細は、記事「株主提案権と修正動議」や、記事「株主総会で出た『株主提案』『動議』への適切な対応方法」をご参照ください。

取締役会設置のタイミング(非設置から設置へ)


法律上設置が強制される場合

次の場合には、取締役会の設置が強制されます。

  • 公開会社(譲渡制限のない株式を発行している会社。会社法327Ⅰ①)
  • 監査役会設置会社(会社法327Ⅰ②)
  • 監査等委員会設置会社(会社法327Ⅰ③)
  • 指名委員会等設置会社(会社法327Ⅰ④)

事業規模が大きくなってきた(事業の多角化が進んだ)場合

取締役会を設置して、定期的に各部門を統括する取締役から報告を受けるという形で、大きな会社は運営されています。

事業の多角化が進んだ、又はこれから進めようという会社には有効です。

情報漏れ予防をすべき場合

取締役会非設置では、重要事項の決定が株主総会の決議事項となっています。したがって、次のような場合には、情報漏れを防ぐために、取締役会を設置することが多いです。

 

  • 株主数が増えてきた場合
  • 投資家(株主)が競合他社(ライバル)の支援も始めた
  • 銀行・取引先が株主
  • 利益が相反する株主が増えてきた

 

物言う株主がいる場合

株主総会での株主からの不意打ち質問を予防すべき場合

取締役会廃止のタイミング(設置から非設置へ)


事業縮小を行っていく場合

取締役会を廃止することで、コストを減らすことが可能です。

株主が社長お一人になった場合

株主から不意打ち(株主総会当日の議題提案等)を受ける可能性がなくなりますので、動機の一つになります。