例えば、財団である医療法人(医療法人財団)は、2期連続純資産額が300万円を下回ったときには解散しなければならないのでしょうか?!
この解散事由は、一般財団法人の解散事由としては明記されています(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律202)が、医療法人の解散事由としては記載されていません(医療法55)。
では、財団である医療法人はどうなるのでしょうか?!
なかなかマニアックな論点ですが、ウェブや法律書を検索しても明確な答えが見つけられませんでしたので、解説します。
もくじ | |
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〔凡例〕このページでは、以下の略記を行います。
一般法人法:一般社団法人及び一般財団法人に関する法律
医療法人を大きく分けると、医療法人「社団」と医療法人「財団」に分かれます。
近年、医療法ではなく、一般法人法に基づき設立された「医療一般社団法人」や「医療一般財団法人」も出てきていますが、まだまだ少数ですので、この記事では、医療法人社団と医療法人財団について解説しています。
医療法第39条 | |
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このコラムでは、論点がズレるため詳しく説明しませんが、もう少し医療法人の種類について確認したい方は、記事「法人である医療機関の全種類を分類&解説」をご参照ください。
また、コラム「医療法人を設立する際、正式名称に『社団』『財団』は必要なのか?!」もご参照ください。
医療法には「医療法人には、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律を準用する」旨を定めた条項は存在しません。
医療法を「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」で検索すると次のような条文が準用されています。
医療法第46条の3の6 | |
一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成18年法律第48号)第57条の規定は、医療法人の社員総会について準用する。(以下略) |
医療法第46条の4の7 | |
一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第193条の規定は、医療法人の評議員会について準用する。(以下略) |
医療法第46条の5の4 | |
一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第72条及び第74条(第4項を除く。)の規定は、社団たる医療法人及び財団たる医療法人の役員の選任及び解任について準用する。(以下略) |
その他、医療法は、多くの場面で一般法人法を準用しています。
ところが、医療法は、解散事由については一般法人法を準用していません。
医療法は、解散事由について一般法人法を準用していないどころか、医療法独自の解散事由を定めています。
医療法第55条 | |
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「財団たる医療法人」と「普通の一般財団法人」の解散事由を並べて比較すると分かりやすいかもしれません。
普通の一般財団法人の解散事由が、財団たる医療法人にも適用されなら、重なる部分もない筈です。
財団たる医療法人の解散事由 | 普通の一般財団法人の解散事由 |
(医療法) | (一般社団法人及び一般財団法人に関する法律) |
定款で定めた存続期間の満了(202Ⅰ①) | |
寄附行為をもつて定めた解散事由の発生(55Ⅲ①) | 定款で定めた解散の事由の発生(202Ⅰ②) |
目的たる業務の成功の不能(55Ⅲ②→55Ⅰ②) |
基本財産の滅失その他の事由による一般財団法人の目的である事業の成功の不能(202Ⅰ③) |
他の医療法人との合併(合併により当該医療法人が消滅する場合に限る。次条第1項及び第56条の3において同じ。)
(55Ⅲ②→55Ⅰ④) |
合併(合併により当該一般財団法人が消滅する場合に限る。)(202Ⅰ④) |
破産手続開始の決定(55Ⅲ②→55Ⅰ⑥) |
破産手続開始の決定(202Ⅰ⑤) |
設立認可の取消し(55Ⅲ②→55Ⅰ⑦) | |
第261条第1項又は第268条の規定による解散を命ずる裁判(202Ⅰ⑥) | |
一般財団法人は、前項各号に掲げる事由のほか、ある事業年度及びその翌事業年度に係る貸借対照表上の純資産額がいずれも300万円未満となった場合においても、当該翌事業年度に関する定時評議員会の終結の時に解散する。
(202Ⅱ) |
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新設合併により設立する一般財団法人は、前項に規定する場合のほか、第199条において準用する第223条第1項の貸借対照表及びその成立の日の属する事業年度に係る貸借対照表上の純資産額がいずれも300万円未満となった場合においても、当該事業年度に関する定時評議員会の終結の時に解散する。(202Ⅲ) | |
みなし解散(203) |
ついでに「社団たる医療法人」と「普通の一般社団法人」の解散事由も並べて比較しておきます。
社団たる医療法人の解散事由 | 普通の一般社団法人の解散事由 |
(医療法) | (一般社団法人及び一般財団法人に関する法律) |
定款で定めた存続期間の満了(148①) | |
定款をもつて定めた解散事由の発生(55Ⅰ①) | 定款で定めた解散の事由の発生(148②) |
目的たる業務の成功の不能(55Ⅰ②) | |
社員総会の決議(55Ⅰ③) | 社員総会の決議(148③) |
他の医療法人との合併(合併により当該医療法人が消滅する場合に限る。次条第1項及び第56条の3において同じ。) (55Ⅰ④) |
合併(合併により当該一般社団法人が消滅する場合に限る。)(148⑤) |
社員の欠亡(55Ⅰ⑤) |
社員が欠けたこと(148④) |
破産手続開始の決定(55Ⅰ⑥) |
破産手続開始の決定(148⑥) |
設立認可の取消し(55Ⅰ⑦) | |
第261条第1項又は第268条の規定による解散を命ずる裁判(148⑦) | |
みなし解散(149) |
「医療法人は、医療法55条所定の解散事由のほか、医療法人社団においては定款に基づく解散事由、医療法人財団においては寄附行為に基づく解散事由のいずれかの発生により解散し」とのみ記載があります。
「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律の解散事由が準用される」旨の記載はありません。また「純資産額300万円2期下回ると解散事由となる」旨の記載もありません。
医療法人の設立認可は、各都道府県が行います。そこで各都道府県はモデル定款を公開しています。
ちなみに、医療法人「社団」の定款は「定款」といいますが、医療法人「財団」の定款は「寄付行為」といいます。
医療法所定の解散事由以外は、解散事由として記載されていません(14.寄付行為例(平成28年9月改正医療法)/医療法人設立の手引/東京都福祉保健局HP/最終アクセス220429)。
医療法所定の解散事由以外は、解散事由として記載されていません(財団たる医療法人の新寄付行為案/「改正医療法」特設ページ/大阪府HP/最終アクセス220429)。
よって、医療法人の解散事由には、一般財団法人の解散事由は適用されず、財団法人たる医療法人が仮に「ある事業年度及びその翌事業年度に係る貸借対照表上の純資産額がいずれも300万円未満となった場合においても、当該翌事業年度に関する定時評議員会の終結の時に解散する。」ことはありません。
医療機関に関する法人登記(独自の論点)
全ての法人に共通