MS法人の設立や、病院とMS法人との契約書作成のご依頼も増えてきましたので、注意点を記事にしました。ドクターの先生方にご参照いただければ幸いです。
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MS法人とは「メディカル・サービス法人」の略称です(MS法人、メディカル・サービス法人ともに法律で定義された法律用語ではありませんが、厚生労働省等の資料にも出てくる用語です。)。
MS法人は①医療法人や個人経営医院とは別に設立される法人で、②医療行為以外の病医院業務を行います。
ドクターを医業以外でサポートする法人ですから、本来は「メディカル【サポート】法人」という表現の方が適切かもしれませんね。
さて、このMS法人は、株式会社、合同会社、一般社団法人などで設立することが可能です。
また、基本的に許認可は必要ありません。
さらに、保健所の指導対象でもありません。
なお、医療法人自体(病医院の開設許可を受ける本体)を一般社団法人で設立したいドクターの先生は、記事「医療機関を(医療法人ではなく)一般社団法人として法人化する」をご参照ください。
医療法人の非営利性に反しますので、医療法人は原則として「収益業務」を行うことはできません(医療法39、同42)【1】。
医療法人は、不動産の有効活用や、医療に関連しない物販などを行うことはできないのです。
そこで、何でもできるMS法人の出番となります。
【1】認定を受けて社会医療法人となった場合は、定款に定めることにより、その収益を社会医療法人が開設する病院、診療所等の経営に充てることを目的として、収益業務を行うことができます(医療法42の2)。
医療法人は、配当することができない(医療法54)ため、開業後十数年、数十年経過するうちに財産が大きくなり(結果、出資持分の価額が高くなって)、事業承継のときに苦労するのは良くある話です。
そこで、配当ができるMS法人の出番となります。
MS法人を設立しておけば、次のようなメリットがあります。
MS法人の設立を決意なさったら、次は何をするMS法人とするかを決定します。
医院系列、歯科医院系列のMS法人の事業目的で多いものを列挙すると、次のとおりです。
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MS法人は、誰の出資を受け入れることも可能です。
個人、法人、営利、非営利を問いません。
病院内においては、営利事業を行うことはできないためです。
原則 | 開設者である個人及び当該医療機関の管理者については、原則として当該医療機関の開設・経営上利害関係にある営利法人等の役職員を兼務していないこと。 |
例外A |
以下いずれの要件も充たす場合
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例外B |
以下いずれの要件も充たす場合
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以上、厚生労働省医政局総務課長、同指導課長平成24年3月30日付「医療法人の役員と営利法人の役職員の兼務について」(医政総発0330第4号、医政指発0330第4号)最終アクセス240913を筆者において見やすく加工。
【1】どの程度を「少額」というかは、規定・通達を見つけられていません。後掲の厚生労働省医政局長『令和3年2月26日付医療法人の計算に関する事項について』(医政発0226第10号)の第2-1-⑵が参考になるかもしれません。
なお、医院開設許可を取得するための要件に関する厚生労働省医政局総務課長、同指導課長平成24年3月30日付「医療機関の開設者の確認及び非営利性の確認について」/医政総発0330第4号、医政指発0330第4号/最終改正令和5年2月3日/最終アクセス240913という通達があります。
そして、同通達の「第一 開設許可の審査に当たっての確認事項」の「1 医療機関の開設者に関する確認事項」の「⑵開設・経営の責任主体とは次の内容を包括的に具備するものであること。」の③には、上記と全く同じ除外事由が定められている。
原則 | 開設者である法人の役員については、原則として当該医療機関の開設・経営上利害関係にある営利法人等の役職員を兼務していないこと。 |
例外ア |
以下の要件をいずれも満たす場合
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例外イ |
以下の要件をいずれも満たす場合
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例外ウ |
以下の要件をいずれも満たす場合
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以上、厚生労働省医政局総務課長、同指導課長平成24年3月30日付「医療法人の役員と営利法人の役職員の兼務について」(医政総発0330第4号、医政指発0330第4号)最終アクセス240913を筆者において見やすく加工。
なお、医院開設許可を取得するための要件に関する厚生労働省医政局総務課長、同指導課長平成24年3月30日付「医療機関の開設者の確認及び非営利性の確認について」/医政総発0330第4号、医政指発0330第4号/最終改正令和5年2月3日/最終アクセス240913という通達があります。
そして、同通達「第一 開設許可の審査に当たっての確認事項」の「1 医療機関の開設者に関する確認事項」の「⑵開設・経営の責任主体とは次の内容を包括的に具備するものであること。」の④には、上記と全く同じ除外事由が定められている。
医療法人理事長たるドクターが、MS法人の取締役を兼務した場合、MS法人において医療法人との取引ごとに利益相反行為の承認決議を行う必要となります(若干面倒です)。詳細は、記事「会社役員間の利益相反取引『見分け方』と『具体的な対応方法』」をご参照ください。
平成29年4月以降、医療法人とMS法人が取引をした場合、一定の条件に当てはまったとき【1】には、都道府県知事へ届け出る義務があります(医療法51Ⅰ、同52→厚労省通達【1】)。
この報告により、取引内容が適切でないと認められる場合には、立入検査ほかの指導が行われる可能性もあります(医療法63以下)。
当然、実態のないMS法人との取引は認められませんので、同業他社との取引金額を参考にするなどして取引金額を決定します。また、第三者との取引をする際と同様に契約書を作成しておくなど実態を整える必要があります。
医療法第51条 | |
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医療法第52条 | |
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病院もMS法人も個人情報取扱事業者ですので、個人情報保護法を遵守する必要があります。
MS法人を設立した場合に行うべきTODOを3点ご紹介します。
第1.個人情報保護方針の作成(改訂)公開と、患者様からの同意取得
ちなみに、他の病院の個人情報保護方針をそのまま流用するのは、著作権法上、不適切ですので、ご注意ください。
第2.病院によるMS法人(委託先)に対する監督(個人情報保護法25)
病院は、個人情報の取扱について、委託先であるMS法人に対するに監督義務があります。
第3.MS法人の義務
MS法人側にも次のような義務が生じます。
第4.個人情報保護法違反
個人情報保護法に違反すると次のようなペナルティを受ける可能性があります。
事業者名・違反内容を公表されてしまうのが、医院経営に対するダメージは大きいと思います。
会社設立手続は複雑です。
当グループにご依頼いただいた場合に「ドクターにご注意いただきたい点」を抜粋して記載しています。
当グループ定型の「ご要望お問い合わせ」シートをお渡しいたします。
ご記入のうえ、どのような会社にするのかご相談ください。
まず、公証人に対して「実質的支配者の届け」を行ないます。その際に必要ですので、発起人の本人確認書類(運転免許証など)と印鑑証明書をあらかじめ司法書士に交付ください。
その後の定款案の作成、公証人との打合せは司法書士にお任せください。
せっかく設立した会社が、後日、不正競争だと言われないために、しっかりと調査します。
会社印の発注代行を当グループが承ることも可能です。
看板・名刺などは、当グループ顧客企業をご紹介することも可能です。
出資金の入金については、よく間違いをなさいます。コラム「会社設立の際の出資金の入金方法、通帳コピーの作成方法(出資払込証明)」もご参照ください。
司法書士が公証役場で定款認証を受け、法務局に登記申請を行います(ドクターやMS法人の方に同行いただく必要もございません。)。
この日が会社の誕生日になります。
1週間程度で、登記が完了します。司法書士が登記事項証明書・印鑑証明書を取得し、正確に登記・登録できているかを確認のうえ、お引渡しいたします。
この記事の「医療法人とMS法人の取引状況は届出義務がある」をご参照ください。
この記事の「個人情報保護法上の義務も忘れない。」をご参照ください。
登記事項証明書、定款謄本、公証人認証済みの実質的支払者の届出書、会社印鑑証明書、社長の本人確認書類(運転免許証など)をお持ちください(金融機関によっては他の書類を要求されることもございますので、念のため事前に電話でご確認ください)。
主たる業務内容などについて聞かれますので、ご回答ください。
▼約2週間後
銀行から口座開設の可否について電話連絡がありますので、指示に従ってください。
●会社設立後に必要な諸手続のご案内を行います。税務署、県、市、年金事務所、労基署などへの手続が必要ですが、マイナンバーカードがあれば、マイナポータルから一括手続をすることが可能です。
●必要に応じて、おすすめの税理士・社会保険労務士などの専門家をご紹介します。
司法書士による法律顧問サービスを締結いただいている場合、司法書士手数料の割引きがございます。
業務の種類 |
司法書士 の手数料 |
実費 | 合計 |
MS法人設立(株式会社の場合)
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165,000円
(税込)【3・4】 |
資本金100万円未満の場合 183,600円【5】 |
348,600円 |
資本金100万円以上300万円未満の場合 193,600円【5】 |
358,600円 | ||
資本金300万円以上2,142万円未満の場合 203,600円【5】 |
368,600円 | ||
MS法人設立(合同会社の場合)
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143,000円 (税込)【3・4】 |
63,000円 | 206,000円 |
病院MS法人間の業務委託契約書作成 |
220,000円~ (税込) |
ー | 220,000円~ |
病院の個人情報保護方針の改訂 |
110,000円 (税込) |
ー | 110,000円 |
【1】お客様の利用したい商号と同様の商号等がすでに商標登録されている場合には、会社設立後に商号の変更をせざるを得ない可能性もあります。また、先に登録していた会社から損害賠償請求を受けることもありえます。これらのリスクを排除するために、「類似商号・商標調査」おすすめしています。確かに、会社法上は、同一商号・同一事業目的の会社を設立することが可能になりました。しかし、・・・(詳しくはコチラ「類似商号・登録商標等の調査は必要か?」をご参照ください。)
【2】株主名簿(会社の出資者一覧)は、会社で保管・整備していただく必要があります。そして、株主名簿はとても大切な書類です(「株主名簿管理」詳細はコチラ)。当事務所グループでは、これだけ見ればわかる!「株主名簿管理ファイル」をお客様にご提供いたします。
【3】概ね1時間程度で打合せが完了する場合を想定しております。それ以上のご説明をご要望の場合には、別途お見積りをご用意いたします。
【4】低価格な最低限パックもご用意しております。
最低限パックは、
である場合にのみ、お請けいたします。
最低限パックは、類似商号・登録商標などの調査を行わないほか、株主名簿などを作成しないことにより費用をできるだけ抑えております。
【5】定款認証手数料が資本金の額により変わることとなりました(手数料令40)。
資本金の額 | 公証人手数料 | 実費総額 |
100万円未満の場合 | 32,020円 | 183,600円 |
100万円以上300万円未満の場合 |
42,020円 | 193,600円 |
その他の場合 | 52,020円 | 203,600円 |
医療機関に関する法人登記(独自の論点)
全ての法人に共通