ビジネスの適法性の調査方法(グレーゾーン解消制度、ノーアクションレター制度、新技術等実証制度、新事業特例制度)


せっかく素晴らしい事業(ビジネス)を考え出したとしても、それが法律で規制されているビジネスであれば、事業活動は違法になり、処罰を受けることもあります。

事業開始後になって「えっ?!そんな規制があったの?!」ということの無いよう、慎重に調査する必要があります。

この記事では「事業の適法性を確認する方法」をご紹介します。

もくじ
  1. まずは、当たりを付ける
    1. 伝統的事業の場合
    2. スタートアップの場合
    3. 行おうとする事業に関係する注意すべき主な法令
    4. 業種別開業ガイド
  2. 次に、行政庁に対する事前相談、一般相談
  3. さらに、グレーゾーン解消制度、ノーアクションレター制度
  4. 規制緩和などを求める(ルールメイキング)

まずは、当たりを付ける


貴社が始める事業が、(先行している競合他社がいるような)伝統的事業なのか、それとも、スタートアップなのか(始めて世に出るサービスを売りに出すのか)によって、何から調べればよいのか異なります。

伝統的事業の場合

伝統的な事業の場合には、先行している競合他社がいますので、競合他社の会社情報などをチェックすることで、ある程度、どのような許認可を取得する必要があるか(どのような法規制を受けるか)が分かります。

スタートアップの場合

ところが、スタートアップの場合には、初めて世に出るサービスです。先行している競合他社はいませんので、前例のない中で、ビジネスがどのような法規制を受けるのか、十分に検討する必要があります。

行おうとする事業に関係する注意すべき主な法令

まず、事業が、どのような法規制を受ける可能性があるのかを、下記一覧表を参考に当たりを付けます。

行おうとする事業 注意すべき主な法令
あらゆる業種 個人情報保護法
(対消費者)の事業を行う場合 消費者契約法
インターネット通信販売を行う場合 特定商取引法
規模の異なる企業と下請取引を行う場合 下請法
フリーランスに外注する場合 フリーランス保護法
広告を行う場合 景品表示法、薬機法
景品を提供する場合 景品表示法
求人・休職に関する事業を行う場合 職業安定法
人を派遣する事業を行う場合 労働者派遣法
金銭の貸付けを行う場合 貸金業法
不特定多数から金銭を集める事業を行う場合 出資法
金融商品の取引、投資情報の提供を行う場合 金融商品取引法
不動産売買・賃貸の仲介を行う場合 宅地建物取引業法
飲食店を経営する場合 食品衛生法、食品リサイクル法、風営法
他人の商品を参考にして商品を開発する場合 不正競争防止法
建築に関する業務を行う場合 建設業法、労働安全衛生法
保険料を支払うことで経済的損失を補填するサービスを行う場合 保険業法
サービス内でユーザー同士のメッセージがやり取りできるサービスを提供する場合(プラットフォームビジネス) 電気通信事業法
商品購入に使用できるポイントサービス導入する場合 貸金決済法
分割払いに関するサービスを導入する場合 割賦販売法
中古品を売買する場合 古物営業法
化粧品を販売する場合 薬機法
運送する場合 道路運送法、貨物自動車運送事業法
他人の物を倉庫で保管する場合 倉庫業法
紛争解決を行うことをサービスとする場合 弁護士法
登記に関する相談や申請をサービスとする場合 司法書士法
税金に関する相談や申告をサービスとする場合 税理士法
不動産時価の鑑定をサービスとする場合 不動産の鑑定評価に関する法律

岡本直也著『チェックリストでわかる実務家・企業のためのスタートアップ法務』日本加除出版/2024/1頁以下<図表1 行おうとする事業に関係する注意すべき主な法令>に加筆しました。

 

業種別開業ガイド

独立行政法人中小企業基盤整備機構「J-Net21」の『業種別開業ガイド』には、注意すべき法令や開業に必要な許認可等も記載されているので、参考になります。

次に、行政庁に対する事前相談、一般相談


前例や法令を見ても、法規制が該当するか否かが確定できないときには、行政庁に対する相談を行います。

行政庁は、事前相談や一般相談を受け付けています。行政庁によっては電話で相談することも可能ですが、その場合、回答も電話になるため、相談したことや回答をエビデンス(証拠)として置いておきたい場合には、不適切なこともあります。

グレーゾーン解消制度,ノーアクションレター制度


行政庁に対する事前相談や一般相談を行っても、明確な回答を得られない場合には、グレーゾーン解消制度やノーアクションレター制度を利用することになります。

  グレーゾーン解消制度 ノーアクションレター制度
正式名称 解釈及び適用の確認制度 法令適用事前確認手続
概要

新規事業の具体的内容、確認事項を整理し、「事業」所管庁に相談することで、事業所管庁の援助のもと、法規制の解釈と適用の有無を照会できる。

「規制」所管庁が回答する。

ノーアクションレター制度と異なり対象法令が限定されない。

新規事業の具体的内容を伝え、それが『ある特定の法令』の規制対象となるか否かを「規制」を所管する省庁に直接確認する制度。

照会者、照会書、回答書が公表されることへの同意が条件。

照会先 「事業」を所管する省庁 「規制」を所管する省庁【1】
対象となる法令 制限なし 行政処分・刑事罰
根拠法令 産業競争力強化法7条

平成13年3月27日閣議決定「行政機関による法令適用事前確認手続の導入について」

具体的実施方法は、各省庁において「細則」を定め公表する。

行政庁の回答義務

1か月以内に回答する義務

(産業競争力強化法9、施行規則6Ⅲ、Ⅴ)

30日以内に回答する。

行政庁による公表

照会と回答の概要が公開される。

照会者、照会書は公表されない【2】。

回答から30日以内に公表される。

照会者、照会書、回答書そのものを公開【3】。競合に内容が知られる。

規制緩和などを求める(ルールメイキング)


事業が、法規制に該当している場合(法規制が障害となって、事業を始められないとき)には、規制緩和を求めるための制度も用意されています。

 

プロジェクト型

「規制のサンドボックス」

新事業特例制度
正式名称 新技術等実証制度
概要

事業の「実証」を行い、規制改革や事業化したい事業者が、参加者や期間等を限定した計画を作成して、所管庁の認定を受けることで、一時的に規制の特例を受けることができる制度。

事業者単位で、規制の特例措置を認定してもらう制度。

 

根拠法令 産業競争力強化法8条の2以下 産業競争力強化法6条

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