せっかく素晴らしい事業(ビジネス)を考え出したとしても、それが法律で規制されているビジネスであれば、事業活動は違法になり、処罰を受けることもあります。
事業開始後になって「えっ?!そんな規制があったの?!」ということの無いよう、慎重に調査する必要があります。
この記事では「事業の適法性を確認する方法」をご紹介します。
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貴社が始める事業が、(先行している競合他社がいるような)伝統的事業なのか、それとも、スタートアップなのか(始めて世に出るサービスを売りに出すのか)によって、何から調べればよいのか異なります。
伝統的な事業の場合には、先行している競合他社がいますので、競合他社の会社情報などをチェックすることで、ある程度、どのような許認可を取得する必要があるか(どのような法規制を受けるか)が分かります。
ところが、スタートアップの場合には、初めて世に出るサービスです。先行している競合他社はいませんので、前例のない中で、ビジネスがどのような法規制を受けるのか、十分に検討する必要があります。
まず、事業が、どのような法規制を受ける可能性があるのかを、下記一覧表を参考に当たりを付けます。
行おうとする事業 | 注意すべき主な法令 |
あらゆる業種 | 個人情報保護法 |
(対消費者)の事業を行う場合 | 消費者契約法 |
インターネット通信販売を行う場合 | 特定商取引法 |
規模の異なる企業と下請取引を行う場合 | 下請法 |
フリーランスに外注する場合 | フリーランス保護法 |
広告を行う場合 | 景品表示法、薬機法 |
景品を提供する場合 | 景品表示法 |
求人・休職に関する事業を行う場合 | 職業安定法 |
人を派遣する事業を行う場合 | 労働者派遣法 |
金銭の貸付けを行う場合 | 貸金業法 |
不特定多数から金銭を集める事業を行う場合 | 出資法 |
金融商品の取引、投資情報の提供を行う場合 | 金融商品取引法 |
不動産売買・賃貸の仲介を行う場合 | 宅地建物取引業法 |
飲食店を経営する場合 | 食品衛生法、食品リサイクル法、風営法 |
他人の商品を参考にして商品を開発する場合 | 不正競争防止法 |
建築に関する業務を行う場合 | 建設業法、労働安全衛生法 |
保険料を支払うことで経済的損失を補填するサービスを行う場合 | 保険業法 |
サービス内でユーザー同士のメッセージがやり取りできるサービスを提供する場合(プラットフォームビジネス) | 電気通信事業法 |
商品購入に使用できるポイントサービス導入する場合 | 貸金決済法 |
分割払いに関するサービスを導入する場合 | 割賦販売法 |
中古品を売買する場合 | 古物営業法 |
化粧品を販売する場合 | 薬機法 |
運送する場合 | 道路運送法、貨物自動車運送事業法 |
他人の物を倉庫で保管する場合 | 倉庫業法 |
紛争解決を行うことをサービスとする場合 | 弁護士法 |
登記に関する相談や申請をサービスとする場合 | 司法書士法 |
税金に関する相談や申告をサービスとする場合 | 税理士法 |
不動産時価の鑑定をサービスとする場合 | 不動産の鑑定評価に関する法律 |
岡本直也著『チェックリストでわかる実務家・企業のためのスタートアップ法務』日本加除出版/2024/1頁以下<図表1 行おうとする事業に関係する注意すべき主な法令>に加筆しました。
独立行政法人中小企業基盤整備機構「J-Net21」の『業種別開業ガイド』には、注意すべき法令や開業に必要な許認可等も記載されているので、参考になります。
前例や法令を見ても、法規制が該当するか否かが確定できないときには、行政庁に対する相談を行います。
行政庁は、事前相談や一般相談を受け付けています。行政庁によっては電話で相談することも可能ですが、その場合、回答も電話になるため、相談したことや回答をエビデンス(証拠)として置いておきたい場合には、不適切なこともあります。
行政庁に対する事前相談や一般相談を行っても、明確な回答を得られない場合には、グレーゾーン解消制度やノーアクションレター制度を利用することになります。
グレーゾーン解消制度 | ノーアクションレター制度 | |
正式名称 | 解釈及び適用の確認制度 | 法令適用事前確認手続 |
概要 |
新規事業の具体的内容、確認事項を整理し、「事業」所管庁に相談することで、事業所管庁の援助のもと、法規制の解釈と適用の有無を照会できる。 「規制」所管庁が回答する。 ノーアクションレター制度と異なり対象法令が限定されない。 |
新規事業の具体的内容を伝え、それが『ある特定の法令』の規制対象となるか否かを「規制」を所管する省庁に直接確認する制度。 照会者、照会書、回答書が公表されることへの同意が条件【2】。 |
照会先 | 「事業」を所管する省庁 | 「規制」を所管する省庁【1】 |
対象となる法令 | 制限なし | 行政処分・刑事罰 |
根拠法令 | 産業競争力強化法7条 |
平成13年3月27日閣議決定「行政機関による法令適用事前確認手続の導入について」 具体的実施方法は、各省庁において「細則」を定め公表する。 |
行政庁の回答義務 |
「遅滞なく」回答する義務(産業競争力強化法7Ⅱ) 概ね1か月以内に回答されている模様【3】 |
30日以内に回答する。 |
行政庁による公表 |
照会と回答の概要が公開される(産業競争力強化法7Ⅱ)。 照会者、照会書は公表されない【4】。 |
回答から30日以内に公表される。 照会書、回答書そのものを公開【5、6】。 競合に内容が知られる。 |
【1】各省庁ごとの手続(及び細則)は下記のとおり。
公正取引委員会/警察庁(国家公安委員会)/金融庁/消費者庁/総務省/法務省/外務省/財務省/文部科学省/厚生労働省/農林水産省/経済産業省/国土交通省/環境省/原子力規制委員会
【2】照会に「照会者名の公表への同意」を要するかについては、調査日(令和6・11・29)現在、省庁ごとに、次の3通りの対応である。
【3】経済産業省「グレーゾーン解消制度の活用事例」の「申請日及び回答日」欄を参照。
【4】経済産業省が「事業所管庁」だった場合の公表例(照会者、照会書は公表されない。)
【5】経済産業省が「規制所管庁」だった場合の公表例(照会書、回答書そのものを公開。)
【6】照会者名の公表については、調査日(令和6・11・29)現在、次の2通りである。
事業が、法規制に該当している場合(法規制が障害となって、事業を始められないとき)には、規制緩和を求めるための制度も用意されています。
プロジェクト型 「規制のサンドボックス」 |
新事業特例制度 | |
正式名称 | 新技術等実証制度 | ー |
概要 |
事業の「実証」を行い、規制改革や事業化したい事業者が、参加者や期間等を限定した計画を作成して、所管庁の認定を受けることで、一時的に規制の特例を受けることができる制度。 |
事業者単位で、規制の特例措置を認定してもらう制度。
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根拠法令 | 産業競争力強化法8条の2以下 | 産業競争力強化法6条 |