どうにかして欲しいというご相談を受けることがあります。
こういった場合に、法律上の保護を受けるためには「法律上の営業秘密」に該当するように秘密情報を徹底管理していなければ、できることは少ないと言わざるをえません。
企業存続のために必要な「秘密」は、企業秘密・機密事項などと様々に表現されますが、法律の保護を受けるためには「法律上の営業秘密」に当てはまるように工夫しなければなりません。
ここでは「法律上の営業秘密」とは何なのか?簡単にご説明します。
もくじ | |
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「営業秘密」として保護されるためには、一定の要件(3つの要件)を満たす必要があります。会社が単に「これは当社の『営業秘密』です」と相手方に告知するだけでは、営業秘密として保護されません。
次の3つの要件を「すべて」満たす必要があります。
3要件 | 要件の意味 | 具体例 | |
1 | 秘密管理性 | 秘密として管理されていること【1】 |
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2 | 有用性 | 有用な技術上又は営業上の情報であること | |
3 | 非公知性 | 公に知られていないこと |
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【1】営業担当者とその顧客情報について「東京地裁判決H24.6.11」
1 事案の内容
X及びY1はいずれも印刷業者であり,Y2~Y4はXの元従業員であって,Xを退職後,Y1に就職した者(以下略)
Xは,Y2~Y4が,(略),③Xの顧客情報をXから持ち出し,Y1に漏えいした上,これを利用してXの顧客をY1に収奪させた(略)
2 本判決の判断
Y2が,Y1への転職後,X在職中に作成した顧客の連絡先手控えを使用して,Y1のための営業活動を行ったものと認定したが,顧客情報のうち,個人に帰属するとみられる部分(個人の記憶や連絡先の個人的な手控えとして残る部分)までもが,雇用契約上,開示を禁じられる秘密保持義務の対象となるというためには,事業主体者が保有し蓄積するに至った情報全体が営業秘密として管理されているのみでは足りず,当該情報が,上記のような個人的な手控え等も含めて開示等が禁止される営業秘密であることが,従業員らにとって明確に認識することができるような形で管理されている必要があるところ,Xにおける顧客情報の管理体制は,従業員らに上記の点を認識させるために十分なものであったといえないとして,この点に関するY2の雇用契約上の秘密保持義務違反,不法行為又は不正競争(不正競争防止法2条1項4又は7号)の成立をいずれも否定している。
(以上、判例タイムズ1404号323頁)
営業秘密を侵害されないためには、まず上記3要件を満たすことが大切です。
次のような場面ごとに適切な契約などを行うことも必要です。
場面 | 対応(用意すべき書類) |
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秘密保持誓約書を提出させる。 |
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就業規則に「秘密情報の管理」に関する条項を入れる。 |
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秘密保持契約書を締結する。 |
「営業秘密侵害罪」による刑事告訴をすることが考えられます(不正競争防止法21)。
不正使用している相手方に対して、貴社「営業秘密」の不正使用を止めるよう請求することができます(不正競争防止法3.15)。
故意・過失により侵害された場合には損害賠償請求ができるが、被害を受けた事業主の立証を容易にするため、次の二つの推定規定が設けられている。
通常の民事訴訟 | 不正競争防止法 | |
「加害行為」の立証責任 | 被害を受けた事業主 |
被害を受けた事業主が、以下3点を立証したときは・・・
▼ 侵害者の製品は、営業秘密を不正使用したと推定される(不正競争防止法5の2) |
「損害額」 の立証責任 |
被害を受けた事業主 | 侵害者が利益を得ているときは、その利益の額を損害の額と推定される(不正競争防止法5Ⅱ) |
謝罪広告等の信用を回復するために必要な措置を請求できる。