会社が株券を発行している会社か、発行していない会社か、急いで確認してください。
法務局で会社の登記簿謄本(登記事項証明書)を取得すればすぐにわかります。
登記簿に「当社は株券を発行する」と記載されている会社であれば、一度も株券を発行していなくても「株券発行会社」であり、この記載がなければ「株券不発行会社」です。
もし「株券発行会社」であるときには、急いで「株券喪失登録」を行なう必要がございます。
花屋で薔薇を買うとき、あなたは、「この薔薇って本当にこの花屋の所有物なのだろうか?」と疑ってから買う・・・なんてこと、しませんよね。
でも、万一、その花屋さんの所有している薔薇ではなかったら、薔薇はあなたの物にはならないのでしょうか?大丈夫。薔薇はあなたの物になります。
実はこれ、「その物を持っている人から買った人は、所有者になれる」という即時取得という制度(民法192条)があるからなんです。
民法上の即時取得は、「平穏・公然・善意・無過失」が要件になっています。ただし、その物が盗品や遺失物の場合には、元の所有者は2年間、即時取得した方に対して、その物を返してという権利があります(民法193・194条)
印刷された株券も「物」ですが、会社法は、取引の安全のために民法上の即時取得の要件を緩和しています。
民法192条 | 会社法131条・商法519条 | |
要件 | 平穏・公然・善意・無過失 | 善意・無重過失 |
被害者・遺失者の回復請求権 | あり(民193・194) | なし=盗品・遺失物であっても善意取得が成立する。 |
紛失した株券を善意・無重過失の第三者が取得した場合にも、善意取得(会131)は成立しえます。
しかしながら、株券喪失登録をしておくと、会社を通じて、「株券喪失登録者」と「その株券を所持している者」との間で通知しあうことになり(会224・225・226)、真正な所有者が知らないままに株券の所有権を失うリスクを軽減することができます。
譲渡制限付株式について、善意取得が成立する可能性があるか否かは、議論が分かれています。
譲渡制限がある場合には、株券それ自体にその旨を記載しなければなりません(会社216③)。
そして、譲渡制限株式の場合、買い受けても、譲渡が承認されなければ会社との間では株主となることはできません。
そうであれば、譲渡制限のある株式を買い受けるときには、少なくとも発行会社や株券に記載されている最後の取得者(名義書換手続をした株主)に照会するなどの調査をする必要があ(東京高裁平成5年11月16日判決)るとされていますので、譲渡制限のない会社の株式よりも、善意取得される可能性は、低いと思われます。
また、会社側は、譲渡承認請求を受けた際に、2週間以内にこれを拒否する(会社145Ⅰ:みなし譲渡承認に注意)ことで、かような者が株主になることを防ぐことができます。
ご不安なときには「株券不発行会社への移行」をご検討ください。
日本の中小零細企業は、株主も少ないため、これらの手続を扱ったことのある専門家も、まれです。
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株券がない理由によります。株券がない理由とその対処方法は、次の三通りです。
1.株券不発行会社の場合(登記簿に「株券を発行する」との記載がない会社の場合)
株式の売買に株券は不要ですので、問題なく売買できます。
2.株券発行会社(登記簿に「株券を発行する」との記載がある会社)だが、株券を一度も発行していない場合
(1)株券発行会社において株式譲渡する際には、通常の流れは次のとおりです(最高裁昭和33年10月24日判決)。
①譲渡人が、会社に対して株券発行請求をし、
②会社が株券を発行し、
③譲渡人・譲受人が共同して株券を添付して、株主名簿書換請求をし、
④会社が株主名簿発行する。
(2)さらに、株券発行後、株券不発行会社に移行するには、株券提供公告が必要になります。
(3)これでは、大変な手間とお金がかかります。そこで、次のとおりの手順をご提案します。
【結論】
株券発行会社において、株式譲渡をするためには、次のとおりの手順が良いです。
(1)まず、株券不発行会社への移行を先に行ない(過去に株券を本当に発行していないかを要確認)
(2)その後、株式譲渡を行ってもらう(売買に株券は不要)。
3.株券発行会社だが、株主が株券を紛失していた場合(登記簿に「株券を発行する」との記載がある会社の場合)
(1)株券を紛失した株主が会社に対して、株券喪失登録を申請します(会社法223)。
(2)会社は株券喪失登録簿を作成します(会社法221)。
(3)株券喪失登録を申請した株主が株券を見つければ、株券喪失登録の抹消を申請します
(4)喪失登録の翌日から1年経過すれば、株券は無効となって新株券が再発行されます(会社法228)。
(5)株主は新株券を提出して、譲受人とともに会社に対して、株主名簿の書換請求を行ないます。
(平成31年3月・あなまち司法書士事務所・司法書士佐藤大輔
下表のとおりです。
(平成31年4月・あなまち司法書士事務所・司法書士荻野永倫)
株券不発行会社へ | ||||
移行前 |
移行後
|
|||
「会社管理株主名簿上の名義人」と「喪失登録者(しようとする者)」が | ||||
同一人物のとき | 別人物のとき | |||
喪 失 登 録 |
有 |
【原則】株券廃止の効力発生日に株券喪失登録を抹消しなければならない(会社法227本文)。 【例外】(株券喪失登録者とは別の)株券を所持する者が株券を会社に提出して株券喪失登録の抹消を申請しているとき(225Ⅱ) ☛株券廃止の効力発生日に、株券喪失登録を抹消できず、株券喪失登録が継続する。この場合、会社は、株券喪失登録の抹消の申請があったことを株券喪失登録者に通知し、この通知から2週間経過後、株券喪失登録を抹消する(225Ⅳ前段)。
※株主総会で議決権行使可能(230Ⅲ反対解釈) |
株券廃止の効力発生日に株券喪失登録を抹消できない。 株券喪失登録者は、株券喪失登録がされた日の翌日から1年経過した日以降に(230Ⅰ②)、株主名簿の書き換えを請求できる(会133Ⅱ、会社施行規則22Ⅰ⑨)。
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☓(株券喪失登録請求できない)
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無 |
株券喪失登録可能
※株主総会で議決権行使可能
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株券喪失登録可能
※株主総会で議決権行使できない(130Ⅱ)
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☓(株券喪失登録請求できない) |