取引開始にあたって相手方の決算書を見られる機会なんて少ないですよね。
ここでは、公開されており誰でも取得することが可能な登記簿から分かる取引先等の信用チェックの具体的方法をお伝えします。
登記簿に記載された情報が限られていますが、深く読み込むことが出来れば、取引して良い企業であるのか、分かってきます。
もくじ | |
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はじめての会社と取引をするとき、まず会社のホームページをご覧になることが多いと思います。
しかしながら、ホームページの会社内容は100%正しい情報とは限りません。
商業登記簿 | 会社ホームページ |
記載すべき情報が法律で決まっている。 過去の情報も遡ることができる。 |
不都合な情報は記載しない。 過去の不都合な情報は抹消できる。 |
変更したい事項をその立証書類とともに法務局(国)に提出して、登記官が審査し、事実であると認定した事項のみ登記される。 |
記載したい情報を記載する。
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登記官を騙して登記簿に虚偽の記載をさせたときは、公正証書等原本不実記載罪(刑法157)として、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金 |
HPに虚偽の記載をしても 誇大広告のときは景表法5条違反になるも罰則なし。 虚偽記載が契約締結の決定的な理由になった場合には、詐欺もあり得るが、会社間取引でHPの記載のみを信用して取引しても騙された会社も保護されない可能性が高い。 |
日本にある会社であれば、その商業登記簿は、全国どの法務局でも取得することが出来ます。
「商号」と「本店が所在する市町村」が特定すれば、取得することができます。
一番情報量の豊富な「履歴事項全部証明書」を取得しましょう。
契約書などに記載されている商号・本店を検索しても登記簿を取得できない(窓口で「該当法人なし」といわれる)場合には要注意です。
不動産登記簿も、全国の土地・建物の登記簿を全国どの法務局でも取得することが出来ます。
司法書士事務所であれば、インターネットで登記情報を見ることができます。
ただし、一見さんお断りの事務所も多数ありますので、ご訪問前に電話で確認されることをお勧めします。
インターネットで登記情報を取得したうえ、「法律相談サービス」などをご利用いただくことで、登記簿を分析し、分析結果をお知らせすることが可能です。
「会社名+企業情報」で検索すると、会社のHPを見つけ出すことが出来ます。
取得した登記情報と、会社HPを見比べて、会社HPで企業規模などを誇大広告していないかを、まずは確認します。
なお、登記された項目の下に線(アンダーライン)が引かれている場合は、当該事項は抹消された事項(現在は効力のない抹消された事項)であることを表わしていますのでご注意ください。
項目 | 分かること |
会社法人等番号 |
法人のマイナンバーです。 平成24年5月21日以降、一度付与された法人番号は本店が移転しても変更されません。 商号や本店で会社を特定することが困難な場合には、法人番号で特定することが有効です。 |
商号 |
会社の名前です。 商号が頻繁に変更されている場合には、要注意です。商号変更にはコスト(看板、印鑑、名刺、伝票などの新造)がかかりますし、せっかく覚えて貰った名前を失う営業上のデメリットもあります。それらを失ってまで何故名前を変える必要があったのか注意が必要です。不祥事を隠すことを狙っている場合もあるからです。 有名企業と同じ名前を名乗っている場合には、不正競争も良しとする風潮の会社かもしれません。 「商号+評判」「商号+詐欺」「旧商号+評判」などでGoogle検索し、悪評がないか確認しましょう。 |
本店
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実在している所在地であるか、GoogleMapなどで確認します。 GoogleMapでピンポイントで本店所在地が表示されない場合は要注意です。 「実際の本店」と「登記簿上の本店」が異なることがあります。 何度も本店移転をしている場合は要注意です 法務局の管轄を超えて本店移転している場合には、旧本店管轄の閉鎖登記情報を取得します。 |
会社成立の 年月日 |
会社が設立された日です。 商号や本店が変わっても、会社成立の年月日は変わりません。 古い会社を買った場合(経営者が変わった場合)でも、この日は変わりません。 必ずしも古い会社=信用できる会社とは限りません。 |
目的 |
会社がしたい事業が「目的」といして登記されています。 実際に行なっていない事業も登記されています。 貴社との取引が事業目的の範囲内であるかを確認します。
特に許認可が必要な事業の場合には、会社の目的に入っています。 一方、許認可を取得しなければ出来ない事業が事業目的として登記されていたとしても、会社が許認可を取得しているとは限りません。 余程の大企業でなければ、事業目的が15も20も入っているのは注意が必要です。 それぞれの事業目的が関連性のないものであれば、注意が必要です。 事業目的がガラッと変わっている場合には、要注意です。 |
資本金の額 |
現在の会社法のもとでは「資本金1円」で会社を設立することが可能です。 会社設立登記をする場合には、司法書士に依頼しなくても22万円ほどのコストがかかります。これらを下回る企業の場合には、会社の実在性に要注意です。 |
役員 |
取締役・監査役の氏名と就任・退任の年月日【1】が列挙されています。 代表取締役のみ住所も記載されています。 役員の姓が同じ時には、家族経営の会社であることがうかがえます。 任期切れしていないか確認します。 役員の任期切れを放置しているような企業はいい加減な企業だからです。 短期間に多くの役員が就任したり辞任したりしていないかを確認します。頻繁に入れ替わっている場合には、経営が不安定か、内輪もめを起こしている可能性があります。 解任と登記されている場合には、代表取締役の言うことを聞かず更迭された役員がいることを示しています。 代表取締役の住所を確認します。 企業チェックや反社チェックまでを行なう場合には、「役員氏名」「役員氏名+反社」などでGoogleやFacebook検索を行ないます。 |
株主 | 登記簿では株主を確認することは出来ません。 |
登記記録に 関する事項 |
現法務局の管轄地域以外から本店移転してきたときにはココに表示されます。 閉鎖登記情報を取得することで、本店移転前の登記内容を確認できます。 合併や組織変更したときもココに表示されます。 |
【1】役員の原因年月日欄の意味
登記されている語句 | 意味 |
就任 | 新任・再任した役員 |
重任 | 任期満了と同時期に再選された役員 |
辞任 | 自分の意思で会社を辞めた役員 |
退任 | 任期切れで再選されず辞めた役員 |
解任 | 会社の意思で会社を辞めた役員。いわゆる「クビ」になった役員 |
株式会社との違いを重点的に記載します。
項目 | 分かること |
役員
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株式会社と異なり、平取(監査役がいる場合には監査役)の住所が登記されている一方、代表取締役は氏名だけ登記されています。 株式会社と異なり、任期はありません。そのため、古い就任年月日であっても支障ありません。 |
株式会社との違いを重点的に記載します。
出資者である社員が全員有限責任である(出資の限度で責任を負う)形式の会社です。
ちなみに「社員」とは「従業員」ではなく、株式会社でいうところの株主と取締役が一体化した地位の人のことです。
項目 | 分かること |
社員の住所・氏名 | 全社員が登記されている訳ではありません。 |
業務執行社員の氏名 | 代表社員でない業務執行社員の住所は登記されていません。 |
代表社員の住所・氏名 | |
職務執行者の住所・氏名 | 代表社員が法人であるときのみ登記されます。 |
株式会社との違いを重点的に記載します。
出資者である社員が全員無限責任である形式の会社です。
項目 | 分かること |
社員の住所・氏名 | 全社員が登記されています。 |
業務執行社員 | 業務執行社員を定めることは出来ますが、登記はできません。 |
代表社員の氏名 | 代表権のない社員がいる場合のみ、代表権のある社員が登記されます。 |
職務執行者の住所・氏名 | 代表社員が法人であるときのみ登記されます。 |
株式会社との違いを重点的に記載します。
出資者である社員の一部が有限責任社員、一部が無限責任社員である形式の会社です。
項目 | 分かること |
社員の住所・氏名 | 全社員が登記されています。 |
業務執行社員 | 業務執行社員を定めることは出来ますが、登記はできません。 |
社員が有限責任社員か 無限責任社員かの別 |
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代表社員の氏名 | 代表権のない社員がいる場合のみ、代表権のある社員が登記されます。 |
職務執行者の住所・氏名 |
代表社員が法人であるときのみ登記されます。 |
項目 | 分かること |
所有権 | 代表取締役の住所の登記簿を取得して、代表取締役とは違うお名前の場合には賃貸住宅である可能性があります。 |
抵当権・ 根抵当権
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代表取締役名義の不動産であった場合、抵当権者や根抵当権者を見れば、代表取締役個人が誰からお金を借りているかわかります。 ●抵当権や根抵当権の記載が何もない場合 →自宅担保で融資を受けていないということです。 ●抵当権や根抵当権の記載がある場合 →抵当権者名や根抵当権者名をインターネットで検索しましょう。 抵当権者や根抵当権者が、消費者金融や個人名の場合には、要注意です。 →債務者名を見ましょう。債務者は誰の借金の担保のために、代表取締役の自宅が担保に入っているかわかります。代表取締役個人の場合には、住宅ローンの場合が多いでしょう。取引先企業名が入っている場合には、その企業の事業資金の融資で代表取締役自宅が担保に入っていることが分かります。他の企業名が入っている場合には、取引先企業や代表取締役親族の関連会社である可能性が高いです。 |
共同担保目録 |
代表取締役が他に所有している不動産を確認することができます。 |
業務内容 | 司法書士の報酬 | 実費 |
登記事項証明書 インターネット登記情報 などの取得 |
1,100円/通 | 334円/通 |
登記簿などからわかる相手方信用情報の分析・報告 |
33,000円/社 |