司法書士に定款変更を依頼したのに、手元の定款原本が変更されていないときの対応


司法書士に定款変更(商号、事業目的、本店所在地の変更など)を依頼したのに、役所や銀行に言われたので、定款を提出しようと思ったら、お手元にある「定款原本」が変更されていない。または、お手元に「変更後の定款原本」が見当たらない。

こんなときは、どうしたら良いのでしょうか?

もくじ
  1. 定款記載事項と登記事項は違う
    1. 定款記載事項と登記事項の比較
    2. 登記するために、定款変更が必要な事項もあります。
    3. 登記するために、定款変更する必要がない事項もあります。
    4. 定款変更しても、登記する必要がない事項もあります。
    5. 小括(途中のまとめ)
  2. 定款原本の修正は貴社ご自身で行うのが原則
  3. 定款に関する当グループのサービス
  4. ご自身で定款原本を変更する方法
  5. 司法書士を法律顧問に迎えるという選択

定款記載事項と登記事項は違う


定款記載事項と登記事項の比較

定款に記載すべき事項と、登記すべき事項は、完全には一致していません。

  株式会社の場合
 

定款記載事項

(会社法27~29)

登記事項

(会社法911)

目的
商号
本店の所在地(最小行政区画まで)【1】
本店の所在場所(○番○号まで具体的に)
資本金の額
発行可能株式総数
発行する株式の内容
発行済株式の総数
株券発行会社であるときは、その旨
取締役の氏名、代表取締役の住所氏名、監査役の氏名
取締役会設置会社であるときは、その旨
役員の任期 ×
決算期 ×

「定款記載事項」欄の◎○△は、それぞれ次の意味です。

◎=絶対的記載事項=記載もれでは法人が成立しない事項

○=相対的記載事項=記載しないと効力が生じない事項

△=任意的記載事項=強行規定・公序良俗に反しない限り任意に定められる事項

【1】最小行政区画とは

東京都:○○区まで

それ以外:市町村まで

 

登記するために、定款変更が必要な事項もあります。

例えば「目的」「商号」は定款に記載されていますので、これらの事項を変更登記しようとすると、当然に定款変更手続が必要になります。

上表で「定款記載事項欄が◎」で「登記事項欄が◎」になっている事項を変更する場合です。

 

登記するために、定款変更する必要がない事項もあります。

例えば「取締役の氏名」は、定款には記載されていません【1】ので、登記するために定款変更は不要です。

上表で「定款記載事項欄が△」で「登記事項欄が◎」になっている事項を変更する場合です。

【1】最初の取締役だけは定款に記載している場合もあります。

 

定款変更しても、登記する必要がない事項もあります。

例えば「役員の任期」や「決算期」は定款には記載してありますが、登記はされていません。

したがって、定款のこれらの事項を変更しても、登記は必要ありません。

(登記が必要になる場合もあります。)

上表で「定款記載事項欄が◎」で「登記事項欄が×」になっている事項を変更する場合です。

 

小括(途中のまとめ)

ここまでにご確認いただいたように、定款記載事項と登記事項の関係は次のとおりです。

  • 登記するために、定款変更が必要な事項もあります。
  • 登記するために、定款変更する必要がない事項もあります。
  • 定款変更しても、登記する必要がない事項もあります。

つまり、定款記載事項と登記事項は100%リンクしている訳ではないのです。

定款原本の修正は貴社ご自身が原則


定款変更を伴う登記のご依頼を受けた場合、司法書士は、登記に必要な書類(添付書類)を作成します。添付書類は「定款変更手続が、法律で定められたルールに従って行われたこと」を立証する書類です。定款変更を伴う場合であっても、定款そのものは添付書類になっていません。

したがって、定款変更を伴う登記のご依頼を受けた場合であっても、定款原本の修正は、司法書士が当然行うわけではありません。現に、司法書士は、頼まれなければ定款を変更しないことも多々あります。

 

しかし、貴社の定款原本の内容は当然に変わっています。ただ、お手元の紙の定款原本が変わっていないだけです。役所や銀行から最新定款の提出を求められたときには、定款原本を変更して提出しないと登記事項と矛盾が生じることもあり得ます。

定款に関する当グループのサービス


当グループに対して定款変更を伴う会社登記をご依頼いただいたお客様が、定款をWORDデータでご提出いただいた場合において、定款原本の変更を当グループにご依頼いただいたときは(原則として)無料で対応いたします。

 

それ以外の場合には、下記サービスのご利用をご検討ください。

ご自身で定款原本を変更する方法


司法書士にご依頼いただければ確実で安心ですが・・・

自社で対応せざるを得ない場合には、次の手順で、行ってください。

なお、ご自身で定款原本を変更したあと・・・

  • 公証人への提出、公証人の印鑑は不要です。
  • 司法書士への提出、司法書士の印鑑は不要です。

 

1.お手元の定款を<変更例>のように変更ください。

<変更例>は、○○株式会社が株式会社△△△に商号を変更するとともに、事業目的を変更した例です。

 

<お手元の定款>

○○株式会社 定款

 

第1章 総則

(商号)

第1条 当社は、○○株式会社と称する。

 

(目的)

第2条 当社は、次の事業を行うことを目的とする。

1.○○○

2.□□□

3.前記各号に附帯関連する一切の事業

<中略>

<途中ページ省略>  
(法令の準拠)

第33条  この定款に規定のない事項は、すべて会社法その他の法令に従う。

 

以上、○○株式会社を設立するため発起人の定款作成代理人である司法書士佐藤大輔は、電磁的記録である本定款を作成し、電子署名する。

 

令和3年3月3日

 

△△発起人の住所△△

発起人 ○○ ○○

 

上記定款作成代理人

〒657-0044 

神戸市灘区鹿ノ下通二丁目4番15号

司法書士 佐 藤  大 輔  司法書士印

電話078-805-1965

 

同一の情報の提供

 

提供の日付:2021年3月2日

公証人:0000000 ○○ ○○ 公証人印

所属法務局:京都地方法務局

公証役場:宇治公証役場

<以下略>

<変更例>

株式会社△△△ 定款

 

第1章 総則

(商号)

第1条 当社は、株式会社△△△と称する。

 

(目的)

第2条 当社は、次の事業を行うことを目的とする。

1.△△△

2.○○○

3.□□□

4.前記各号に附帯関連する一切の事業

<中略>

  <途中ページ省略>  
(法令の準拠)

第33条  この定款に規定のない事項は、すべて会社法その他の法令に従う。

 

以上、当社現行定款に相違ありません。

 

令和○年○月○日

 

本店 神戸市灘区・・・

商号 株式会社△△△

代表取締役 ○○ ○○  法人印


2.左を2か所ホチキス留めしてください。

3.代表取締役印(法務局に届け出た印鑑)を押印ください。

押印箇所は、次のとおりです。

  • 最終ページの代表取締役の御名前の右側
  • 各ページの綴り目(契印)