契約不適合責任【図解民法改正】


旧民法の「瑕疵担保責任」は、改正民法では「契約不適合責任」として整理されました。

この改正は、改正民法の中でも重要な改正の一つであり、売買や請負の契約実務に大きな影響を与えています。

 

一覧でできるだけ分かりやすく説明します。

もくじ
  1.  改正の経緯
  2. 「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」へ
  3. いつから適用されるの?
  4. 標準的な所要時間
  5. 司法書士の報酬・費用
  6. 人気の関連ページ

改正の経緯


わかりやすい法律にする

法律の最終解釈者である裁判所ですら、その判断が分かれるほど、旧法の「瑕疵」とは何かが不明でした。裁判官ですら判断が分かれるのですから、国民が分かる筈がないということです。

「契約不適合」とは、引き渡された物が契約の内容に一致していないことを言います。例えば、中古車の売買であれば、動かない中古車であっても、アンティークカーとして展示するために買主が購入したものなら契約の内容に一致するでしょうし、自分で運転するための購入であれば契約内容に一致しないでしょう。

「瑕疵」よりも「契約不適合」の方が分かりやすいと改正されました。

国際的なルールとの整合性を合わせる

瑕疵担保責任において「瑕疵」とは目的物が通常有すべき品質・性能を有しないこととされていましたが、通常有すべき品質・性能は人によって変わるため分かりにくいため、国際的なルールである「契約内容への不一致」に変更されました。

 

今回の改正によって、契約書の内容が従来よりも更に重要となりました。

契約書の作成・精査は、専門家司法書士にお任せください。

「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」へ


瑕疵担保責任と契約不適合責任を比較すると下表のようになります。

大きな改正であることがお分かりいただけるかと思います。

 

瑕疵担保責任

(旧民法570)

契約不適合責任

(改正民法562-564)

法定責任 債務不履行責任

隠れた瑕疵

  • 「瑕疵」とは、目的物が通常有すべき品質・性能を有しないこと(契約の趣旨も考慮はされる)。
  • 「隠れた」とは、買主が契約締結時に瑕疵の存在を知らず、知らないことに過失がないこと。

契約不適合

  • 「契約不適合」とは、引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないこと。
  • 「隠れた」ものであることは要件でなく、買主が契約不適合を知っていても売主の責任が生じ得る。

 

追完(修補)請求(売主の帰責事由不要)

  • 修補請求
  • 代替品請求

 

代金減額請求(売主の帰責事由不要)

  • 追完請求に売主が応じなかったとき

損害賠償請求(売主の帰責事由不要)

  • 賠償される損害は、原則として信頼利益のみに限定される【1】

損害賠償請求(売主の帰責事由必要)

  • 賠償される損害は、信頼利益【1】だけでなく履行利益【2】も含む。

解除(売主の帰責事由不要)

  • 買主が契約目的を達することができないときに限定。

解除(売主の帰責事由不要)

  • 契約不適合が軽微でなければ解除できる。

瑕疵担保責任を負わない旨の特約

  • 有効。ただし、売主が知っていた瑕疵については無効。

売主の買主に対する告知

  • すでに判明している瑕疵は、買主に告げておけば「隠れた」ものではなくなるので、売主は免責される。

契約不適合責任を負わない旨の特約

  • 有効。ただし、売主が知っていた契約不適合については無効。

売主の買主に対する告知

  • 告知の有無にかかわらず契約の内容として容認されているか否かで、免責・非免責が決定される。

瑕疵を知った時から1年内(除斥期間)に損害賠償請求・解除権「行使」必要。

契約不適合を知った時から1年以内に契約不適合である旨の「通知」必要(売買=民法566、請負=民法637Ⅰ)。

 

契約不適合を知った時から5年(消滅時効。民法166Ⅰ①)

物の引渡しから10年(最高裁H13.11.27判決:消滅時効)

物の引渡しから10年(消滅時効。民法166Ⅰ②)

【1】「信頼利益」とは、欠陥がないと信頼したことにより生じた損害をいう。

例えば、欠陥による評価減・修補費用など。

【2】「履行利益」とは、契約が完全に履行されていれば得られた利益の損害をいう。

例えば、転売を予定していたときの差額利益など。

普通は「履行利益」>「信頼利益」です。

いつから適用されるの?


改正民法の施行日は、2020(令和2)年4月1日です。

そして、

改正民法附則〔H29.6.2法律44〕第34条第1項

施行日前に贈与、売買、消費貸借(旧法第589条に規定する消費貸借の予約を含む。)、使用貸借、賃貸借、雇用、請負、委任、寄託又は組合の各契約が締結された場合におけるこれらの契約及びこれらの契約に付随する買戻しその他の特約については、なお従前の例による。

 

これらを整理すると下表のとおりです。

2020(令和2)年3月31日までに締結された契約 瑕疵担保責任が適用される。
2020(令和2)年4月1日以降に締結された契約 契約不適合責任が適用される。

標準的な所要時間


契約書の作成・チェックの標準所要時間は、約1か月間です。

徹底調査のうえ作成するためにも、余裕をもった日程を頂戴しています。

作業内容 所要時間
ヒアリング(契約書に反映する内容の聴取) 7日
ドラフト(案)作成・送付 14日
ヒアリング(ドラフトの修正など) 7日
合計 1か月ほど

司法書士の報酬・費用


作成・精査とも、次のような基準でお願いしております。

業務の種類 司法書士の手数料 実費 
定型のもの

5,500円(税込)/頁

※最低1.1万円(税込)

 印紙税法に定める金額
非定型のもの

11,000円(税込)/頁

※最低11万円(税込)

 印紙税法に定める金額
法律・判例の調査を伴うもの +55,000円(税込)  
公正証書にする場合(公証人との折衝) +22,000円(税込) 公証人手数料 
日当(公証役場などへの出張で、移動時間が2時間を超える場合) +11,000円(税込)  
  • 弁護士のように契約金額(契約書に記載する金額)によって、司法書士報酬・手数料が増減することはありません。
  • 顧問契約を締結いただいた場合、割引きがございます。
  • 標準所要時間を大幅に短縮する納期でのご依頼の場合、割増料金(特急料金)5割増しを頂戴いたします。

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