契約を結ぶ方法には、いろいろあります。
売買契約を思い浮かべてください。次のような方法があると思います。
ここでは、これらの契約締結方法ごとにリスクと、リスクを減らす方法(改善策)をご説明します。
【1】「電子契約で作る場合」は、長文になりましたので、別コラム「電子契約によるリスクと改善策」にしました。
両当事者が公証人に対して契約書案を提出し、公証人(元裁判官、元検察官、元弁護士、元司法書士が務めます。)がこれを法的にチェックしたうえ、公正証書を作成するという形式です。
公証役場に原本が保管されているため、偽造・変造されるリスクが低く、仮に偽造・変造されても公証役場の原本と照合することで、容易に偽造・変造を見抜くことが可能です。
公正証書にしておけば金銭の債務不履行が生じた際に判決手続きを経ることなく差押えが可能というメリットがあります(強制執行認諾文言付公正証書)。
<リスク>
公証人によっては、契約書案の言い回しを修正するくらいで、知恵を絞ってくれません。よって、最強の契約書作成は、契約書原案の作成を司法書士に依頼したうえ、公正証書にすることと言えるでしょう。
契約の種類によっては、公正証書によらないと効力を生じない契約があります。
改ざん・偽造・変造とは | |
改ざんは | 法律用語ではありません。偽造・変造の両方の概念を含みます。 |
偽造は | 存在しない文書を作成権限がない者が作り出すことです。 |
変造は | 存在している文書の内容を作成権限がない者が改造変更することです。 |
役所が作成した公文書、第三者である公証人が作成した公正証書以外の文書(つまり、民間で作成した契約書のこと)を私署証書といいます。私文書と同じ意味です。
ここまでやっていれば、文書成立の真正が争いになるということはないでしょう(当メディアのコラム「法務部員が知っておくべき『二段の推定』とは」をご参照ください。)。
<リスク>
公正証書と異なり、公証人によるチェックが入りません。
また、公正証書と異なり、債務不履行が発生した場合でも訴訟手続を経なければ差押などの強制執行をすることができません。
契約内容が不明瞭で、複数の意味に解釈できるときには、紛争になります。
<改善策>
作成した契約書を司法書士などに提出しチェックを受けましょう。
<リスク>
印鑑証明書を添付しないデメリットは、相手方が契約書に押印した後、改印した場合に、当時の実印を押印したと立証することが困難であることが挙げられます。
<改善策>
写し(コピー)でも結構ですので、押印した当事者の印鑑証明書をもらっておきましょう。
<リスク>
三文判であっても、適正に管理されていれば二段の推定が及びますが、他の者と共有、共用している印章であれば二段の推定は及びません(最判S50.6.12)。
押印されただけでは、他の方と共有・共用している印鑑かどうか、わかりません。
<改善策>
重要な契約書などの場合には、実印押印のうえ、印鑑証明書の提出を求めましょう。
<リスク>
私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、「真正に成立した」ものと推定されます(民訴228Ⅳ)が、本人が自分の署名ではないと否定した場合には、本人の署名であることの証明(筆跡鑑定など)が必要になります。また、人の署名は年齢とともに変化していきます。
<改善策>
署名した方が他の書類に行った署名も残しておきましょう。これはとても面倒なことですので、重要な書面の場合には、「公正証書で作成する」か「私文書に実印押印+印鑑証明書添付」が一番楽です。
印紙添付が必要な契約の場合には、印紙代が半分ですむというメリットがあります。
<リスク>
写しは偽造・変造される可能性があります。
<改善策>
写し(コピー)をとったうえで、表紙をつけ、両代取連名で「原本の写しの記載事項と相違ない」旨を記載します。
契約当事者の一方のみが義務を負っている契約であれば、「念書」など一方当事者のみが押印した書類であっても、有効です。リスク・改善点は上記をご参照ください。
ネットショッピングは、「消費者が事業者の用意したECサイトに必要事項を入力し、事業者が承諾することによって契約が成立します(電子消費者契約に関する民法の特例に関する法律。略称「電子契約法」に規定されています。)
<リスク>
契約書というものが残りません。
<改善策>
事業者は、ログを証拠として残せるシステムを構築する必要があります。
消費者は、スクリーンショット画像を残すようにしましょう。
メールのやり取りだけでも契約としては、有効に成立し、相手もメールが真正なものであると認めた場合には、問題ありません。
<リスク>
⑴ 相手方が争った場合、立証が困難になることもありえます。相手方の争い方としては、例えば「実際にやり取りしたメールではない。証拠提出者自身が、パソコンで作成した文書を印刷しただけだ」などとメールの存在自体を争うことがありえます。押印することのない単なる電子メールでは、二段の推定は働かず本人の意思に基づいて作成されたメールとならないからです。
⑵ また、メールは、押印された文書原本と比較すると改ざんは容易です。パソコンの時間設定を過去の日付に変えるだけで、同じメールを作成することは可能だからです。Webメール(第三者サーバーに保存されている)か、PCメール(第三者サーバーに保存されていない)か、携帯メールかなどによって、改ざんされる可能性が変わります。
<改善策>
電子メールで契約をする前に、次の内容を記載し契約当事者が署名押印した書面を紙で作成しておく。
<リスク>
どこまでが、契約内容の折衝で、どれが成立した契約内容か不明になることがあります。
<改善策>
成立した契約内容は、せめて別紙にまとめて双方が確認するべきです。
<リスク>
⑴FAXもやはり、書面が偽造変造される可能性があります。
⑵だいぶ改善されたとはいえ、FAXの難点は文字が潰れてしまい、当事者双方で認識が異なるまま契約の履行が進むこともあり得ます。
<改善策>
⑴契約書中に双方が送受信を行うファックス番号を明記し、ファックス文書の原本と送り状、送受信履歴を保管する。
⑵小さな文字や長文の契約書を送信しない。
出来るだけ解像度を上げて送信し、相手方にもそれを要求します。
判読に疑義が生じそうな場合には、再送信を求めます。
<リスク>
⑴ もめた場合、契約成立の立証自体が困難です。
例えば金銭の移動を伴う契約では、金銭消費貸借契約と贈与契約などがありますが、金銭の返還を求める場合には、「返還の約束」の立証責任を貸した側(お金を渡した側)が負うことになります。
⑵ また、契約の種類によっては、口頭で行った契約は効力を生じません。
<改善策>
簡単でも結構です。「日付・約束内容・約束した人」だけでも全くないよりはマシですので、文書化しましょう。
司法書士にご依頼いただいた場合、標準的な所要時間は、約1か月間です。
徹底調査のうえ作成するためにも、余裕をもった日程を頂戴しています。
作業内容 | 所要時間 |
ヒアリング(契約書に反映する内容の聴取) | 7日 |
ドラフト(案)作成・送付 | 14日 |
ヒアリング(ドラフトの修正など) | 7日 |
合計 | 1か月ほど |
作成・チェックとも、次のような基準でお願いしております。
業務の種類 | 司法書士の手数料 | 実費 |
定型のもの |
5,500円(税込)/頁 ※最低1.1万円(税込) |
印紙税法に定める金額 |
非定型のもの |
11,000円(税込)/頁 ※最低11万円(税込) |
印紙税法に定める金額 |
法律・判例の調査を伴うもの | +55,000円(税込) | |
公正証書にする場合(公証人との折衝) | +22,000円(税込) | 公証人手数料 |
日当(公証役場などへの出張で、移動時間が2時間を超える場合) | +11,000円(税込) |