計算書類(とその附属明細書)は税理士が作成してくれますが、事業報告書は基本的には貴社ご自身で作成いただく必要があります。極簡単に申し上げますと、事業報告書とは「過去1年の間に会社に発生した重要事実のうち会計に関する以外の事実を書類にまとめたもの」です。
以下の記事が、事業報告書を作成される際の参考になれば幸いです。
もくじ | |
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事業報告書は、事業年度ごとに会社が作成し、株主に報告する必要があります。
事業年度ごとに作成を要する書類は、次のとおりです(会社法435)。
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計算書類(とその附属明細書)は税理士が作成してくれますが、事業報告書は基本的には貴社ご自身で作成いただく必要があります。
「事業報告書」と「事業報告書の附属明細書」を、手続きの流れの順に整理すると次のとおりです。
まず「会社の種類」欄から貴社に該当する種類をすべて選択いただきその下の項目をチェックすると分かりやすいと思います。
会社の種類 | |||||||
全ての株式会社 | 公開会社 | 社外役員のいる会社 | 会計参与設置会社 | 監査役設置会社 | 会計監査人設置会社 | 取締役会設置会社 | |
❶作成(事業報告書) | ○必要 | 特則あり | 特則あり | 特則あり | 特則あり | ||
❶作成(附属明細書) | ○必要 | 特則あり | |||||
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❷監査(事業報告書) | 監査役の監査 | 監査役の監査 | 取締役会承認 | ||||
❷監査(附属明細書) | 監査役の監査 | 監査役の監査 | 取締役会承認 | ||||
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❸株主への提供(事業報告書) | ○必要 | ||||||
❸株主への提供(附属明細書) | ×不要 | ||||||
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❹定時総会への提出・報告(事業報告書) | ○必要 | ○必要 | ○必要 | ○必要 | |||
❹定時総会への提出・報告(附属明細書) | ×不要 | ×不要 | ×不要 | ×不要 | |||
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❺備置き・閲覧等(事業報告書) | ○必要 | ○必要 | ○必要 | ○必要 | |||
❺備置き・閲覧等(附属明細書) | ○必要 | ○必要 | ○必要 | ○必要 |
それでは詳しく、説明していきます。
すべての株式会社には、事業報告書を作成する義務があります(会社法435Ⅱ)。
事業報告書の附属明細書の作成義務もありますが、のちほど詳しく説明します。
会社法第435条(計算書類等の作成及び保存) | |
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事業報告書に記載すべき事項については会社法施行規則118条以下で定められています。
すべての会社に共通する記載事項は、会社法施行規則118条が定めています。
会社法でいう「公開会社」とは、上場会社ではありませんのでご注意ください。
発行済み株式の一部にでも譲渡制限を設けていない会社のことです(会社法2条5号)。
公開会社の事業報告書には、次の事項も記載する必要があります。
実際に作成される際には、経団連が発表しているひな形も参考になろうかと思います。
こちらも公開会社にのみ適用される条文です(∵「第二目 公開会社における事業報告の内容」中に規定されている。)。
社外役員に関する詳細は、コチラ「社外取締役・社外監査役・独立役員」を参照ください。
社外役員がいる会社の場合には、会社法施行規則121条の記載事項に加えて、会社法施行規則124条に定める事項も記載する必要があります。
会計参与を設置している会社の場合には、会社法施行規則125条をご参照ください。
会計監査人を設置している会社の場合には、会社法施行規則126条をご参照ください。
事業報告書の附属明細書(会社法435Ⅱ)の内容については、次のとおり規定されています。
特に会社法128条3項は難解ですので、条文の下に表で分かりやすく表示しています。
会社法施行規則第128条
【1】会社法施行規則128条3項を整理すると下表のとおりです。
会計監査人設置会社の場合 | 会計監査人設置会社以外の会社の場合 | ||
個別注記表に会社計算規則112Ⅰの事項全てを記載したとき |
個別注記表で会社計算規則112Ⅰ④⑤⑥⑧の事項を記載省略したとき | ||
関連当事者取引を行った |
個別注記表に会社計算規則112Ⅰの事項を全て記載必要 (会社計算規則112Ⅰ本文【2】) ▼ 事業報告の附属明細書には記載不要 |
会社計算規則112Ⅰ①②③⑦は個別注記表の必要的記載事項 会社計算規則112Ⅰ④⑤⑥⑧は個別注記表の任意的記載事項(省略可能) (会社計算規則112Ⅰただし書き【2】) ▼ 事業報告の附属明細書には記載不要 |
事業報告の附属明細書に会社法施行規則118⑤イロハの事項を記載必要 (会社法施行規則128Ⅲ) |
【2】会社計算規則第112条(関連当事者との取引に関する注記) | |||
1.関連当事者との取引に関する注記は、株式会社と関連当事者との間に取引(当該株式会社と第三者との間の取引で当該株式会社と当該関連当事者との間の利益が相反するものを含む。)がある場合における次に掲げる事項であって、重要なものとする。ただし、会計監査人設置会社以外の株式会社にあっては、第4号から第6号まで及び第8号に掲げる事項を省略することができる。 | |||
一 当該関連当事者が会社等であるときは、次に掲げる事項 |
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イ その名称 ロ 当該関連当事者の総株主の議決権の総数に占める株式会社が有する議決権の数の割合 ハ 当該株式会社の総株主の議決権の総数に占める当該関連当事者が有する議決権の数の割合 |
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二 当該関連当事者が個人であるときは、次に掲げる事項 |
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イ その氏名 ロ 当該株式会社の総株主の議決権の総数に占める当該関連当事者が有する議決権の数の割合 |
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三 当該株式会社と当該関連当事者との関係 四 取引の内容 五 取引の種類別の取引金額 六 取引条件及び取引条件の決定方針 七 取引により発生した債権又は債務に係る主な項目別の当該事業年度の末日における残高 八 取引条件の変更があったときは、その旨、変更の内容及び当該変更が計算書類に与えている影響の内容 |
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2~4.(略) |
会社法第436条(計算書類等の監査等) | |
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会社法第437条(計算書類等の株主への提供) | |
取締役会設置会社においては、取締役は、定時株主総会の招集の通知に際して、法務省令で定めるところにより、株主に対し、前条第3項の承認を受けた計算書類及び事業報告(同条第一項又は第二項の規定の適用がある場合にあっては、監査報告又は会計監査報告を含む。)を提供しなければならない。 |
取締役会が設置されていない会社においては、株主総会の招集通知は、必ずしも書面でなされるとは限りません(会社法299条参照)ので、本条は適用されません。
事業報告は、過去の事実について書かれたものですので、その当否を株主が判断するのは相応しくありませんので、株主総会の承認ではなく、株主総会へ提出し報告するとされています。
会社法第438条(計算書類等の定時株主総会への提出等) | |
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最後に「備置(そなえおき)」も忘れてはいけません。
備え置きとは、閲覧の請求等に対応するために「所定の場所に置いておく」ことを意味します。
事業報告書は他の計算書類、附属明細書などとともに、一定期間、本店と支店に備置きしておく必要があります。
会社法第442条(計算書類等の備置き及び閲覧等) | |
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