取締役会議事録チェックリスト


取締役会議事録に記載すべき事項は法律で決められています(会社法369Ⅲ)。

議事録を作成する役員だけでなく、議事録に押印する取締役も議事録をチェックしてから押印する必要があります。なぜなら、取締役会の決議に参加した取締役であって取締役会議事録に異議をとどめない者は、その決議に賛成したものと推定され(会社法369Ⅴ)、会社に損害が生じたときには損害賠償責任を負う可能性がある(会社法423Ⅲ③等)からです。

この記事では、取締役会議事録から漏れがちなポイントをチェックリスト形式でお伝えします。

もくじ
  1. 押印を求められた役員がチェックすべきポイント
  2. 漏れがちな取締役会議事録のポイント
  3. 書面決議の議事録の場合
  4. 人気の関連ページ

押印を求められた役員がチェックすべきポイント


取締役会の決議後、数日経ってから、議事録が回ってきて押印を求められた。ところが今すごく忙しくて細部を見る時間がない。そんなときでも最低限チェックすべきポイントです。

 

 

議案に対して異議を述べたときは、異議を述べた者の氏名

ご自身が異議を述べた議案には、ご自身の名前とともに異議を述べた旨が記載されているかは必ずチェックし、漏れている場合には、追記してもらうようにしましょう。

取締役会の決議に参加した取締役であって取締役会議事録に異議をとどめない者は、その決議に賛成したものと推定され(会社法369Ⅴ)、会社に損害が生じたときには損害賠償責任を負う可能性がある(会社法423Ⅲ③等)からです。

漏れがちな取締役会議事録のポイント


取締役会議事録の細かい記載事項は、会社法施行規則101Ⅲに記載があります。

順に見ていきましょう。

議案に対して異議を述べたときは、異議を述べた者の氏名

あなたが議事録作成担当者である場合には、必ず記載しましょう。

異議か意見か分かりにくいときには(議長に発言許可を求めたのち)「議事録に残す必要があるので確認いたします。今の○○さんのご発言は、議案に対するご異議でしょうか。それともご意見でしょうか」という具合に確認します。

取締役会が開催された日時及び場所(会規則101Ⅲ①)

<漏れがちなポイント>

  1. 複数の開催場所を設け、これらを中継して取締役会を開催する場合には、複数の開催場所を記載する必要があります。
  2. ウェブを通じて出席する場合には、開催場所にいない取締役の出席方法を例えば「取締役○○○○は、ウェブ会議システムの方法による出席」などと記載する。この場合には、ウェブ出席した取締役が何処にいたのかを記載する必要はありません。
  3. 執行役、会計参与、会計監査人又は株主が取締役会の承諾を得て取締役会に出席した(会施規101Ⅲ⑦)場合において、出席方法がウェブのときには「株主○○○は、、ウェブ会議システムの方法による出席」などと記載する。

特別取締役による取締役会(会373Ⅱ)であるときはその旨(会規則101Ⅲ②)

あらかじめ定めた招集権者以外が招集したときはその旨(会規則101Ⅲ③)

<招集権者以外が招集できる場合>は次のとおりです。

  1. 取締役会招集権のない取締役が、招集権者に対して招集を請求したことにより開催された取締役会(会366Ⅱ)
  2. 取締役会招集権のない取締役が、招集権者に対して招集を請求したのに所定の期間内に取締役会が開催されなかったために、当該招集権のない取締役が招集した(会366Ⅲ)取締役会
  3. 法第367条第1項の規定による株主の請求を受けて招集された取締役会
  4. 法第367条第3項において準用する法第三百六十六条第三項の規定により株主が招集したもの
  5. 法第383条第2項の規定による監査役の請求を受けて招集されたもの
  6. 法第383条第3項の規定により監査役が招集したもの
  7. 法第399条の14の規定により監査等委員会が選定した監査等委員が招集したもの
  8. 法第417条第1項の規定により指名委員会等の委員の中から選定された者が招集したもの
  9. 法第417条第2項前段の規定による執行役の請求を受けて招集されたもの
  10. 法第417条第2項後段の規定により執行役が招集したもの

<漏れがちなポイント>

通常の会社では定款で「招集権者を代表取締役」と定めていることが多いと思います。したがって

  1. 取締役会招集権のない取締役が、招集権者に対して招集を請求したことにより開催された取締役会(会366Ⅱ)

の場合には、その旨記載するように注意が必要です。

議事の経過の要領及びその結果(会規則101Ⅲ④)

決議を要する事項について特別の利害関係を有する取締役があるときは、当該取締役の氏名(会規則101Ⅲ⑤)

ある一定の意見(会規則101Ⅲ⑥)

<漏れがちなポイント>

取締役会において次の意見又は発言が述べられたときは、その意見又は発言の内容の概要

イ 競業取引、利益相反取引(法第365条第2項〔法第419条第2項で準用する場合を含む〕)

ロ 取締役の法令定款違反の行為を発見した株主の陳述した意見(法第367条第4項)

ハ 会計参与の陳述した意見(法第376条第1項)

ニ 取締役の不正、法令定款違反の行為を発見した監査役の報告(法第382条)

ホ 監査役の意見(法第383条第1項)

ヘ 取締役の不正、法令定款違反の行為を発見した監査等委員の報告(法第399条の4)

ト 取締役・執行役の不正、法令定款違反の行為を発見した監査委員の報告(法第406条)

チ 補償契約に基づく補償をした取締役及び当該補償を受けた取締役は、遅滞なく、当該補償についての重要な事実を報告(法第430条の2第4項)

出席した執行役、会計参与、会計監査人又は株主の氏名又は名称(会規則101Ⅲ⑦)

<漏れがちなポイント>

  1. 企業秘密などについても協議する取締役会への参加者の氏名は、全員記載しておくのが基本です。

取締役会の議長(会規則101Ⅲ⑧)

出席した取締役及び監査役の署名又は記名押印(会369Ⅲ)

<漏れがちなポイント>

  1. 「署名」形式ではなく、あらかじめ名前をパソコン等により入力(記名)し、その右横に押印する「記名+押印」形式が通常です。
  2. 取締役会には出席した取締役・監査役が、押印前に死亡したときはその旨を押印欄に付記すれば足りるとされています。
  3. 署名を拒否している取締役・監査役がいる場合には、その旨を押印欄に付記すれば足りる(議事録の効力に影響しない)とされています。
  4. 会計監査限定監査役は、本来、取締役会への出席義務はありません。しかしながら、出席した場合には、署名又は記名押印義務を負います。

書面決議の議事録の場合


取締役会を書面決議によって成立させた場合の記載事項は、次のとおりです。

詳細は、コラム「取締役会の書面決議(決議省略・みなし決議)/書面による議決権行使・委任状出席/テレビ会議・電話会議による出席」をご参照ください。

会社法第101条(取締役会の議事録) 
 
1~3 (略)
 次の各号に掲げる場合には、取締役会の議事録は、当該各号に定める事項を内容とするものとする。
 法第370条の規定により取締役会の決議があったものとみなされた場合 次に掲げる事項
 取締役会の決議があったものとみなされた事項の内容
 イの事項の提案をした取締役の氏名
 取締役会の決議があったものとみなされた日
 議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名
 法第372条第1項(同条第3項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)の規定により取締役会への報告を要しないものとされた場合 次に掲げる事項
 取締役会への報告を要しないものとされた事項の内容
 取締役会への報告を要しないものとされた日
 議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名

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