取締役会がない会社(以下「取締役会非設置会社」といいます。)であっても、取締役が複数いる場合には、決議して意思決定を行う必要があります。
このコラムでは、情報が少ない取締役会非設置会社における取締役の決議方法(取締役決定の方法)について説明します。
会社法第348条(業務の執行) | |
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「取締役が2人以上いる場合には、株式会社の業務は、定款に別段の定めがある場合を除き、取締役の過半数をもって決定する」(会社法348Ⅱ)と定められています。
これ以外に特に取締役の決定に関する規定はありません。
すなわち、整理すると下表のようになります。
取締役会非設置会社 | 取締役会設置会社 | |
▼ | ▼ | |
取締役決定 | 取締役会決議 | |
招集権者 |
取締役全員が集合して会議をする必要がないので、招集権者を概念できない。 |
各取締役(会366) 株主(会367) |
招集通知 | 不要 |
取締役会の1週間前までに招集通知を発信必要(会368) |
集合 |
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定足数 | 取締役の過半数(会348Ⅱ) |
取締役の過半数(会369Ⅰ) |
議決要件 | 出席取締役の過半数(会369Ⅰ) | |
議事録 | 議事録作成義務はない。 |
議事録作成義務がある。議事録には出席取締役、出席監査役の署名又は記名押印が必要(会369Ⅲ) 10年間の保存義務(会371Ⅰ) 株主の閲覧請求権(会371ⅡⅢⅣⅤ) |
利益相反行為 | 利益相反行為の承認は、取締役会非設置会社では、取締役決定で行えず、株主総会で行う必要がある。 |
利益相反行為の承認は、取締役会のある会社は取締役会で行うことができる。 |
取締役会への報告 |
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【1】物理的に取締役が誰も集まらないで行う決議方法のこと。
【2】一部の取締役のみが物理的に集まり、他の取締役が書面や委任状で議決権を行使すること。
【3】取締役会非設置会社の取締役決定では、そもそも集合することが要求されておらず、出席していない取締役が議決権を行使するための方法にも法律上の制限は特にありません。そこで、書面による議決権行使や委任状出席を認められる可能性が高いと思います。また、これを否定した書籍や裁判例は見当たりません(書面決議〔みなし決議〕の成立には取締役全員の意見が一致する必要がありますが、書面による議決権行使や委任状出席を認める場合には反対票を投じる者がいても賛成票が反対票を上回れば議案が可決されるという点で、意義があります。)。
【4】詳しくは、コラム「取締役会の書面決議(決議省略・みなし決議)/書面による議決権行使・委任状出席/テレビ会議・電話会議などによる参加」をご参照ください。
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