株主総会のバーチャル開催(ZOOMなどテレビ電話を利用した開催)、ハイブリッド開催


コロナ危機を契機に、バーチャル総会・ハイブリッド総会などの単語がネット上に見受けられるようになりました。

司法書士が実務経験を元に、バーチャル総会・ハイブリッド総会の開催のために必要なノウハウをお伝えします。

もくじ
  1. バーチャル総会・ハイブリッド総会って何なの?!
  2. 出席型と参加型の違い
  3. ハイブリッド「出席型」取締役会議事録・株主総会議事録(ひな形)
  4. 東京株式懇話会
  5. 人気の関連ページ

バーチャル総会・ハイブリッド総会って何なの?


バーチャル総会とは、何がバーチャルなのか?!

ハイブリッド総会とは、何と何が組み合わさっているのか?!

下表をご覧ください。

 

 

 

 

無 

バーチャルオンリー

株主総会

 

リアル株主総会を開催しない。

株主・役員だけでなく代表取締役も「株主総会という場」に出席せず、全員が自宅などに居ながら行なう株主総会。

 

う【2】

       

ハイブリッド「出席型」

株主総会【1】

 

リアル株主総会を開催する。

株主総会の場に居ない株主は・・・

  • インターネットを通じて株主総会を閲覧する。
  • 質問や議決権行使もインターネットを通じて行なう。
  • 会場株主もインターネット参加株主も相互に見える。
  • 株主総会への出席となる。

ハイブリッド「参加型」「傍聴型」

株主総会【1】

リアル株主総会を開催する。

株主総会の場にいない株主は・・・

  • インターネットを通じて株主総会を閲覧する。
  • 質問(会社法314)、動議(会社304等)は出来ない。
  • 議決権行使は委任状や書面による議決権行使などで行なう。
  • 会場株主にはインターネット参加株主の顔は見えない。
  • 株主総会への出席ではない。

リアルオンリー

株主総会

役員株主が一か所に参集して行なう株主総会。  

【1】経済産業省の定義は次のとおりです。

ハイブリッド「出席型」

バーチャル株主総会 

リアル株主総会の開催に加え、リアル株主総会の開催場所に在所しない株主が、インターネット等の手段を用いて、株主総会に会社法上の「出席」をすることができる株主総会をいう。

ハイブリッド「参加型」

「傍聴型」バーチャル株主総会

リアル株主総会の開催に加え、リアル株主総会の開催場所に在所しない株主が、株主総会へ法律上の「出席を伴わず」に、インターネット等の手段を用いて審議等を確認・傍聴することができる株主総会をいう。

「傍聴型」と言い換えようという動きがある。

【2】2020年度版・ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド・経済産業省

現行法上、バーチャルオンリー型は会社法上認められない。

株主総会招集通知には、開催場所の記載が義務づけられている(会社法298Ⅰ①、299)。

株主総会議事録には、開催場所の記載が義務づけられている(会社法318Ⅰ、会社法施行規則72Ⅲ)。

今後、バーチャルオンリー型容認へ

令和2年12月1日成長戦略会議において、バーチャルオンリー型を容認すべく関連法案を通常国会に提出予定。

その他のバーチャル株主総会(出席型)は、法律上も想定されている。

株主総会議事録の法定記載事項について定めた会社法施行規則72Ⅲ①括弧書きには、次の記載があります。

当該場所に存しない取締役、執行役、会計参与、監査役、会計監査人又は株主が株主総会に出席をした場合における当該出席の方法を含む。

「そこに存在せずに、出席する方法」すなわちインターネットを通じたバーチャル出席ということです。

出席型と参加型の違い



経済産業省「ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド

ハイブリッド【出席型】バーチャル株主総会

メリット 留意事項
  1. 遠方株主の出席機会の拡大。
  2. 複数の株主総会に出席することが容易になる。
  3. 株主総会での他の株主の質疑等を踏まえた議決権の行使が可能となる。
  4. 質問の形態が広がることにより、株主総会における議論(対話)が深まる。
  5. 個人株主の議決権行使の活性化につながる可能性がある。
  6. 出席方法の多様化による株主重視の姿勢をアピールできる。
  7. 株主総会の透明性の向上。
  8. 情報開示の充実。

                      

  1. 質問の選別による議事の恣意的な運用につながる可能性。
  2. 円滑なバーチャル出席に向けた関係者等との調整やシステム活用等の環境整備。
  3. 株主がインターネット等を活用可能であることが前提。
  4. どのような場合に決議取消事由にあたるかについての経験則の不足
  5. 濫用的な質問が増加する可能性。
  6. 事前の議決権行使に係る株主のインセンティブが低下し当日の議決権行使がなされない結果、議決権行使率が下がる可能性。
  7. 肖像権等への配慮(ただし、株主に限定して配信した場合には、肖像権等の問題が生じにくく、より臨場感の増した配信が可能。)
  8. 株主の本人確認

2020年2月26日経済産業省策定・ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイドより。但し留意事項「7、8」は当職において加筆した。

ハイブリッド【参加型】バーチャル株主総会

  メリット 留意事項
  1. 遠方株主の株主総会参加・傍聴機会の拡大。
  2. 複数の株主総会を傍聴することが可能になる。
  3. 参加方法の多様化による株主重視の姿勢をアピールできる。
  4. 株主総会の透明性の向上。
  5. 情報開示の充実。

                      

  1. 円滑なインターネット等の手段による参加に向けた環境整備が必要。
  2. 株主がインターネット等を活用可能であることが前提。
  3. 肖像権等への配慮(ただし、株主に限定して配信した場合には、肖像権等の問題が生じにくく、より臨場感の増した配信が可能。)

2020年2月26日経済産業省策定・ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイドより。

ハイブリッド「出席型」取締役会議事録・株主総会議事録ひな形


「株主の顔と氏名が一致する」規模であれば、「出席型」での開催をオススメしています。

株主総会招集のための取締役会(取締役会もバーチャルで開催した場合)

取締役会議事録
令和2年〇月〇日午前9時30分から、当社本店会議室及び当社大阪支店会議室において、インターネット回線及びWeb会議用装置からなるWeb会議システムを用いて、取締役会を開催した。
開催場所 東京都○○区○○1-1-1当社本店会議室 
  大阪大阪府大阪市○○区○○2-2-2当社大阪支店会議室 
出席取締役及ぴ監査役 当社本店会議室 取締役A、B及び監査役D 
  当社大阪支店会議室 取締役C(Web出席) 【1】
上記のとおり、本店会議室及ぴ大阪支店会議室における全取締役及び監査役の出席が確認され、代表取締役Aが議長となって、本取締役会はWeb会議システムを用いて開催する旨宣言した。
Web会議システムにより、出席者の音声が即時に他の出席者に伝わり、出席者が一堂に会するのと同等に適時的確な意見表明が互いにできる状態となっていることが確認されて、議案の審議に入った。
第1号議案 定時株主総会招集の件
議長は、今般株主総会を招集する必要がある旨を述べ、その審議を諮ったところ、全会一致をもって下記のとおり承認可決した。
開催日時 令和2年〇月〇日(曜日)午前〇時より  
開催場所 東京都○○区○○1-1-1当社本店大ホール  
会議の方法 株主及び役員に対してWeb会議システムを用いた出席を認める。  
会議の目的たる事項 第1号議案 事業報告及び計算書類等承認の件  
  第2号議案 定款変更の件  
  第3号議案 取締役1名選任の件  
     
第2号議案 定時株主総会に提出する議案

議長は、定時株主総会に提出する議案を次のとおりとしたい旨を述べ、その審議を諮ったところ、全会一致をもって下記のとおり承認可決した。

 (報告事項)

1.当期事業報告の件(別紙「事業報告書」記載のとおり)

2.監査報告(別紙「監査報告書」記載のとおり)

(決議事項)

1.第〇期貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書及び個別注記表承認の件

別紙「」記載のとおり

2.定款変更の件

・・・・・

3.取締役1名選任の件

・・・・・

     
以上、本日のWeb会議システムを用いた取締役会は、終始異状なく議案の審議を終了したので、議長は午前11時10分閉会を宣言した。
この議事の経過の要領及ぴ結果を明確にするため、本議事録を作成し、出席取締役及び監査役はこれに記名捺印する。
令和〇年〇月〇日 株式会社〇〇 取締役会
 

議長代表取締役 〇〇〇〇 ㊞

(議事録作成者)       

 
  出席取締役   〇〇〇〇 ㊞  
  出席取締役   〇〇〇〇 ㊞  
  出席監査役   〇〇 〇 ㊞  

【1】会社法施行規則101Ⅲ①

なお、一般社団法人の理事会にも同様の規定があります(一般社団法人法施行規則15Ⅲ①)。

ハイブリッド「出席型」バーチャル株主総会議事録

定時株主総会議事録
令和2年〇月〇日午前9時30分から、当社本店会議室において、Web回線及びWeb会議用装置からなるWeb会議システムを用いて、定時株主総会を開催した。
議決権ある当社株主総数 〇名  
議決権ある発行済株式総数 〇株  
総株主の議決権数 〇個  
本日出席株主数 〇名(委任状出席及びWeb出席を含む)【2】  
この議決権のある持株総数 〇株  
この議決権数 〇個  
上記のとおり出席が確認され、代表取締役Aは議長席に着き、開会を宣言した。
また、Web会議システムにより、出席者の音声が即時に他の出席者に伝わり、出席者が一堂に会するのと同等に適時的確な意見表明が互いにできる状態となっていることが確認されて、議案の審議に入った。
第1号議案 事業報告及び計算書類等承認の件
議長は、・・・
     
第2号議案 定款変更の件
議長は、・・・
     
第3号議案 取締役1名選任の件

議長は、・・・

     
以上、本日のWeb会議システムを用いた定時株主総会は、終始異状なく議案の審議を終了したので、議長は午前11時10分閉会を宣言した。
この議事の経過の要領及ぴ結果を明確にするため、本議事録を作成し、出席取締役及び監査役はこれに記名捺印する。
令和〇年〇月〇日 株式会社〇〇 定時株主総会
 

議長代表取締役 〇〇〇〇 ㊞

(議事録作成者)       

 
  出席取締役   〇〇〇〇 ㊞  
  出席取締役   〇〇〇〇 ㊞  
  出席監査役   〇〇 〇 ㊞  

【2】会社法施行規則72Ⅲ①。

なお、一般社団法人の理事会にも同様の規定があります(一般法人法施行規則11Ⅲ①)。

東京株式懇話会


株式実務の確立に影響力のある東京株式懇話会が、2021年10月22日付「バーチャル総会の運営実務」を公開していますので、ご参照ください。

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