株式を複数の相続人で、相続すると、その株式が相続人の数で割りきれる場合であっても、遺産分割協議成立までの間は、相続人全員で、株式を共有することになります(最高裁判決H3.2.19、最高裁判決H9.1.28)。
会社側は、間違った株主に権利行使(配当、株主総会での議決権行使など)させないよう注意する必要があります。
また、同族会社の場合には、名義株の問題(本来は、相続財産ではない)なども発生することがございます。
同族会社の株主に相続が発生し、遺産分割協議がまとまらない場合、取り敢えず「株主権行使代表者」を選定することが出来ます。
その場合の「会社側」「株主(相続人)側」の対応は次のとおりです。
株主権行使代表者選任【1】の | ||
「前」 | 「後」 | |
会社側 |
●行使代表者の選任なしでは議決権行使を認めない場合☞株主総会招集通知は、相続人に送付しなくて良い【2】 ●行使代表者の選任なしでも議決権行使を認める場合☞株主総会招集通知は、相続人の誰かに送れば良い(会社法126Ⅳ) |
株主総会招集通知は、行使代表者に送る【3】。 |
株主(相続人)側 |
議決権は、毎回、共有者間で協議した上【4】、 会社の同意を得て行使必要(会社法106但書)。 |
議決権は、行使代表者が単独で行使しうる(会社法106条)。【5】 |
【1】議決権行使代表者を誰にするかは、相続人の相続持分の過半数で決定する(最判H9.1.28)。
【2】新基本法コンメンタール会社法1・239p
∵議決権行使を認めない場合、招集通知を発する必要はない(会社法299Ⅰ)。
【3】「株主権行使代表者の届け出(会社法106)」と「通知受領者の届け出(会社法126Ⅲ、198Ⅲ)」があった場合☞行使代表者の届け出を優先する(新基本法コンメンタール会社法1・239p)。
【4】どのように議決権を行使するかは、相続人の相続持分の過半数で決定する。議決権の行使をもって直ちに株式を処分し、株式の内容を変更することになる場合を除く。
【5】議決権行使代表者は、自己の判断に基づき議決権を行使することができる(最判S53.4.14)。
株式を所有した方が、死亡すると相続が発生し、株式を相続人全員が共有することになります。
相続人らは、株主権行使代表者を指定し、かつ、会社に通知しなければ、株式の議決権を行使できません(会社法106)。
相続をなさった方、自社株式について相続があったとこを知った法人ご担当者は、お早めに最寄りの当グループ事務所にご相談ください。
相続人を確定するために、被相続人の12歳程度から死亡までの戸籍を収集します。ご兄弟が被相続人の場合には、ご両親の12歳程度から死亡までの戸籍も必要です。
会社に提出するために法定相続情報証明書にしておくと、戸籍全部を提出する必要がなく、(会社側も戸籍を全部読む必要がなく)大変便利です。
遺産分割協議への参加を呼び掛けたけれども、合意に達しなかったときは、株主権行使代表者の選定を検討します。【1】
遺産分割協議成立までの間に、株主権を行使する必要がある場合には、株主権行使代表者を選任します。株主権行使代表者の選任は、相続持分の過半数で決定します(∵民法上の共有における管理行為。最判平成9.1.28)。【2】【3】
株主権行使代表者に選任された方は、会社に対して、「共有株式における株主権行使代表者選定届」を提出します。
権利行使代表者は、自己の判断に基づき議決権を行使できます(∵相続人間で権利行使方法の合意があったとしても、合意は内部的な合意で会社に対抗できない。最判昭和53.4.14)。
株式を誰が相続するか、相続人全員で協議が成立すれば、遺産分割協議書を作成します。
株式を相続した相続人は、会社に対して、法定相続情報証明書・遺産分割協議書を添えて、株主名簿に登録された株式の名義を自己に変更する旨を請求します。
【1】権利行使者の選任は、全相続人が参加して協議すべきで、一部相続人に対して協議に参加する機会を与えず、過半数で決定した権利行使代表者の選任・通知を無効とした事例(大阪地裁平成9.4.30判決)もありますので注意が必要です。
【2】株式の処分や、株式の内容に変更を加えるような議案の場合には、相続人全員の同意が必要となる場合もあります。
【3】反経営者グループ相続人による権利行使代表者の指定・議決権行使が権利濫用として認められなかった事例(大阪高裁H20.11.28)もありますのでご注意ください。
大阪高裁の事例
①相続により株式が準共有の状態となり、遺産分割終了までの間のみ僅差で(非後継者グループ相続人が)過半数の株式を占めることとなることを奇貨とし
②会社経営を混乱に陥れることを意図し、
③権利行使者の指定について共同相続人間で真摯に協議する意思を持つことなく、いわば問答無用的に権利行使者を指定した
④平行して行なわれていた遺産分割審判事件では、株式全部を後継者に取得させる審判が出ていた(即時抗告あり、未確定)
☛このような権利行使者の指定と議決権行使は権利濫用にあたり、無効。
相手方ご相続人の対応にもよりますが、概ね次のとおりです。
手続き | 所要時間 |
戸籍収集 | 2~3か月 |
遺産分割協議打診~回答 | 1か月 |
遺産分割協議不成立・株主権行使代表者選定 | 1か月 |
会社への通知 | 1~2週間 |
計 | 5~6か月 |
業務の種類 | 司法書士の手数料 | 実費 | |
戸籍収集 | 親子間のご相続 | 11,000円(税込)~ | 3,000円~ |
兄弟間のご相続 | 22,000円(税込)~ | 5,000円~ | |
子のない夫婦間の相続 | 22,000円(税込)~ | 5,000円~ | |
相続関係説明図作成 | 33,000円(税込)~ | 0円 | |
相続関係説明図を法務局に提出し |
11,000円(税込)~ | 郵送費 | |
他の相続人との連絡調整 |
22,000円(税込)~ ×相続人の数 |
郵送費 | |
共有株式における株主権行使代表者 兼 通知催告受領者選定届の作成 |
5,500円(税込) | 郵送費 |