業務委託契約とは何か?事業者がキッチリ分けて理解すべき請負契約と委任契約


業務委託契約といっても2種類あります。

「仕事の完成」を目的とする業務委託契約と、そうではない業務委託契約です。

この「仕事の完成を目的とするか否か」という違いは、当然、作成すべき契約書にも違いを生じさせます。

この記事では、①2種類の業務委託の違いを説明したのち、②それぞれの契約書において重要な条項を説明します。 

もくじ
  1. 大きく分けて2種類ある業務委託
  2. 請負(成果物あり型業務委託契約)と委任(成果物なし型業務委託契約)の違い
  3. 請負と委任それぞれに必要な契約条項

大きく分けて2種類ある業務委託


ホームページ制作会社を想像してください。

ホームページ制作会社の仕事は色々ありますが

①ホームページ制作

②ホームページへのアクセス増加を目指すコンサルティング

を思い浮かべてください。

 

①ホームページ制作の依頼を受けたときは「ホームページ制作」という『仕事の完成』を目的としています。

②コンサルティングであれば、『仕事の完成』を目的としていません(通常、コンサルティングはアクセス数の確実な増加を保証しません。)。

 

仕事の完成を目指すか否かによって、全く異なる契約になるのです。

請負(成果物あり型業務委託契約)と委任(成果物なし型業務委託契約)の違い


  • 「何か」を完成するべき義務を負う場合には『請負契約』や『成果物あり型業務委託契約』という類型になります。ちなみにこの「何か」のことを「成果物」といいます。
  • 「何か」を完成する義務はなく、それ以外の義務を負う場合には『委任契約』や『成果物なし型業務委託契約』という類型になります。

契約書の精査を依頼され、事業内容をお伺いすると、この二つの契約を混同なさっている企業様が大変多いです。業務委託契約書のまず第一歩は、この「成果物がある/ない」点ですので、しっかりご理解いただきたいと思います。

 

請負契約

業務委託契約(成果物あり型)

委任契約

業務委託契約(成果物なし型)

法律の規定 民法632~642 民法643~656
契約の目的

仕事の完成

 ▼

依頼者の望む結果が完成しなければ契約違反。

専門知識に基づく事務等の処理

 ▼

依頼者の望む結果が出なくても契約違反ではない。

契約の例

HP制作契約

 

建物建築契約

HP改善コンサルティング契約

 

司法書士と企業との顧問契約

受注者の義務

仕事の完成義務を負う。

善管注意義務を負わない【1】。

仕事の完成義務は負わない。

善管注意義務を負う。

報酬請求権

原則:仕事の完成後

例外:契約で別の定め

原則:委任事務履行後

例外:契約で別の定め

契約解除権

発注者:仕事完成までいつでも解除できる。

受注者:解除できない。

いつでも解除できる。

ただし不利なときに解除したとき

担保責任 受注者は、完成品が契約内容に適合しなければ契約不適合責任を負う。 規定なし
報告義務 報告義務なし

発注者の請求があればいつでも報告

委託事務終了後は顛末報告義務

印紙税 課税文書 原則不課税

契約書のタイトルが同じ「業務委託契約書」であったとしても、契約内容によっては、これだけ法律関係が異なります。

請負と委任それぞれに必要な契約条項


法律関係が異なるので、契約書で定めておくべき事項も当然異なります。

そして、2種類の契約の特性から、それぞれ必要な契約条項は、次のとおりになります。

 

請負契約

業務委託契約(成果物あり型)

委任契約

業務委託契約(成果物なし型)

必要な契約条項 詳細な「成果物の仕様」  業務の提供方法
報酬の支払時期・方法 報酬の算定・時期・方法
納期 契約期間(自動更新の有無)
成果物の権利帰属 ×(不要)
成果物の検査・検収 ×(不要)
契約不適合責任 ×(不要)
実費の負担者 実費の負担者
再委託の可否 再委託の可否
損害賠償責任(の制限) 損害賠償責任(の制限)