「株主リスト」は、司法書士ではない方にとっては、聞き慣れない言葉だと思いますが、株主名簿のことです。
ただし、貴社の株主名簿を法務局提出用に加工しなければなりません。
この記事では「株主リストの基本」から、「特殊事情があるとき株主リストはどう加工すべきか」についてまで解説しています。
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下記3種類の会社法人について、会社法人登記を申請する場合、株主リストの提出が必要になることがあります。
下記2種類の登記について、株主リストの提出が必要になります。
法務局が公開している書式は下記のとおりです。
下記リンクから書式と記載例をダウンロードできます。
株主リストは、出欠表ではないので、欠席株主であっても株主リストに記載が必要です。
株主リストは、賛成者一覧ではないので、議案に反対した株主であっても株主リストに記載が必要です。
会社が、その会社の株式を自分で保有していること(または保有している株式)のことを自己株式(じこかぶしき)や金庫株(きんこかぶ)といいます。
自己株は、株主総会において議決権を有しません(会社法308Ⅱ)ので、次のとおり処理します。
株主に相続があったときと一言でいっても、色々な段階があります。
下のフローチャートは、法務省HP「主要な株主Aが死亡した場合の株主リストの記載」からダウンロードしたものに、解説を加えたものです。
【1】基準日とは、会社が株主の権利行使を確定するために定める特定の日付です。この日に株主名簿に記載または記録されている株主が、特定の権利を行使できる者として認められます(会社法124条)。
基準日の主な特徴
基準日の具体例
【2】会社法は「会社が株主に対してする通知などは、株主名簿に記載された株主の住所にあてて発すれば足りる」と定めています(会社法126Ⅰ)。さらに「会社が、株主名簿に記載された株主の住所に対して発した通知などは、(株主が会社に対して住所変更届け出を失念していたために、株主の手元に届かなかったとしても)通知が通常到達すべきであった時に、到達したものとみなす」とも定めています(会社法126Ⅱ)。
また、ほとんどの会社はその定款に「当会社の株主及び登録株式質権者又はその法定代理人若しくは代表者は、当会社所定の書式により、その氏名又は名称、住所及び印鑑を当会社に届け出なければならない。届出事項に変更を生じたときも、その事項につき、同様とする。」と定めています。
何を申し上げたいかと言いますと、住所変更届や相続開始届は株主の義務で、これを株主が怠った不利益は株主が負ってくださいよということなんです。
【3】「株主Aの相続人の全員が誰であるのか」を会社が知る方法は、次の2つです。
〔方法A〕株主Aの相続人から「株主Aの出生から死亡までの全ての戸籍・除籍・原戸籍の謄本すべて」の提出を受ける
〔方法B〕株主Aの相続人から「株主Aについて作成された法定相続情報証明書」の提出を受ける。
〔方法A〕は、貴社において戸籍を読み解く必要があります。戸籍を読み慣れた方が社内にいる場合、または司法書士にチェックを依頼した場合でないと不可能だと思います。戸籍謄本は個人情報のかたまりですので、チェックした後の戸籍の管理も大変です。
一方〔方法B〕は、法務局が戸籍の束をA4用紙1枚程度の証明書にしたものですから、貴社は楽です。
断然〔方法B〕法定相続情報証明書の提出を受けることをお薦めします。なお、法定相続情報証明書について、より詳しく知りたい方は記事「法定相続情報~ややこしい戸籍を読むのは司法書士が一回で十分です。銀行預金の相続手続前に司法書士にご依頼ください。」をご参照ください。
【4】遺産共有が解消されている=「遺産分割協議が成立している」ことを会社が確認するためには、遺産分割協議書(相続人全員の実印押印)と印鑑証明書の提出を受け、これをチェックする必要があります。会社は、株主Aの相続人に対して「遺産分割協議書のひな形」を交付し、記載させる必要があります。
【5】遺産分割協議書と印鑑証明書を確認できた場合、会社は、株主Aの相続人に対して「名義書換請求書」の提出を求めます。株式の相続手続については、記事「株式・株券の相続手続」もご参照ください。
【6】会社法106条による株主権行使代表者とは、株主Aの相続人全員が、会社に対して「遺産分割協議が成立するまでの間、暫定的に株主権を行使する者」を指定することです。
株主権行使代表者について、より詳しく知りたい方は記事「株式の相続/株主権行使代表者」をご参照ください。
株主リストは本来、法人印が必要な書類ではありません。
司法書士は、法人の許可を得て、法人印押印のないものと差し替えることにより対応可能です。