知的財産権(著作権・実用新案権・特許権・意匠権・商標権など)


中小零細企業・個人事業主にとって知的財産は、ほど遠い印象があるかもしれません。

しかしながら、知的財産は、事業規模に関係なく非常に大切なものです。

 

例えば、知的財産は

  1. 金のなる木です。登録機会を逃すことがあってはなりません。
  2. 自社で開発したものでも、他社が登録を先行すると窮地に立たされることがあります。
  3. 他者のものを侵害すると、受けるペナルティは大きいです。
  4. 発表してしまうと登録できない権利の種類もあります。

したがって、中小企業経営者・幹部の皆さんは、知的財産が何なのかをボンヤリとでも把握し、 必要に応じて然るべき専門家にご相談・ご依頼をなさるべきです。

知的財産の専門家は、司法書士ではなく、弁理士です。ところが、貴社が獲得すべき知的財産の種類などによって、どの弁理士が良いか異なります。

そこで、当グループでは、主に顧問先・関与先の皆様を中心に、皆様の会話の中から登録すべき知的財産がないのか常に目を光らせて、知的財産の登録機会を逃さず、貴社の発明に適した弁理士をご紹介しています。

もくじ
  1. 知的財産とは
    1. 著作者の権利(著作権と著作者人格権の違い)
    2. 職務著作
    3. 特許と実用新案権の違い
  2. 特許登録までの流れ
  3. 当グループにおける知財保護の取組み
  4. Q&Aよくあるお問い合わせ
  5. 人気の関連ページ
  6. 参考書籍等

〔凡例〕この記事では、次のとおり略記しています。

知的:知的財産基本法

著:著作権法

特許:特許法

実用:実用新案法

意匠:意匠法

商標:商標法

知的財産とは


下記の権利を指します。

      保護の対象 権利の発生 存続期間

著作権〔著作権法〕【1】

音楽、映画、絵画 創ったとき 創ったとき~著作者死後70年

特許権〔特許法〕

発明 登録 出願~20年

実用新案権〔実用新案権法〕

特許よりも水準の低い発明 登録 出願~10年

意匠権〔意匠法〕

デザイン【2】 登録 登録~20年

商標権〔商標法〕

商品やサービスの名称【3】 登録

登録~10年。何度でも更新可能

回路配置利用権

〔半導体集積回路の回路配置に関する法律〕

半導体集積回路の回路配置の利用を保護 登録

登録~10年

育成者権〔種苗法〕 植物の新品種を保護 登録 登録から25年。樹木は30年。

営業秘密等

〔不正競争防止法〕

不正競争を規制    
著作権法上の権利 

(創作する者)

著作者の権利(著10~)

著作者人格権(著18~)
著作権(著21~)

(普及する者)

著作隣接権者の権利(著89~)

実演家の権利(著90の2~)
レコード製作者の権利(著96~)
放送事業者の権利(著98~)
有線放送事業者の権利(著100の2~)
出版権(著79~88)

(特許庁「知的財産法入門」/101頁参照/最終アクセス240830

【2】令和2年以降「建築物」や「内装のデザイン」も登録することができるようになりました。

  • 建築物として「ユニクロPARK 横浜ベイサイド店」「上野駅公園口駅舎」
  • 内装デザインとして「蔦屋書店」「回転寿司店の内装」

などが登録されています。

【3】平成27年以降「色彩のみからなる商標」も登録することができるようになりました。セブンイレブンや三井住友銀行などが取得しています。

著作者の権利(著作権と著作者人格権のちがい)

    

著作権

(財産権)

 

著作物を他人に利用させて、利用料などを貰える権利(財産権)

他人に譲渡できる。

著作権の種類 著作権の内容
複製権(著21) コピーする権利
上演権・演奏権(著22) 人前で演じる権利
上映権(著22の2) 上映する権利
公衆送信権(著23) テレビ・ラジオなどで送信する権利
口述権(著24) 公に口述する権利
展示権(著25) 展示する権利
頒布権(著26) 他人に渡したりして広げる権利
譲渡権(著26の2) 売却する権利
貸与権(著26の3) 貸し出す権利

翻訳権【1】

編曲権

変形権

脚色権

映画化権

翻案権【1】

(以上、著27)【3】

翻訳する、編曲する、映画化する、翻案する権利

☛翻訳・映画化された物を「二次的著作物」という。

☛二次的著作物に対しては、二次的著作者にくわえて、原作者も著作権を有する。

二次的著作物に対する権利

(著28)【2、3】

 

著作者

人格権

著作者の名誉を守る権利(人格権)

他人に譲渡できない。

著作権を譲受したのに、著作者人格権を主張されないようにするためには、「著作者人格権を行使しない。」との契約が必要。

人格権の種類 人格権の内容
⑴公表権(著18Ⅰ) 著作物の公表の時期、方法を決める権利
⑵氏名表示権(著19Ⅰ)

著作物に

著作権表示をするかしないか、

実名を表示するかペンネームにするか

決める権利

⑶同一性保持権(著20Ⅰ) 著作物を無断で改変されない権利
⑷名誉を害する利用を禁止する権利(著113Ⅵ)  

【1】翻訳と翻案

翻訳権とは、別の言語に翻訳する権利。

翻案権とは、元の著作物の特徴を活かしながら、別の表現形態に変えたり(たとえば漫画を映画化すること)、一部を変更して別の作品を創作すること(例えばスピンオフ作品の創作)です。

【2】二次的著作物とは

著作物を翻訳、編曲、変形、脚色、映画化、翻案することにより創作した著作物をいいます(著2⑪)。

【3】特掲

「著作権を譲渡する契約において、第27条又は第28条に規定する権利が譲渡の目的として特掲されていないときは、これらの権利は、譲渡した者に留保されたものと推定する。(著作権法61Ⅱ)」

 ▼

著作権の譲渡を受けたから、映画化するぞと思っていても、著作権譲渡契約書に「著作権(著作権法第27条及び第28条の権利を含む。)」と記載していなければ、27条28条の権利は、譲渡した方に留保されたものと推定されるので、ご注意ください。

職務著作と職務発明

従業員が職務上作成した著作物又は発明は、誰が権利を有するのか?

職務著作 職務発明
著作権法15条 特許法35条
  • 原則:著作者は、その法人等の使用者
  • 例外:作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがあるときは従業員
  • 契約、勤務規則その他の定めにおいてあらかじめ使用者等に特許を受ける権利を取得させることを定めたときは、その特許を受ける権利は、その発生した時から当該使用者等に帰属する。
  • 契約、勤務規則等においてあらかじめ使用者等に特許を受ける権利を取得させることを定めていなかったときは、その特許を受ける権利は、その発生した時から従業員に帰属する。従業者等は、特許を受ける権利等を使用者等に承継等させた場合、相当の金銭その他の経済上の利益を受ける権利を有する。

特許と実用新案権のちがい

  特許 実用新案権
仕組み
  • 審査【1】を通って、はじめて特許となる。 
  • 無審査で登録される。
  • 先に登録されていても、登録できる。
  • 侵害されたときに、申立てによって、審査官が審査し、評価書をくれる。
  • 評価書で6番と評価されれば、評価書と警告書を同時に相手方に送付する。
登録までの期間 2~3年 3か月
弁理士費用 60万円 30万円

【1】審査されるのは、次の2点です。

⑴ 新規性:全く新しいモノか、世界中のモノと比較し、チェックされます。出願されていても、販売されていてもダメです。また、チェックは世界中のモノと比較されますが、登録は日本だけになります。世界で登録したければ、国際出願が必要です。

⑵ 進歩性:既にあるモノを組み合わせただけじゃないか?審査官に指摘されたときに反論できるのは、最初の出願の範囲内のみというルールがあります。従って、最初の出願のときに、様々なバリエーションを提出するべきです。

特許登録までの流れ


お客様   弁理士
     
特許を出願したい発明を弁理士に説明    
   

発明のバリエーションを考え、

弁理士に説明

 

説明を受けた発明が新規性・進歩性

のあるものかを調査

 
  特許庁に出願
出願後、発表する【1】  
 
発明が売れるものか、試す   3年後
 
審査請求を弁理士に依頼   審査請求
   
    特許が登録される

【1】出願までは、外部に一切情報が漏れないように(持ち歩いたり、HPへの掲載も不可です。)、ご注意ください。出願までにその発明が世に出ていたことが特許庁に知られると、特許が認められないことがあります。

当グループにおける知財保護の取組み


当グループが、主に顧問先・取引先の皆様に関して提供する「知的財産保護の取り組み」は次のとおりです。

問題的など 当グループでの対応

中小企業にとって、知的財産をキッチリと登録したり、管理したりするのは、とても重要!

知的財産は、お金になる可能性があるからです!

 

でも、知的財産管理のために、弁理士を常駐させる企業は少ない。。。

【登録機会を逃さない】
  1. 常日頃接する顧問先や関与先の皆様とお話しする中で、
  2. 貴社が登録しておくべき知的財産の種を発見した場合には、
  3. すばやく知的財産の専門家・弁理士におつなぎすることで、
  4. 貴社の知的財産をガッチリ保護し、
  5. 登録機会を逃しません。

M&A、企業法務などでも、知的財産に対するケアは重要。

【契約書精査】

  • 契約書精査では、知的財産にも気を遣います。
知的財産の侵害に対しては、民事上の損害賠償のほか、罰則もございます。

【知的財産侵害】

  • 顧問先や関与先が、知的財産侵害をして、ペナルティーを受けないように、しっかりと見守ります。
どの弁理士に依頼すれば良いか、わからない。

【弁理士を紹介】

  • 貴社の案件に最適な弁理士をご紹介します。
  • 弁理士報酬や特許出願費用などについては、NEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)の助成を受けられることもあります。弁理士も知らないことが多いですので、ご紹介時にお知らせします。

Q&A よくあるお問い合わせ

中小零細企業と知的財産について


Q.当社は零細中小企業なので、知的財産とか無縁だと思うのですが?

有名な発明なのに、特許を取得していなかったために、巨富を稼ぎ損ねたものに「カラオケ」や「石焼きピビンバの石」があります。

一方、フランチャイズ本部なのに、サービス名称を商標登録していなかったために、フランチャイズとは無縁の他者が、同様のサービス名称を利用し、トラブルになった例もあります。

このように、中小企業も知的財産と無縁ではないのです。必要なものは登録し、保有する知的財産が他者から侵害された場合には、しかるべく措置を取ることも必要なのです。

当グループでは、顧問先・顧客の皆様の知的財産にも意識して気配りを行ない、しかるべきアドバイスを行ないます(令和元年8月・あなまち司法書士事務所・司法書士佐藤大輔)。


参考書籍など


この記事を執筆するために参照にした書籍等は、次のとおりです。

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