✔ 法律で設置が義務づけられている企業は勿論
✔ 設置が義務づけられていない企業にとっても
支払う役員報酬以上のメリットがある社外役員制度を分かりやすく説明します。
もくじ | |
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社内の「しがらみ」に囚われない、客観的な視点で問題提起や提案を行なうことができます。
別の会社の経営者であれば、その経営者が有している智恵・経験を貴社のものとすることが出来ます。
貴社にとっての常識が、世間一般からすれば非常識であることもあり得ます。それを指摘することも社外役員の仕事です。
さらに、専門家であれば、その専門家が有している知識・経験をも貴社のものとすることが出来ます。
社内で出世していかなければならない生え抜きの役員の方が言いにくいことでも、社外役員はハッキリと申し上げます。
これによって、不祥事の発生をある程度抑止することができます。
社外役員による監督効果が働くことで、会社の意思決定の過程が透明化され、関係先に安心してもらうことが可能です。
社外役員が、司法書士などのいわゆる専門家であれば、尚更この効果は大きくなります。
1 | 特別取締役を選定する会社(会373以下)【1】 |
2 |
監査役会設置会社(会327の2)【2】 |
3 |
監査等委員会設置会社(会331Ⅲ)【2】 |
4 | 指名委員会等設置会社(会400Ⅲ)【2】 |
5 | 上場規程において社外役員の設置が義務づけられている場合【3】 |
上場企業は、上記2~4のいずれかの組織形態を採用する必要がありますので、社外役員が必須です。
【1】特別取締役とは(会373以下)
取締役の数が多い会社の場合、取締役会決議の要件「過半数出席・過半数賛成」を緊急に充すことが困難であることがあります。そこで、条件を満たした会社では、取締役会の議案が「重要な財産の譲受・譲渡」又は「多額の借財」である場合に、あらかじめ選定した3名以上の取締役をもって議決することが認められています。
詳しくは「特別取締役制度(機動的な取締役会運営)」を参照ください。
【2】詳細は「【図解】監査役会設置会社・監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社」を参照ください。
【3】コーポレートガバナンス・コードには以下の定めがあります。
【原則4-8.独立社外取締役の有効な活用】 | |
独立社外取締役は会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に寄与するように役割・責務を果たすべきであり、プライム市場上場会社はそのような資質を十分に備えた独立社外取締役を少なくとも3分の1(その他の市場の上場会社においては2名)以上選任すべきである。 また、上記にかかわらず、業種・規模・事業特性・機関設計・会社をとりまく環境等を総合的に勘案して、過半数の独立社外取締役を選任することが必要と考えるプライム市場上場会社(その他の市場の上場会社においては少なくとも3分の1以上の独立社外取締役を選任することが必要と考える上場会社)は、十分な人数の独立社外取締役を選任すべきである。 |
さらに、有価証券上場規程(東京証券取引所)によりますと、上場企業にとって「コーポレートガバナンス・コード」の位置づけは次のとおりです。
第436条の3(コーポレートガバナンス・コードを実施するか、実施しない場合の理由の説明) | |
上場内国会社は、別添「コーポレートガバナンス・コード」の各原則を実施するか、実施しない場合にはその理由を第419条に規定する報告書において説明するものとする。この場合において、「実施するか、実施しない場合にはその理由を説明する」ことが必要となる各原則の範囲については、次の各号に掲げる上場内国会社の区分に従い、当該各号に定めるところによる。
(1) スタンダード市場及びプライム市場の上場内国会社 基本原則・原則・補充原則 (2) グロース市場の上場内国会社 基本原則 |
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第445条の3(コーポレートガバナンス・コードの尊重) | |
上場会社は、別添「コーポレートガバナンス・コード」の趣旨・精神を尊重してコーポレート・ガバナンスの充実に取り組むよう努めるものとする。 |
下表は、毎年日本取締役協会が発表している統計資料【0】に、筆者が「独立社外取締役の全取締役に占める割合」と「出来事」を追記したものです。
新組織形態である「監査等委員会設置会社」制度の導入、「ISSの外圧」によって、社外取締役の割合は増加の一途をたどり、現在は3分の1を超え、40%をも超えていることが分かります。
全取締役平均(人) | 独立社外取締役平均(人) | 割合(%) | ||
2010 | 8.9 | 1.9 | 21.34 | |
2011 | 8.7 | 1.8 | 20.68 | |
2012 | 8.7 | 1.8 | 20.68 | |
2013 | 8.6 | 1.6 | 18.60 | |
2014 | 8.6 | 1.6 | 18.60 | |
2015 | 8.9 | 1.8 | 20.22 | 「監査等委員会設置会社制度」導入【1】 |
2016 | 9.3 | 2.2 | 23.65 | |
2017 | 9.3 | 2.4 | 25.80 | |
2018 | 9.2 | 2.5 | 27.17 | ISS【2】が議決権行使助言方針の改定を公表【3】 |
2019 | 9.1 | 2.7 | 29.67 | |
2020 | 8.9 | 2.9 | 32.58 | |
2021 | 8.9 | 3.2 | 35.95 | ISS【2】が議決権行使助言方針の改定を公表【4】 |
2022 | 9.1 | 3.7 | 40.65 |
【0】取締役の人数(東証1部/東証プライム)/上場企業のコーポレート・ガバナンス調査/
日本取締役協会(2022年8月1日)10頁/最終アクセス230312
【1】詳細は、監査役会設置会社・監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社【図解】をご参照。
【2】ISS(Institutional Shareholder Services Inc.)とは、アメリカ所在の議決権行使助言会社で、多くの企業に投資する機関投資家に大きな影響力を持っているとされます。
【3】2019年2月以降導入予定基準
監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社について「株主総会後の取締役会に占める社外取締役の割合が3分の1未満の場合、経営トップである取締役の選任議案に対して原則として反対を推奨する。」と公表。
【4】2022年2月以降導入予定基準
監査役会設置会社について「株主総会後の取締役会に占める社外取締役の割合が3分の1未満の場合、または社外取締役が2名未満の場合、経営トップである取締役の選任議案に対して原則として反対を推奨する。」と公表。
株式会社の取締役であって、次に掲げる要件のいずれにも該当するものをいう。(会2⑮を要約)
イ
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当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役等【1】でなく、かつ、その就任の前10年間当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役等【1】であったことがないこと。 |
ロ
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就任前10年内のいずれかの時において当該株式会社又はその子会社の取締役・会計参与又は監査役であったことがある者(業務執行取締役等であったことがあるものを除く。)にあっては、当該取締役、会計参与又は監査役への就任の前10年間当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役等であったことがないこと。 |
ハ
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当該株式会社の自然人である支配株主、又は親会社等の取締役・執行役・支配人その他の使用人でないこと。 |
ニ | 当該株式会社の兄弟会社の業務執行取締役等【1】でないこと。 |
ホ
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当該株式会社の取締役・執行役・支配人その他の重要な使用人又は支配株主の配偶者又は二親等内の親族でないこと。 |
【1】ここで、業務執行取締役「等」とは、業務執行取締役【2】・執行役・支配人その他の使用人をいいます。
【2】株式会社の第363条第1項各号に掲げる取締役及び当該株式会社の業務を執行したその他の取締役をいう。
株式会社の監査役であって、次に掲げる要件のいずれにも該当するものをいう(会2⑯を要約)。
イ
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就任前10年間当該株式会社又はその子会社の取締役・会計参与・執行役・支配人その他の使用人であったことがないこと。 |
ロ
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就任前10年内のいずれかの時において当該株式会社又はその子会社の監査役であったことがある者にあっては、当該監査役への就任の前10年間当該株式会社又はその子会社の取締役・会計参与・執行役・支配人その他の使用人であったことがないこと。 |
ハ
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当該株式会社の自然人である支配株主又は親会社等の取締役・監査役・執行役・支配人その他の使用人でないこと。 |
ニ | 当該株式会社の兄弟会社の業務執行取締役等でないこと。 |
ホ
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当該株式会社の取締役・支配人その他の重要な使用人又は自然人である支配株主の配偶者又は二親等内の親族でないこと。 |
原則:社外役員(社外取締役、社外監査役)をそれのみで登記する必要はありません。
例外:「社外役員の設置」した場合のみ導入を許される制度を導入する場合には、社外役員の登記が必要になります。具体的には上記の「社外役員の設置が義務づけられる場合」と一致し、次のとおりです。
原則不要とされているのは「社外取締役である旨について一律に登記事項にする必要性も乏しい(相澤哲『一問一答 新・会社法』商事法務/2009/257頁以下)」ためと説明されています。
【1】監査役会設置会社は・・・
原則:社外取締役を定めても登記はできません。
例外:特別取締役を選定する会社は、社外取締役の登記義務が生じます。
社外役員と似て異なるものに「独立役員」があります。
「『独立役員』とは、一般株主と利益相反が生じるおそれのない社外取締役又は社外監査役をいいます(独立役員の確保に係る実務上の留意事項/東京証券取引所/2022 年 4 月改訂版/1頁/最終アクセス230313)。」
上場企業は、一般株主保護の観点から
確保することを求められています。
独立役員に求められている役割は、「コーポレートガバナンス・コード」において次のとおりと定められています。
【原則4-7.独立社外取締役の役割・責務】
上場会社は、独立社外取締役には、特に以下の役割・責務を果たすことが期待されることに留意しつつ、その有効な活用を図るべきである。 (ⅰ)経営の方針や経営改善について、自らの知見に基づき、会社の持続的な成長を促し中長期的な企業価値の向上を図る、との観点からの助言を行うこと (ⅱ)経営陣幹部の選解任その他の取締役会の重要な意思決定を通じ、経営の監督を行うこと (ⅲ)会社と経営陣・支配株主等との間の利益相反を監督すること (ⅳ)経営陣・支配株主から独立した立場で、少数株主をはじめとするステークホルダーの意見を取締役会に適切に反映させること |
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【原則4-8.独立社外取締役の有効な活用】 独立社外取締役は会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に寄与するように役割・責務を果たすべきであり、プライム市場上場会社はそのような資質を十分に備えた独立社外取締役を少なくとも3分の1(その他の市場の上場会社においては2名)以上選任すべきである。 また、上記にかかわらず、業種・規模・事業特性・機関設計・会社をとりまく環境等を総合的に勘案して、過半数の独立社外取締役を選任することが必要と考えるプライム市場上場会社(その他の市場の上場会社においては少なくとも3分の1以上の独立社外取締役を選任することが必要と考える上場会社)は、十分な人数の独立社外取締役を選任すべきである。 |
補充原則
4-8① 独立社外取締役は、取締役会における議論に積極的に貢献するとの観点から、例えば、独立社外者のみを構成員とする会合を定期的に開催するなど、独立した客観的な立場に基づく情報交換・認識共有を図るべきである。
4-8② 独立社外取締役は、例えば、互選により「筆頭独立社外取締役」を決定することなどにより、経営陣との連絡・調整や監査役または監査役会との連携に係る体制整備を図るべきである。
4-8③ 支配株主を有する上場会社は、取締役会において支配株主からの独立性を有する独立社外取締役を少なくとも3分の1以上(プライム市場上場会社においては過半数)選任するか、または支配株主と少数株主との利益が相反する重要な取引・行為について審議・検討を行う、独立社外取締役を含む独立性を有する者で構成された特別委員会を設置すべきである。
(東京証券取引所「コーポレートガバナンス・コード」2021年6月11日/18頁/最終アクセス230312)
独立役員の要件は、会社法の社外取締役の要件よりも厳しくなっています。
まず、東京証券取引所「コーポレートガバナンス・コード」は次のように定めています。
【原則4-9.独立社外取締役の独立性判断基準及び資質】
取締役会は、金融商品取引所が定める独立性基準を踏まえ、独立社外取締役となる者の独立性をその実質面において担保することに主眼を置いた独立性判断基準を策定・開示すべきである。また、取締役会は、取締役会における率直・活発で建設的な検討への貢献が期待できる人物を独立社外取締役の候補者として選定するよう努めるべきである。 |
(東京証券取引所「コーポレートガバナンス・コード」2021年6月11日/19頁/最終アクセス230312)
次に、東京証券取引所「独立役員の確保に係る実務上の留意事項」2022.4改訂/2頁/最終アクセス230312は、まず「概要」を定めています。
「一般株主と利益相反が生ずるおそれがない者」であるか否かは上場会社において実質的に判断する必要がありますが、例えば、独立役員として届け出ようとする者が、経営陣から著しいコントロールを受け得る者である場合や、経営陣に対して著しいコントロールを及ぼし得る者である場合には、一般株主との利益相反が生じるおそれがあり、独立役員の要件である「一般株主と利益相反の生じるおそれがない者」には該当しない可能性が高いと考えられます。 |
また、東京証券取引所「独立役員の確保に係る実務上の留意事項」2022.4改訂/2頁/最終アクセス230312は、次の類型に該当する者は独立性基準を満たさないと定めます。
A | 上場会社を主要な取引先とする者又はその業務執行者 |
B | 上場会社の主要な取引先又はその業務執行者 |
C |
上場会社から役員報酬以外に多額の金銭その他の財産を得ているコンサルタント、会計専門家又は法律専門家(当該財産を得ている者が法人、組合等の団体である場合は、当該団体に所属する者をいう。) |
D | 最近においてA、B又はCに掲げる者に該当していた者 |
E |
就任の前10年以内のいずれかの時において次の(A)から(C)までのいずれかに該当してい た者 (A) 上場会社の親会社の業務執行者又は業務執行者でない取締役 (B) 上場会社の親会社の監査役(社外監査役を独立役員として指定する場合に限る。) (C) 上場会社の兄弟会社の業務執行者 |
F |
次の(A)から(H)までのいずれかに掲げる者(重要でない者を除く。)の近親者 (A) Aから前Eまでに掲げる者 (B) 上場会社の会計参与(当該会計参与が法人である場合は、その職務を行うべき社員を含 む。以下同じ。)(社外監査役を独立役員として指定する場合に限る。) (C) 上場会社の子会社の業務執行者 (D) 上場会社の子会社の業務執行者でない取締役又は会計参与(社外監査役を独立役員とし て指定する場合に限る。) (E) 上場会社の親会社の業務執行者又は業務執行者でない取締役 (F) 上場会社の親会社の監査役(社外監査役を独立役員として指定する場合に限る。) (G) 上場会社の兄弟会社の業務執行者 (H) 最近において前(B)~(D)又は上場会社の業務執行者(社外監査役を独立役員とし て指定する場合にあっては、業務執行者でない取締役を含む。) に該当していた者 |
更に「独立性基準に抵触しない場合であっても、上場会社における実質的な判断の結果『一般株主と利益相反が生ずるおそれがない』とはいえない場合には、独立役員の要件を満たさない点に留意が必要です(同留意事項2頁)。」
独立役員に関する更に詳細な情報は、東京証券取引所「独立役員の確保に係る実務上の留意事項」2022.4改訂/最終アクセス230312を参照ください。